しっぽきり

一本目 夏と冬、パティさんは修羅となります。
二本目 いい年をして、可憐Girlsとか、休載はしてもアニメは全話解説だとか、頼まれてないのにイターシャちゃん本気デザインとか、節目節目に声優さんにプレゼントだとか、特集してくれるラジオに大サービスだとか、乙女回路だとか、打ち上げで囲まれて大はしゃぎだとか、くぎゅうううううだとか(ry


「ゲーム……!?」

 薫の声が微かに震える。震わせたのは、心の中だけでは抑えきれない怒り。

「あたしたちをからかうためだけにこんなことを!?」
「……ちがうわ。からかってるんじゃない。
 胞子からかすかに感情が伝わるの」

 押し殺すように紫穂が言う。

「あの子、無邪気に楽しんでる」

 胞子から伝わってくるのは、悪意でも、もちろん罪の意識でもなく、ただ友達と遊んでいるような純粋さ。
 その事実に、紫穂さんは恐怖の入り交じった嫌悪を覚えた。
 しかし、それは知らない感覚でなかった。
 今は、おかしな事を口走ることもあるけれど、自分たちを親身に守ってくれる頼りになる仲間。その一人、ティムは自分たちとの殺し合いをただただ楽しんでいた

「黒い幽霊の娘って言ってたけど、あの子も支配されてるだけなのかも」

 そう推測する紫穂に、しかし薫は納得ない。
 あの少女は、ティムやバレットは自分が作ったお人形だと言った。

「あいつが何かの能力でエスパーを洗脳してるんじゃないの!?
 その本人をどうやって支配してんのさ!?」

 ゼロに位置するはずの人間ですら、ゼロでないのだとしたら始まりはどこなのか。それまで黙っていた皆本が沈黙を破り、推測を口にする。

「あの子をしばっているものは……超能力ではないのかもしれない」
「え?」

 戸惑う二人に、皆本はそれ以上語らず、現在の目的である本体発見に全力を挙げるよう、二人に促した。


 二人が自分を追ってくる。
 二人が自分のことだけを考えている。
 二人が自分のことで心を一杯にしている。
 二人が自分だけと遊んでくれる。

「うれしい……!
 「お人形」と遊ぶよりずっと素敵!
 思った通りだわ……!
 こんな奴らを何人支配しても、こんなに楽しくはなかったもの」

 無言でひざまずく「お人形」の頭をなでるドーターの微笑みは澄み渡っていた。
 
「今日は私だけのものよ。誰にも邪魔させない!
 いっぱい遊んでね、薫ちゃん、紫穂ちゃん」

 瘡蓋の消えかけた指を風が吹き抜けていく。
 
「お父様に背いてまで、この国に来てよかった……!!」

 もっと楽しまないと損だわ。今度はちょっと趣向を変えてあげよう。
 ドーターは、自分が興奮するのを自覚していた。
 
 

 失踪した少年を探し、賢木修二と蕾見不二子が訪れたのは、インターネットカフェ・canbo。
 彼の相棒から行きつけの喫茶店を聞きだし、そこからはサイコメトリーの連続。
 そして行き当たったインターネットカフェ。写真を渡し、捜してる少年・バレットの容姿に店員が反応を示すと、賢木は迷わずに彼の思考と記憶を読みとる。
 つきあたりのブースか。
 居場所が判明したというのに、報告を受けた不二子の機嫌は上向くことはない。

「つまんない~別にフツーの街じゃん~」

 訪れた街が、彼女の常識から、期待するほど離れていなかったことがご不満らしい。
 ブースの手続きもせず、歩を進めていく二人に店員が立ち上がる。

「公用よ! すぐすむわ」

 そう微笑むと、不二子はそれ以降振り返らず、店員も追ってくる様子はなかった。
 店内を物珍しそうに見回す不二子を無視して歩を進めると、彼女も諦めたのか突いてきた。そして、突き当たり。

