しっぽきり

「意識が……混じりあってる!?」
「超能力が今直結してるんだ……!
 今の俺達は意識を共有してる……!」
「下着の色もトイレの回数もってやつね?」
「す……すまん」
「…………キモッ」


 そんな展開になってフラグが立つといいんじゃないカナ?
一本目 ですよねー。お父様と悠理さん、意外とフィフティフィフティ?
二本目 エロ本隠して読めるぐらいのジャンボサイズポテトチップスマダー?

 

 夜、間近に迫ったマンションを前に、一日の疲労を感じつつも安堵のため息を漏らす女性。その後ろを、コツリコツリと足音を立てながら歩く大柄の人影。
 マンションに入り、エレベーターに乗り込む女性。自室のある五階のボタンを押す。しかし、締まろうとしたその直前、ドアが止まる。半ば締まりかけたドアを掴んだのは無骨な指。
 女性が指、そこから太い腕、熱い胸板に視線を走らせていくと、最後にあったのはサングラスをかけ、髪を短く刈り込んだ男の顔。驚きに眼を見開いた女性が口にしたのは、

「あら、大鎌さん今晩は――」

 挨拶の言葉でした。
 腕に反応し、再び開いた扉をスルリと抜けてエレベーター内に入った大鎌さんもにこやかに「今お仕事からお帰りなの?」と返します。
 時たま会う彼と交わす会話はいつも他愛ないこと。
 景気のことだとか、遅くなるときは気をつけろとか、あそこの化粧水はいいとか、どの食べ物が肌にいいとか、近所に不審者が出てるらしいとか。
 そんな和やかな会話に、仕事で張り詰めていた神経を緩ませ、女性は自室に帰っていくのでした。


 
 女性と別れたエレベーターの中には、霧のようなものが立ち込めていました。
 大鎌さんが振り返ると、霧は少しずつ実体をなしていき、

「すっかりマンションの住人と仲良くなっているんですね。マッスル先輩」
 
 マッスル先輩の社交性に、感心したような呆れたような表情のパティさんが現れました。
 そんなパティさんに、新人教育を任されたマッスル先輩は、ご近所づきあいの大切さを説きます。
 犯罪を起こしている最中に犯罪者とバレるならともかく、下地づくりのために潜行している日常生活でバレてしまっては目も当てられません。
 そんなわけで、組織の工作もあって、犯罪者ではなくごくごく普通の一般男性として俗世間に紛れ込んでいるはずのマッスル先輩ですが、当面の不満は、主婦・OLとは仲良くなれるのに一般男性と逸般した関係になれないのが目下のお悩み。
 場所さえ選べば、現実なんてクソゲー。
 マッスル先輩のお悩み相談に、パティさんの答えは冷淡なもの。
 そんな信頼関係は別として、二人のコンビネーションは良好なようで、お仕事は大成功。
 奪い取ったお金は山分け。
 札束の入ったスーツケースを床に置いた、そのときでした。

「おつかれさん……! 大漁だったみたいじゃん」

 マッスル先輩でもパティさんでもない、その声の主は、新人育成の進み具合を見に来た葉さんでした。オマケで桃太郎も。
 新人育成とかサイズや硬さとかには定評のあるマッスル先輩の手腕を誉める葉さんに、『趣味ガ同ジダモンナ!』とフォローする桃太郎。
 ですが、そのフォローの一言が二人の癪に障りました。
 一瞬の静寂の後、飛び交ったのは、
 ヤジ馬根性の小娘。
 即物的なエロ兄貴。
 穴がどうとかこうとか。
 二人の嗜好は、近いように見えて、それゆえに憎悪も深い、なんだかとても複雑そうな距離感にあるようでした。
 

 

 翌日。
 バベルでは、パンドラが戻ってきたことによるエスパー犯罪の増加が懸念されていました。
 パンドラによる直接の犯罪。それに便乗した形の犯罪、そして、無関係な事件までエスパー犯罪に結び付けられる可能性もあるかもしれない。それを防ぐためにも、発端となるパンドラの犯罪を阻止しなければならない。
 ですが、各国から送られてくるこの二年のパンドラの情報は、仲間と資金を増やし、そして厳しい追跡にも関わらずその勢力を増しているとのこと。
 これ以上好きにさせるわけにはいかん!
 先日のようなナメたマネを二度とできんようにビシビシ取り締まるのだ!!
 そう吼える局長ですが、その先日にお見合いに乱入霍乱された皆本さんは、ナメたマネをしたのはパンドラだけではないと指摘しつつも、結婚する気皆無でお見合いを受けるという槍手さんにとっては相当ナメたマネをしていた自分のことはすっかり忘れているのでした。
 それはそれとして、バベルの今後の方針は、増えつつある高超度のエスパーチームの中でも、パンドラとの戦いに一日の長がある「ザ・チルドレン」を中心に「ザ・ハウンド」「ザ・ダブルフェイス」「ザ・ワイルドキャット」等のトップチームを、パンドラが関与した事件に無条件に投入していくこと。
 皆本さんも、その方針には納得してはいましたが、チルドレン達は中学生。健全な育成という点での、頻繁な投入は避けたいと主張しました。
 勿論、チルドレンが可愛くて可愛くて仕方ない局長もそれは理解していました。
 そのためにも「ザ・チルドレン」の主任である皆本さんに、常に複数のチームを指揮してもらい、運用の幅を広げ「ザ・チルドレン」のサポート体勢を強化するというのです。
 その言葉に、怪訝な一同。
 影チル以外にもメンバーを増やすのか。
 局長の答えは「是」でした。
 そして、胸を張って頼りになるエスパー達を呼び出しました。
 その名も「ザ・イクスプロレイター(診察者)」「ザ・スーリーピングホワイト(眠れる白雪姫)」。
 聞きなれない響きに、どんな新顔が来るのかと開くドアを見つめる一同。
 そこから現れたのは、なんてことはなく賢木先生と不二子さんでした。
 敵対組織の長に言わせれば、藪医者と眠りすぎた白雪姫の登場。
 とりあえず、運用を任された皆本さんがとった行動は、信頼の態度を見せることでした。

