しっぽきり

一本目 谷崎さんが触っていたのがもう少し下だったら、ナオミさんも超度7に。
二本目 HAHAHA、いざというときには出してくれるはずですよ……ちがうの?

 
「当局ではパンドラのテロを予知し、すぐに現場へ急行したのですが――一般市民を守るのが精一杯でした。だが、ケガ人が出なかったのがさいわいです。
 バベルは今後も超能力を駆使して一般市民の安全を守っていく所存です」

 事実を八捨九入ぐらいしたインタビューを公共の電波に乗せる局長に事後処理を一任し、皆本さん宅にズラかってきた一同。
 初めて目にしたエスパー犯罪集団を怖がりながらも、皆がいてくれて一安堵の守られた一般市民A皆本母さんですが、一方、守られた一般市民Bの槍手さんは、怒りしかありませんでした。
 仕掛けた見合いはエスパー犯罪集団にぶち壊され、そして、なにより皆本さん菜々子さんには、結婚する気なんてさらさらなかったのです。ここまで悪条件が重なってしまっては、パワーAを誇る「テントウムシのサンバ」でも手の打ちようはありません。
 お見合い人生の中でも最大の屈辱を味わった槍手さん。その槍手さんをなだめるように、紫穂さんは事情を説明します。
 そもそもの発端は、菜々子さんの親戚が槍手さんに見合いを依頼したこと。そもそも菜々子さんは断るつもりでしたが、槍手さんの挙げた候補のなかに皆本さんの名前を見つけて、考えを変えました。
 わざわざ連絡して会うのは気がひけるけど、でも、お見合いって場所を作って会えば、逆に面白がってくれるかもしれない。そして、そのときに、ついでに話を聞いてもらえれば――。
 そこまでスラスラと話したあと、紫穂さんは菜々子さんがしたがっていた話については、話すのを逡巡しました。そんな紫穂さんに、皆本母さんは、必要なら後で話してくれるはずと助け舟。
 そこで、会話をきると、今度は薫さん、葵さん、紫穂さんを抱きしめました。

「誰か一人おヨメに来ない? なんなら全員でも!!」

 法律なんて知るかよレベルの寛容さを示す皆本母さんに、三人も興奮。しかし、直後トルテも興奮しだしました。
 薫さんの膝から降りて向かう先には、帰宅した皆本さん。
 精一杯の愛情をこめて、老練の舌技で迎えようとするトルテですが、先に飛び込んだのは、テレポーター、葵さん。
 ハニー、帰宅時間のメール、お義母はんとすでに嫁気取りの距離感です。
 しかし、お義母さんの言葉に従えば、あくまでも皆本さんは三分の一夫。紫穂さんは、独占は許しません。
 一気に二人は対決姿勢。この腹黒サイコメトラー、これだからテレポーターはと険悪な雰囲気。ごまかすために薫さんはと言い出す皆本さん。
 その薫さんは、皆本母さんを独占中でした。
 どうにか、話を流せた安心の皆本さんは、帰り道に買って来た食材を掲げて見せて、

「ゴハン食べながら話そう」

 と一言。
 これに皆本母さん大喜び。
 
「お母さん、コーちゃんの料理大好き!!
 ウチのお嫁にしたい!!」
 
 歓喜の声を上げて息子の胸に飛び込む皆本母さんに、三人は皆本さんのお嫁さんの比較対象がなんと旦那さん本人であることを悟りハードルの高さに愕然としつつも、「全部やらせればよくね?」と横着な未来を夢見たりもするのでした。



「じゃあ僕と賢木と君達三人と母さんとで、六人分――」
「七人分」
「えっと、帰らないんですか?」
「まだ事情を聞いてないから」
「はあ」
「だから七人分」

 そんなわけで、皆本さんの気合の入った料理七人分に舌鼓がポンポコ打たれる食卓。話題は、菜々子さんのことで独占されていました。ついでに、賢木先生の肉も肉食獣の紫穂さんに独占されていました。
 菜々子さんは、お見合い前に既にプロポーズされていました。
 家族にも誰にも言わなかったこと、それを皆本さんに話したかった。
 それが、菜々子さんがお見合いを受けた理由でした。
 全てを話し終わった後、菜々子さんの顔は清々しい表情に変わっていました。菜々子さんは、プロポーズしてくれた相手のことが好き。話を聞いただけで、自分はちょっと背中を押しただけ。皆本さんは、自分が相談に乗る必要はなかったんじゃないかと、言いますが、菜々子さんにしてみれば、ほんの少しだけ、最後の一押しをもらいたかったのです。
 
 どうしても頼りたくなった時、もう一度相談して甘えたくなった時には、連絡するかも。そん時はグチぐらい聞いてね?

