しっぽきり

一本目 おかんは二三歳。
二本目 皆本さんがコンタクトにすることも不二子さん的にはNOだそうです。

 日本じゃないっぽいどこか不思議な密林の高いところにある洞窟は、静寂に包まれていました。
 紅葉さんは気絶中。真木さんも気絶中、こっちは岩にめりこんで。
 その静寂を破ったのは、静寂を作り出していた主原因である二人でした。 

「京介……」
「よくもだましてくれたわね~」

 黙らされている兵部少佐はなんとか言い訳しようとしますが、なんとも言い訳の仕様がなく、睨んでくる不二子さんと薫さんと葵さんと紫穂さんに、

「撤収!!」

 逃げ出すしかありませんでした。



 
 逃げてしまったパンドラメンバー。
 しかし、勿論四人は逃がすつもりはありません。
 
「追うわよ、薫ちゃん!! 捕まえてあいつらに精神的致命傷を与えるのよ!!」
「おっしゃー!!」

 意欲に燃える四人ですが、そのテンションについていけない賢木先生と今回いいとこなしの皆本さんの男二人。
 そうは言っても止められないだろう。そう踏んでいた皆本さんですが、あにはからんやチルドレンの三人が振り向きました。さらに皆本さんのことを唇を尖らせてじっと睨んできます。
 戸惑う皆本さん。

「皆本はんにはー、」
「あとでききたい事がたっぷりあるの。伊号の予知とか」
「そーそー、女王とか女帝とか女神とか」

 三人が口にした単語に、皆本さんは強い衝撃を受けました。
 伊号がした予知の未来。それは、女王と女帝と女神の破滅の未来。
 
「あいつら……しゃべったのか!?」

 呻くような皆本さんの言葉は、パンドラの言葉を真実と確信した三人に油を注ぎました。
 
「あたしたちのことで何か知ってたんなら、なんで教えてくれなかったのさ!?
 そんなに信用できない!?」

 薫さんの剣幕に反論しようとする皆本さんですが、しかし自分達の未来を信じてくれなかったという薫さんの怒りも分かりました。

「……すまない。君たちのことを……守りたくて――」

 萎れる皆本さんに追撃の手を止める葵さん、紫穂さん。
 そして、薫さんは、へたれた皆本さんを怒りたいのに怒れない、むしろ許すことでどうのこうのと脳みそをスパークさせる薫さん。
 そんな何か湧いた薫さんに呆れたりいらついたりの二人。
 追撃の圧力がなくなったことで、皆本さんの言い訳の一言がポコンと漏れました。

「もちろんずっと黙ってるつもりはなかった。ただ、君らはまだ子供だし――」

 君はじつにバカだな、皆本。
 そんなわけで、追撃を開始したパンドラメンバー。
 雑魚は賢木先生と紫穂さんと葵さんが、そして不二子さんと薫さんが兵部少佐をしとめることに役割分担をしました。
 通信機でモニター、というよりはあまりの皆本さんは、五人を見送りつつ、自分の無力を呪いました。
 それでも、自分が必要とされるときのためにも、彼女達の側にいてやろうと誓うのでした。


 一方、兵部少佐はテレポートを繰り返しつつ、バベルを撒こうとしていましたが、なにせあちらにいるのは未来の「光速の女神」。一回のテレポートでの距離では劣りますし、不二子さんの女の勘かなにか、的確に距離を詰めてきます。
 ――仕方ないな。 
 兵部少佐は逃げ切ることを諦め、足を止めて指示を出しました。

「不二子さんと女王は僕が引き受ける。残りは任せた」

 そして、いざというときは本気で攻撃してもいいと許可を出しました。
 驚く葉さんですが、兵部少佐は指示を覆しません。
 不二子さんの危険性、そしてまだ未熟とはいえチルドレンのポテンシャルを考えれば、そうそうムシのいい話はありません。

「……っていうか、そもそもお前らのせいだからな!?
 心配かけやがって……!!
 おかげで僕は女王に嫌われたじゃんかよ」

 恨み言を口にしつつも、兵部少佐には先ほどまでの怒りはありませんでした。

「ま、無事でよかった。マッスル、葉、パティ」

 無事を喜ぶ兵部少佐に、素直になれず目を逸らす葉さん。

 ――何この神シチュエーション。

 と、自分の無事を喜ばれるよりも目の前で繰り広げられるシチュエーションに、必死にマッスル先輩を視界から外しつつ、反応するパティさん。
 ですが、パティさんがグッジョブ思ってるうちにも、追撃の手はすぐそこに迫っていました。

「やべ……!! 離れろ!! 早く!!」

 長年の経験から危機を察知し、部下達をテレポートさせた兵部少佐の判断は正しいものでした。
 一瞬前までマッスルさんがいた場所が弾け飛び、葉さんがいたところが砕け、パティさんがいたところを暴風になぎ倒された木が強く打ちました。
 破片と暴風を念動力で防ぎつつ、退避を図る兵部少佐。
 ですが、既に手遅れでした。
 背後から肩を掴まれ、細いはずの腕に強引に振り向かされ、そして当面の敵が薫さんではなく不二子さんだと認識した瞬間、兵部少佐の鳩尾に不二子さんの念動力を乗せた拳が深く突き刺さりました。
 木を倒し、地面をえぐり、弾け飛ぶ兵部少佐。
 念動力でのガードも、ダメージを防ぎきれませんでした。

「い……いってぇ~!!
 死んだらどうする!!」
「街中と違ってパワーを抑える必要ないしね。おとなしく逮捕されるなら、手加減してあげなくもないわよ」

 優位を確信し、立ちはだかる不二子さん。ですが、痛みの中に兵部少佐は勝機を見つけていました。
 幾度も幾度も戦った不二子さん。ですが、まだ使ったことのない戦法がありました。
 次の瞬間、不二子さんが震えだしました。
 イメージの中の世界、今の不二子さんが対峙しているのは兵部少佐ではなく、彼が化けた蛇。
 肢体に絡みつき、超能力すら空回りする。
 長年の付き合いで初めて仕掛けた催眠攻撃は、不二子さんの油断と相まって、想像以上に彼女の精神を蝕んでいるようでした。
 自らの肩を抱いて自失のまま震える不二子さんに、兵部少佐は手をかざしました。

「先ににあの世で待っててくれ姉さん。大丈夫、苦しませたりは――」

 ほんの少し力を込めれば、この縁も終わる。
 しかし、終わったのは兵部少佐の圧倒的な優位でした。
 敵襲は今度も背後から。

「かはッ……!!」

 背中から受けた強い衝撃の後に聞こえたのは、

「京介の……京介のバカ……!!
 あたし……信じてたのに……!!」

 女王の怒りでした。 

 












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