しっぽきり

一本目 超能力のある日常verMIO
二本目 あらゆる意味で、東野君はちさとさんに釘付け。


「……ったく、ムチャしやがって。
 戻ったらたっぷりしぼってやるからな!!」

 陽光が水に濡れた葉をキラキラと輝かせ、湿った土の匂いと陽炎が立ちこめる中、

「ぷ」

 失笑が起こりました。
 お前が言うな的意味合いで。
 敵陣営に囮として突っ込んでいったことを思いだし、渋々その失笑を受け入れざるを得ない皆本さん。

「だっ、だいたい管理官……いや、賢木がついていながら」

 なので、責任転換をすることにしました。
 賢木先生はお医者さんです。いざというときはチルドレン達のことを頼んでいたのに、その医者がドクターストップをかけずに流されてしまうとは何事か。

「あの裏切り者!!」

 そんなことをやっているうちに、ヘリへ帰還。
 
「手え出して! ホラ!」

 薫さんが、バレットさん、ティムさんにスルスルと近づいていき、

「「ザ・チルドレン」任務完了っ!! いえーい!! おつかれ!!」

 二人のあげた手にハイタッチ。
 そして、葵さん紫穂さんも交えて、自分達の健闘を称えあいました。

「う……うん」
「お……おつかれ」

 自分達もザ・チルドレンなのだと実感し、浮き上がりたくなるような気恥ずかしさに、二人が戸惑っていると、不二子さんが声をかけました。

「あのさあ」

 その言葉に飛びずさり、すかさず土下座。なれなれしくしてすみませんと謝る二人に、まだもう少しだけいろいろと時間がかかりそうだなと皆本さんは苦笑い。
 不二子さんが声をかけたのは、賢木先生の姿が見えないからでした。
 それがその、と気まずそうに応える二人の視線を追うと、小さな軽快というにはあまりに向こう側な音楽が漏れてくるヘッドホンをした賢木先生。

「友情とか……信頼とか……これ見ればわかる? ねえ、わかる?」

 ポータブルDVDの画面に踊るチルチルの姿をにらみながら呟く彼の姿に皆本さんは、とりあえず「すまん」と謝りました。

「えーと……」

 そして、逡巡し言葉を探した後、

「すまん」

 もう一度謝りました。
 気まずいながらも、合コンの数合わせの出席を約束し慰め、小さい舌打ちが三つ、更なる参加希望老女が一人あったところで帰投開始。
 遠ざかっていく森に、皆本さんは、事件を起こした、純粋に狂った少女の素性に思いを馳せるのでした。


 
 その夜。
 かのじょがお父様のところに帰りましょうと提案しました。
 カノジョの提案を彼女は一蹴しました。
 困ってりゃいいのよ。
 そして、言います。戻ったら、あの少女達に会えなくなると。
 カノジョの正しさを認めつつも、かのじょはカノジョのことを信頼しきった様子はありません。
 自分で決めたルールも約束も守らない。
 カノジョは、そんなかのじょの生真面目さにうんざりしていました。
 そんなつまらないことより次の「遊び」を!
 怒鳴るカノジョに、冷たくかのじょは答えました。
 その「変な服」で?
 氷のように冷たいかのじょの言葉は、油のようにカノジョの胸に広がり、つき動かしました。
 脱ぐのももどかしいのか、自分の「変な服」をビリビリに引き裂き、新しい服を求めるカノジョ。
 かのじょは、彼女が目覚めつつあるのを認めると、カノジョに譲歩しました。
 新しい服は自分も一緒に考えてあげるから、放課後はお父様を手伝うこと。
 カノジョは答えませんでしたが、否定もしませんでした。かのじょは一つため息をつくと、彼女が目覚める前に、姿を消しました。


 悠理さんは目覚め、自分が見ていた夢をぼんやりと思いだそうとしながら、いつもの週間で時計を確認しました。
 そして、自分がいつもより遅く目覚めたことを悟ると、急いで起きあがろうとし、転倒。頭を打ってしまいました。
 そんな慌ただしい朝に、机の下に落ちていた一切れの布を気付く余裕はありませんでした。




「おはよー」

 おっとりとした声の挨拶に、男子生徒達の視線が集まりました。
 視線の先には、仲良しグループのところに歩いていく悠理さん。そのおデコには、絆創膏が一枚。転んでしまったというのです。そのエピソードに、ドジっ娘気質の発露を見て、視線の熱っぽさを増す、今朝太い釘を刺された東野君をのぞく男子生徒達。
 ドジっ娘なだけでなく、おとなしいのに意外とスタイルがよく、攻められたときの反応の艶っぽさに定評のある悠理さんの評判はうなぎ登り。
 そして、視線は熱量そのままに薫さんへの期待に変わりました。
 自分達がやってしまえば女子全員からの吊し上げを食らう行為も、性別を越えて自分達と魂を同じくするソウルメイト薫さんがやれば女子同士のスキンシップ。そして、それだけでなく薫さんは、誰よりも精密にポイントを抑えた指使いを見せるマエストロ。
 朝のHRまでは時間もあるし、さわやかな朝の一幕を、男子生徒達が期待したのも無理はありませんでした。
 ですが、薫さんの表情は宙にさまよい、どこか気が抜けたような、惚けたような、そsれでいて楽しそう。
 男子生徒達も、仲良しグループも、薫さんの脳内を測りかねるのでした。

 そんな薫さんの脳内を支配していたのは、今朝の皆本さん。
 朝の洗面所、ひげ剃りの途中に、自分のお腹を気にする皆本さん。
 数年間、一緒にいるのに初めてみた姿。身なりこそ綺麗に整えていましたが、それはフォーマルな範囲でおさまっているものと薫さんは思っていました。
 それが、自分のさして出ているわけでもないお腹を気にしている。その様子が、普段の生真面目な彼とはあまりに違って。
 なんだか、かわいくて仕方ありませんでした。
 制服に着替え終えると、皆本さんは朝食の調理をしていました。
 柔らかいにおいと、油のはじけるジジという音。椅子に座った薫さんは、焼きあがった目玉をお皿に空け、また卵を落とす皆本さんの背中をジッと見ていました。
 背中……広いよな。
 少しの距離を置いて見る、皆本さんの背中は思っていたより広いものでした。
 成長したからこそ実感できる背中の広さ、そして彼の背の大きさを考えながら、焼き方について答え、朝食をすませると、話題は週明けからのテストのことに。
 任務明けであることに心配する彼の、ネクタイとエプロンというギャップや、捲った袖から見える腕の筋のたくましさに心を奪われていると、皆本さんはこんなことを言い出しました。
 週末は僕が家庭教師してやるから、ちゃんとしろよ?
 家庭教師、マンツーマン、二人きり。
 手にした問題集の、淡々とした文章に、扇情的なものを感じ取ってしまう二人。
 隣の部屋には、家族同然の二人。
 音は、漏れるかもしれない、漏れないかも知れない。
 そんな危険性と背徳感が二人の心臓を早鐘のように鳴らしていって。
 
 こんな感じにソウルメイト達とは違った方向に妄想をスパークさせる薫さんの脳味噌には、まさか自分達のテストの成績がバベルの今後を左右するなんて、想像する余地はありませんでした。












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