 小さな頃約束を交わした男の子に、ほんの少しだけ。
 そして、鈍感な少年だった皆本さんの顎をツンとつつくと、菜々子さんは笑って、自分の不器用な初恋を終わらせたのでした。


「……透視して知ってたんならそこまで教えてくれよ。どー反応していいか困るじゃんか!」

 お話は終わって、そうグチる皆本さんですが、紫穂さんは、それは野暮だし「いいエスパーは仕事を心得ているものよ」と取り合いません。
 そして、トルテを指でもてあそんで満足させつつ、皆本さんは自分の個人的なことを三人に話しはじめました。

 お母さんは料理が下手で、食事はお祖母さんがつくってくれていたこと。
 そのお祖母さんが入院してから、料理を勉強しはじめたこと。
 お父さんは仕事、お母さんは祖母の世話があったから、コメリカではしばらく一人、学生寮で暮らしていたこと。
 お祖母さんは五年前に亡くなり、お父さんは今出張だということ。
 
 薫さんは笑って、皆本さんことを止めました。
 いっぺんに教えてもらう必要なんてない、ずっとチームなんだから、少しずつ聞いていけばいい。
 そして、一緒にいさえすれば、知らないことより皆本さんとの思い出のほうが多くなるのだから。

「そうそうイザとなったら透視もできるから」

 そう紫穂さんの目論見を代弁して、肉を独占された仕返しをした賢木先生に苦笑しつつ、それでも薫さんは心の奥底にたまったモヤモヤを忘れることができませんでした。
 そんな薫さんはさておき、とんだ骨折り損に一日を終わらせてしまった槍手さんはしかし、新たな見合いセッティング対象にモチベーションを高めていました。
 知的そうで、仕事ができそうで美人なのに、ツメが甘いのか、悪ノリしちゃうのか、とにかく結婚できない女性を発見したのです。
 爛々とした槍手さんの眼光にやられたのか、なぜ皆本母さんまで「面白そう」と乗り気。自分を継いでくれるかもしれない、逸材の登場に槍手さんのテンションはさらにヒートアップし、とりあえず、皆本さんは、いい薬だろと、放っておくのでした。
 

 
 そして、夜。
 結局、皆本さん家に泊まることになった薫さんたち三人。
  薫さんは、目を覚まし、違和感に気付きました。
 三人、賢木先生・皆本さん・トルテと部屋を分けて眠っていたはずなのに、自分のすぐ側でトルテが尻尾を振っているのです。さらに見ればグッスリ眠る皆本さん、賢木先生。
 どうやら、トイレに行ったときに部屋を的確に間違えてしまったらしい。
 自らのメインヒロイン属性に呆れる薫さん。

「帰るわ、トルテ。
 おやす――

 みっ!?」

 頬を赤らめつつ部屋に戻ろうとしたそのときでした。
 なんと、皆本さんの手が薫さんの頭を掴んだのです。

「……夜中にチョロチョロすんな!
 おとなしくしてろ、トルテ……」

 どうやら、これまた的確に薫さんのことをトルテと間違えたらしいのです。
 寝ぼけているのか、夢の中か。そんなことを思う間もなく、薫さんは、皆本さんに引っ張られ、そして、皆本さんの腕と、そして胸の中に。
 頬が熱い。心音が早い。
 暗闇の中、辛うじて見えるのは、自分を抱く皆本さんの腕。そして、息を吸えば自分のよく知っているのに皆本さんの匂い。
 
「………………!!」

 腕も、匂いも。
 よく知っている皆本さんなのに、どれもまるで知らないように感じられました。
 知っているはずなのに、知らないといってくる自分の心。
 それが、不安で、頼りなくて、切なくて。
 薫さんは、なんとか皆本さんの腕の中から抜け出すと、すっかり熱くなってしまった体と心を冷やすために、外に出ました。

 やっぱ……あたし、変だ!!
 どーしよう!?
 ヤバイよ……!!
 
 こうして、夜は過ぎていき、そして朝もやってくるのでした。 
 












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