「お前が頼りだ、賢木!」
 
 ただし、賢木先生だけに。
 いくら、藪医者とけなされようがなんだろうが、気心が知れていて高超度のサイコメトラーである賢木先生はアテにできますが、不二子さんはできません、能力は十分すぎるほどですが、眠ってて不在なのもしばしばだから。
 そんな皆本さんの不安に、最終決戦の日に備えて寝タメしてるのだと心中で反論する不二子さんでしたが、自分の睡眠欲がその日も制御できるとは限らないとも思っているのでした。
 それでも、バベルのトップである不二子さんが名前だけかもしれないとはいえ、チームに加わったことで、皆本さんは現場指揮官にしてバベルの全権を行使できるようになりました。組織も官庁も設備も装備も。
 大卒年齢にしてとんでもない権限と責任を背負わされたものですが、それはそれ。今までを考えて見れば、大差があるようにも思えません。
 そんな皆本さんに、賢木先生が提案してきました。

「何も奴らが動くのをおとなしく待ってるこたあない。こっちから探してみねーか?」

 エスパーの健全育成を妨げない範囲でさ――と付け加え、不敵に笑う親友の提案に、皆本さんは思索をめぐらせるのでした。






「なんで?」 

 軽快に走る車中、運転する皆本さんの隣では、紫穂さんが不機嫌にチョコ菓子をポキポキいわせていました。
 その不機嫌の理由は、

「なんで私だけセンセイと任務なの?」

 薫さん、葵さんは学校にいるのに自分は、よりにもよって賢木先生との任務に就かなければならないという現実でした。
 捜査するのに全員はいらない、遅れた勉強は俺が見てやる。
 愉快そうな表情で、不愉快なことを隠そうともしない紫穂さんを見る賢木先生に、紫穂さんは更に不機嫌に。
 
「捜査なら私たち二人で充分だもん。あと勉強も教えてね」

 せめて、好ましい現実を見ようと、皆本さんの腕に抱きついてそうねだって見ますが、案の定皆本さんは紫穂さんを甘やかしてはくれません。
 皆本さんが甘やかす代わりにしたのは、これからの説明。
 三人全員を長期間学校を休ませないために、それぞれの単独任務を増やすこと、あくまでも影チルは最終手段であって、チルドレンの本業は学問であること。
 
「ちぇーっ、地味な捜査や勉強より銃撃戦のほうが好みなのにな」

 皆本さんの説明が不満なのか、拳銃を懐から出して危険なことを口走る紫穂さんを皆本さんは叱るのでした。


 そう、皆本さんは賢木先生の提案に乗ることに決めていました。
 いつ起こるか不安定な事件に対処し続けるよりは、自分たちから動き出して犯罪の芽を潰す方が効率的かもしれない。兵部も、チルドレンたちを将来の幹部に考えているのなら、そうそう無理なことはやってこないはず。自分たちのフォローがあれば、単独でもおそらくは大丈夫。それに一人ずつ投入する体制をとれば、兵部が特に執心している薫との接触も減らせる、そういう腹積もりもありました。
 ――薫。
 考えているうちに、赤毛の少女に感じる違和感のことを思い出しました。
 自分とは違った立場で接している二人なら、また別の観方もあるのかもしれない。そう思って、二人に最近の薫さんについて尋ねてみることにしました。
 前みたいにベタベタして来なくなった、勝負パンツを見せ付けることも、着替えを覗いてくることも少なくなった、エロ雑誌を読むことも少なくなった、下卑た口調で下卑たことを言うことも、腰に手を当てて栄養ドリンクをあおることも少なくなった。
 それが妙だと語る皆本さんでしたが、言い終えて浴びせられていたのは冷たい視線。
 それがさびしい? 変態! ド変態! EL変態! そもそも二人っきりなのに薫ちゃんのこと持ち出すなんて。日焼けしたらモテるとでも思ってるの。ていうか、本編でモテ描写見たことないよね、この設定倒れ。前髪おろしても生際は変わらないわよ。
 そんな感じに気まずくなる車中でしたが、薫さんについてのこととあっては、紫穂さんも黙っているわけにはいきません。
 あくまでも友情の証として透視していない親友の目から見た薫さんは、調子は悪くなさそうとのことでした。
 
「ちょっとは女の子らしくなったって事じゃない?
 私み・た・い・に」

 そして、耳に息を吹きかけてくる紫穂さんに動揺しつつも、皆本さんは、とりあえずの安心と、薫さんもそういえば思春期に入るのかと納得しつつ、保護者的な感慨に、そしてまた違う感慨にも浸るのでした。
 そんなこんなで到着したのは、マンション。
 賢木先生情報によれば、ここにパンドラの手がかりがあるんだとかないんだとか。
 耳に息を吹きかけているうちに皆本さんの懐から拳銃を奪った、トゥーハンドの紫穂さんは、その表情を喜色に満たすのでした。
 そんな中学生に、皆本さんは薫さんに抱いたのとはまた別の感慨を抱くのでした。 
 




 一方、その頃、薫さんは、学校で思春期を迎えつつあるクラスメートたち講釈を打っていました。悠理さんの胸の感触という、エロオッサン的な。




 












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