「バレット」
 
 ノックなどせず、一気に開く。
 そこには障気が漂っていた。
 捜し求めていた少年は、耳にヘッドホンを離さず、目はモニターのみを見つめ続け、個別に分けられたブースの中でさらに、外界から自分を隔離していた。
 ヌケガラだ。
 少年の様子に賢木が、呆然とする。
 彼の心理を読み解く一端があればと、モニターをのぞき込んだ不二子も愕然とする。
 モニターに映るのは、焚き火の前で意志なく座り込む騎士。
 ゲーム内の人格もヌケガラだわ!
 賢木と不二子は顔を見合わせる。
 目配せをする賢木に、不二子は眉をひそめながらも頷く。
 そして、賢木の手がバレットの胸ぐらを掴みあげた。 

「目ェさまえ!! 非常事態なんだぞ!!」


 
 ぼんやりと少年は自分を引き起こした人間のを、長時間モニターの光に晒されて霞んだ目で見つめていた。
 誰だ?
 考える気力もなかったが、褐色の肌の青年は、彼の記憶に存在していた。
 思い出した彼の名前。しかし、それよりも重要なことは、自分が話しかけられていること。
 何度か、口を開きかけたが言葉は出てこなかった。
 自分の口で、自分の存在を証明する気力はなかった。
 かといって、このまま済むわけもない。
 右手でキーボードを叩く。

 放っといてくれ
 俺はもう軍人ではない

 場違いに高い音がして、生身の少年の代わりにモニターの中の男が喋る。

「あいつは海千山千のジジイだし、不意打ちだったんだから!」

 自分の上司は、自分の失敗を気にしないでいいと言ってくれるが、それを認めるわけにはいかない。
 最も注意しなければならない人間に、易々と倒される自分。

 奇襲は作戦の常識だ
 対処できなかったのは弱いからだ

 与えられた任務の重要性に自分はついていけなかった。
 それだけのことだ。
 しかし、振り切ろうとした手は、更に強い力で彼を引き起こす。

「てめ、とにかく来い」
「ちょっと……おさえて」

 行ってどうなる。
 制止する上司の声にも、彼の勢いは止まらない。

「みんなお前を必要としてるんだぞ!!」

 行ってどうなる。自分が行ったとして同僚達を助けられるものか。
 叱咤の声は、怒声に近くなる。

「お前、それでも男か!!」

 行って……。

「俺に……さわるな!!」

 ホルスターから拳銃を一気に引き抜き、彼の顎に突きつける。
 予想もしていなかった事態に、突きつけられた青年の一瞬、驚愕する。
 体に染み着いた習慣は、虚脱した今となっても有効だった。
 女性の悲鳴に近い制止の声が耳を打つ。
 ブースの外からどよめきが聞こえる。
 女性の視線を受けて、青年から銃口を離す。

「俺には……何もないんだ。あるのは、コイツを操るくさった能力だけ--」

 人の役には立たない癖に、人の害悪にはなる。相棒の能力なら、人を楽しませることができるかもしれない。いや、実際に老人達を童心に返していた。だが、自分の力は人を殺傷することしかできない。
 朧な記憶は、自分を肯定してくれない。いや、朧だからこそ自分を責め立ててくる。
 こんな人殺ししかできない力で、何をやってきた? 年端も行かない人間がどうやって生きてきた?
 どうやって、生きてきた?

「でも、あんたたちに助けられて、この力を使って何かを返せれば、俺は生きててもいいと思ってた」

 目の前の女性は自分に居場所を与えてくれた、世話をしたとき老人たちはありがとうと言ってくれた、そして守るべき少女たちが笑うと嬉しかった。

「けどしょせん肝心な時に何もできないんだ!!」

 本当に危険な人間が彼女たちに迫ったとき守れなかった。
 透明なまま、背後についてまわり、役に立たず、無能を慰められて、

「この先も助けられてお情けで生きていくのか!?」

 意志が手を動かす。
 右手の拳銃をこめかみ突きつける。
 死んだ方が、マシだ。
 彼女達に失望された、自分の世界は否定された。
 彼女達に嫌悪された。自分の存在は否定された。
 だったら自分ごと、いなくなってしまえばいい。
 思いを言葉にして出し切ってしまうと、代わりに涙が流れてきた。自分ならもっとうまくやれると思っていた、彼女達を守り抜けると信じていた。
 自分を追いつめたことを責めているのか、女性が青年を小突く。
 自分は、ここまで気遣われているのだ。
 無能のくせに。
 引き金にかけた指にわずかに力がこもる。

