しっぽきり

一本目 何でもいいは、何もないと同義。
二本目 泣き顔ではなく、一本目一コマ目の顔を見て欲しい。それが女帝の願いです。
扉絵  ものすごくおバカな子っぽい薫さんの表情がすてきです。


「放して!! あたしも行かせて!!」

 叫び声に、手入れ中のライフルに落としていた視線を上げると、バレットさんが息を飲みました。
 視線の先で、制止する賢木先生を振り切ろうとする薫さんの体は、ところどころ紅色。血で彩られていました。
 ドクターストップ。医者である賢木先生の言うとおり、薫さんの惨状は、バレットさんもティムさんも息を飲んでしまうもので、いくらヒュプノといえと、痛みを感じてないわけではありません。

「皆本なら大丈夫だ!! これくらいのピンチ、今まで何度もあったろう!?」
「ちがう!! 戦うなら今しかない!!
 だって――」

 しかし、薫さんは止まりません。

「体中からエネルギーがわいてくる!! どうしてか止められない……!!」

 バレットさんは、その瞳の強さをどこかで知っていました。
 いつか、自分にも向けられていた、強い瞳。
 不二子さんが一つ頷いて言いました。

「いいあ。皆本クンの作戦通り――ただし、薫ちゃんにも参加してもらいましょ」

 諦めがちながら賢木先生が抗議しますが、不二子さんは揺らぎません。
 そして、

「ティムもバレットも準備はいいわね!?」
「頼むで、二人とも」

 任された責任。寄せられた信頼。
 チルドレン三人が繋いだ手。
 ――この子たちは仲間を信じている。
 隣ではティムさんが息を飲みました。
 自分達も、その一員。
 敵がどんな恐ろしい存在であろうとも、その仲間達を裏切ることは許されません。

「まかせてくれ! 絶対に期待に応えてみせる!!」

 限定版サインつきDVDを賭けてでも。
 そして、チームは動き出しました。
 皆本さん救出に向けて。




 一方、その頃。
 
「ぐ……!!」
 
 皆本さんは蹴られていました。固い、ブーツのかかとで。
 危険で、スカートの長さ的に期待した一蹴りでしたが、鉄壁の霧ガードを傍らの人形に命じているので、皆本さんには見えませんでした、二期があっても安心です。

「いいザマね、皆本一尉」

 罰を与える、そうドーターさんは言いました。遊び相手を取り上げようとした罰だと。
 とはいえ、利用価値はあるので、生かしてくれるというのです。皆本さんというエサがあれば、可愛いチルドレン達も来てくれるとかで。

「そのあと目の前で殺す!!」

 そうすれば、チルドレンは自分から離れられなくなる。自分を忘れられなくなる。
 当然、覚悟していた、予想していたこととはいえ、目の前の少女が、そんなことを楽しげに語る現実に、身震いをせざるをえませんでした。

「一生、私と遊んでくれるわ!」

 その考えにうっとりとするドーターさんですが、当然、皆本さんとしては黙っているわけにはいきません。
 なんでこんなことをするのか。
 遊びではなく無差別テロ。
 詰まった鼻声で、ところどころくしゃみで遮られながら、泣きっ面で、そんなことを言う皆本さんに、ドーターさんは、静かにため息をつきました。

「かわいそうなノーマル。何もわかってないのね」






 近くの木で、鳥が一羽、飛び立つ。
 ああ、あれがいい。無知な人間を教育する素材。
 そして、鳥の心臓に軽く力を加えてやる。
 それだけで、鳥は落ちていく。
 何の苦労も無い、簡単な作業。
 僅かな抵抗も無い、無力な生物。
 鳥も、ノーマルも同じだ。
 造作もなく殺せる。手加減をして、我慢をして、生かしておいてやっているだけなのだ。
 それなのに、それなのに、目の前の生き物たちは。
 ノーマルがあわれで、おかしくてたまらない。
 こいつ等は、立場の上下を履き違えている、物事の理を解していない。
 数が多い。それだけで、自分の存在を肯定してるのだ。

「持って生まれたこの力、全力でぶつけあえるのが楽しくない子なんかいる?
 力を全て解放するのが楽しくないエスパーがいると思うの!?」

 ありのまま、自分らしく振舞おうとするのを抑圧して、その癖都合のいいときには笑顔も浮かべずに擦り寄ってくる。
 そんな生活が、存在が認められるのか?
 
「ちがう……!! あの子たちは――」

 わめくな。さえずるな。

「私が誰かと遊ぶには、いつもガマンしなくちゃいけなかった。
 お父様は「人形」を与えてくれたけどあの子たちはそんなのとは全然ちがう」

 自分に心地よい刺激を与えてくれる、予想もつかない行動をとってくれる。
 実に、面白い。

「力いっぱい遊べるお友だち」

 人形が報告してくる。面白くはないが、便利な存在であるのは確か、か。
 
「西側のポイントです」

 またも外れだ。
 残念だが、かくれんぼが長く続けられると思うと、それも楽しい。
 的外れとはいえ、来てくれたのだから、それなりにお礼をしなければ。
 意志を、西に飛ばす。
 戻ってきてくれた。
 しかも、三人だ。みんな、そろっている。

「うれしいわ、みんな!!」
「おだまりっ!!」

 紫穂ちゃんが私を狙撃する。
 頭に狂いなく銃弾が迫る。
 さすが紫穂ちゃん。射撃が得意だ。
 でも、残念。
 この私はニセモノ。お手つきだ。

「罰ゲームよ!!」

 手を向ける。
 メットが割れる。血が飛び散る。
 もちろん幻の瀕死ごっこだ。
 それでも、赤く歪んでいくのを見るのはとてつもなく、気持ちがいい。
 はずだった。
 それなのに、紫穂ちゃんは一瞬笑って、

「な……人形!?」

 人形だ、人形が人形を使って、だました。
 人形が、人形の癖に、人形を使って!

「おまえがこっちに気をとられてるスキに、「チルドレン」は今、他の場所で手を打ってんだよ!」
「この花粉さえなくなりゃあ、てめえなんざ――」

 葵ちゃんと薫ちゃんの、可愛らしい声で、憎たらしい言葉を口にする。
 それ以上は、やめろ。
 しかし、爆音が全てをかき消す。
 戦闘機だ。何をしにきた?
 何かが落ちる。
 爆弾だ。
 正義の味方が、森を焼き払うのか? そんなのルール違反だ。
 いや、違う。
 落としたのは、湖にだ。
 巨大な水柱が立ち上がる。
 そういうことか。
 ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。
 
「サイキックうう――人工降雨!!」

 雨が降り注ぐ、葉をぐっしょりと重くぬらしていく。軽い花粉を叩き落していく。
 そんなのはダメだ。ルール違反どころではない。

「これで花粉はもう飛散しない!!」

 なんで、ゲーム盤をひっくり返す。
 こんなのは、こんなのは――

「ぎゃっ!」

 隣で人形が悲鳴をあげる。
 炸裂音は、銃火器によるもの。

「バレット――!」

 人形だ!
 また人形が邪魔した!

「よくも……!!」












管理者にだけ表示

トラックバックURL↓
http://bbkiriblog.blog70.fc2.com/tb.php/950-9c35a9aa