しっぽきり

 春の陽気に惑わされたのか、夏休みが終わった後のお嬢さまというカラフルな妄想に一瞬意識を奪われたハヤテ君。
 それはそれとして、マリアさんの言うとおり、嘘デートなんて何をしたらいいのかトンと分かりません。
 というか、デートというものが何をするのか自体見当がつきません。一緒に遊園地に行くとかがそうなのですが、それはハヤテ君の中では地雷処理の範疇にあるので、とにかくわかりません。
 マリアさんも似たようなもんだろと思っていたら、年上のお姉さんだからそれらしく扱えと、なんだか照れているのをごまかすように怒り始めました。
 力関係とか年功序列とかをしっかり心得ているハヤテ君は、うなずき、お嬢さまのシナリオどおり嘘デートをすることを提案しました。
 閉鎖区域で二人きりとか、特大ステーキとパインサラダは注文しちゃダメだとか、柿崎ぃぃぃっとか、迫り来る巨人宇宙人たちを歌でデカルチャとか、奢った回数の張り合いとか、どっかからインスパイアされたようなナギお嬢さまのシナリオ。渡されたときに注意されたのは、「ヤンデレを甘くみるな!」という一言。いざというときは、設定以上のスペックを発揮するヤンデレ。奴らから命を守るためには、忠実に完全に「絶対遵守の王のシナリオ」を遂行すること。
 言い渡したナギお嬢さまの剣幕に改めて、ヤンなんとかの脅威を想像するマリアさん。緩急をつけて襲い掛かってくるヤンなんとかのやり口は、父親の生き様のせいかよく知っているハヤテ君。
 それを避けるためにも、お嬢さまの言うとおり行動しなければと、ハヤテ君は誓うのでした。




 一方、三千院邸のソファーの上で潰れていたのは咲夜嬢の豊満な胸でした。
 彼我の戦力差を確認したくないのか、ナギお嬢さまが目を閉じながら語るのは、ハヤテ君とマリアさんがヤンデレ退治のために自分のシナリオで嘘デート中だということ。
 フンフンと頷きながら聞いていた咲夜嬢。上体を起こすと、胸がブルンと震えました。何気ない素振りで外を見るナギお嬢さま。
 咲夜嬢が口にした懸念は、そのシナリオを見たヤンデレが逆上する可能性。
 咲夜嬢がしなやかな指で動かしたストロー越しに、咲夜嬢のそれを直視してしまったナギお嬢さまは、「その発想はなかった」と考えるように、視線を外し振り返りました。 

『ゆるさんぞあのクソ野郎―――!! 私が書いた手紙を利用してメイドさんとデートだとぉおお!!!』

 ところで咲夜嬢の懸念はなんか当たっていたらしく、いつのまにか帰ってきていた神父さんが、いつのまにか激怒して飛び出していきました。
 


「うわーハヤテ君!! この服、超かわいいですわ」

 お嬢さまのシナリオに書かれていたのは、まず服を買いに行けということでした。
 そんなわけで訪れた婦人服売り場。
 てっきりマリアさんの服だろうと思い込んでいたハヤテ君。ですが、マリアさんは超かわいい服をハヤテ君に着るように強要してきます。
 当然いやがるハヤテ君ですが、「せっかく二人でお買い物に来たわけ」と引いてくれません。それどころか、「絶対遵守の王のシナリオ」に書き加える裏技まで使おうとしてきます。そんなズルはよくないと嗜めるハヤテ君。マリアさんも、分かってくれたのかペンを締まってくれました。
 と、思いきや、もうあらかじめ「ハヤテに女装させて喜ぶマリア」が書き込んでありました。
 女装するハヤテ君というヤンデレさんへの直接的ダメージ、ライバルは女装させて喜ぶマリアさんという間接的ダメージを見込んだお嬢さまのシナリオだったみたいです。
 勤勉なメイドさんと怠惰を体現するお嬢さまにも、思考的に近い部分があるんだとハヤテ君は新たな発見をするのでした。
 それでも何とか女装だけは回避しようと、舌を必死に動かすハヤテ君でしたが、そこは天才設定のマリアさん。完璧に反論を潰され、なんだか言ってハヤテ君もイヤよイヤよも好きなうちなので、結局試着室にIN。めでたく女装となり、栄光のナンバー86を胸に、くじ引きでティッシュを引き続け、GW中は家でゴロゴロが一番と「高いところにあるブドウは」的な思考で自分を慰めようとしていた普通の女の子が、自分の思い人が女装していることと、自分の思い人が自分よりミニスカートが似合っていることにショックを受けて旅に出ることを決意させることになるのでした。


 ハヤテ君の女装を合法的に見ることができて、ナギお嬢さまのシナリオに従っただけと言いつつも上機嫌なのが隠せないマリアさん。
 シナリオは絶対。そう口にしつつ今後の展開を尋ねるマリアさん。ノートをめくるハヤテ君。が、ハヤテ君が、突然頬を赤くし、ノートを閉じました。
 慌てふためくハヤテ君に、「これはまたナギが面白い――けしからんことを書いていたに違いない」と考えたマリアさんは、ハヤテ君からノートを取り上げシナリオを確認しました。
 水着とか書いてます。脱ぐ!! とか書いてます。マリアさんが。
 沈黙が場を支配して、年上のお姉さんとしての責任を果たさなければいけない。マリアさんの責任感が、水着売り場に足を運ばせました。
 そんな責任感溢れるスカートビキニを試着したマリアさんが、姉と旅行に行きたいけど海外なんてもってのほか、地球の航空力学とか熱核タービンエンジンとかフォールドシステムがどんなレベルか知りませんが、飛行機なんて鉄の塊が空を飛ぶなんて不可解ですし、ましてやそれで旅行をするなんてとんでもないこと、だからGW中は学生の本分である勉強に費やそうと、普通の女の子との違いを見せる生徒会長さんに、自分の思い人となんか二人でイチャついているどころか水着を試着しているメイドさんがいるというショックと、そのメイドさんの胸が自分よりも大分――なことのショックを与え、旅行を決意させているとは知る由もないのでした。



 マリアさんはなんだか疲れていました。
 ハヤテ君を女装させたのは楽しかったですが、よくよく考えればそれはお屋敷でもできること。
 水着の試着は恥ずかしいものでしたし、周りの人にはジロジロ見られるし、なにより嘘とはいえ男の人とデートをするということは精神的にとても疲れるものでした。
 だから、こんな嘘デートは、
  
「でもまぁ。さっきのマリアさんの水着姿店……とっても可愛かったですよ」
 
 そんなに悪いものじゃないのかもしれない、そう思いました。

 そんなデートも、とうとう最終章。
 最後の、決着の舞台は水族館。
 そして、人の道は外してもキセルはしない律儀な神父も自分の本気を見せつけるためにどこかに向かうのでした。












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