「事件のことは知ってるんだろ!?」
 
 青年が、幾分穏やかに語りかける。
 言葉通り、知っていた。
 無意識に習慣でのぞいた掲示板でも話題になっていた。
 指揮官と守るべき対象だったはずの少女達のことを青年が口にする。
 彼らは自分に命を預けたのだと。
 
「ノーマルのあいつが戦ってんのにエスパーのお前が逃げんのか!?
 つまんねープライドなんざ過去と一緒に忘れちまえ!」

 指揮官である青年。
 少女達が彼を信頼しているように、彼も自分達を信じてくれた。
 そういえば、彼女たちは、

「なんであいつを信頼してると思う? 強えからじゃねえだろ!
 あいつは、どんなときもやるべきことを精一杯やって、未来を守りたいと思ってるからじゃないのか!!」

 彼には特別な能力はない。それなのに、彼は最前線で、指揮をしている。常にチルドレンの為に何ができるかを考えている。
 それならば、だったら、なら、しかし。
 心は揺らぐ、しかし根強く張った自分への不信は消えない。 

「時間がねえ、行きましょう。いざとなったら俺が狙撃します。管理官?」

 しかし、返事は聞こえない。
 顔を見れば、携帯電話に出ている。

「え、何? チャプター?
 T60:20:14?」
 
 聞き覚えのある言葉に、拳銃に込めていた力がゆるむ。
 T60。おそらくは、電話の向こうにいるのは相棒のはずだ。彼が時間で指定してくるということは、相応の意味があるはずだ。
 
「意味わかる?」 

 問いかけてくる女性達に助けられてからの記憶を、はっきり自分のものだと言える過去をたどる。
 失敗をして、力を失って、嘆く、そして。
 自分も、そして相棒も、暗闇の中で泣いていた。
 なんだ、この記憶は、なんだ。
 あの時、心を動かしたものは、なんだ?

 劇場版か!!




「く……!! おねがい!!
 ちからをかして、イターシャいたーしゃちゃん」

 イターシャいたーしゃちゃんをよぶチルチルちるちるですが、イターシャいたーしゃちゃんはたてません。
 なぜなら、イターシャいたーしゃちゃんはチルチルちるちるをたすけようとしたのにクロスクロスにまけてしまって痛車いたしゃをうばわれてしまったからです。

痛車いたしゃをうしなったわたしはもう、あしでまといになるだけだわ。
 まほうこくちのうりょくもきえてしまった……」

 きえてしまったまほうこくちのうりょくは、こうしきぐんだんの、ぎんがまじょマメグまめぐと、メインめいんのものとなってしまいました。
 じぶんはてきをつよくしてしまっただけイターシャいたーしゃちゃんはなきながら、じぶんはやくたたずだとチルチルちるちるにいいました。
 ところがチルチルちるちるはなきながら、そしてわらいながらイターシャいたーしゃちゃんをはげましました。

「ちがうわ!! いっしょだからつよくなれる!! それがほんとうのまほうなの!
 わたしたち、おともだちじゃない!!」

 イターシャいたーしゃちゃんが、ちょうだいといわれてしぶしぶうさぎのシールをあげたとき、チルチルちるちるはいいました。「わたしたち、ずっとこういうかんけいで、おともだちでいましょう」そのときのきおくがよみがえり、イターシャいたーしゃちゃんはたちあがりました。

チルちる……チルちる!?」




「自分が間違っていましたああああ!!!
 た……ただちに部隊復帰の許可をォォーッ!!
 あんなに感動したのにー!!
 自分は今、チルチルに恥ずかしい!!」

 あの日の感動に、あの日見た涙に、あの日流した涙に、嘘をつかないためにバレットは再び立ち上がった。




「ぶー♪ これもハズレ。
 じゃあ罰ゲームね」

 薫の力が貫いた二つ目の虚像が、楽しげに笑い、手をかざす。
 そして、薫の防護服のメットが割れる。

「きゃ……あああっ!!」

 そして、飛び散る鮮血が、胞子を染めて、赤い風となって吹き抜けていく。

「きゃああだって……!」

 風の美しさと、悲鳴の可憐さにドーターの笑みは深まっていった。

「かわいい、薫ちゃん!!」












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