しっぽきり

 ナギお嬢さまは、感慨に浸っていました。
 ハヤテ君と遊んだ午前中は、まさに夏の大一番みたいな楽しさ。それを終えたティータイムとなっては、カナカナと鳴く虫の音に夏の終わりを思う切なさを噛み締めるというか、宿題が多くて大変だからそれどころじゃない、今年の八月三一日は日曜日だから、サザエさんが「カツオ、宿題まだ終わってない」ネタで来ることは確定、つかメインヒロインを二ヶ月以上放置して過去編とかありえなくね? みたいな心境にもなろうというものでした。
 出番を独占し、昔の女とよろしくやって、Mっ子と過去にも出会っていたフローラパターンでフラグを強化していたハヤテ君は、とばっちりを食らう前の話題逸らしに、なぜ今日が休みなのか尋ねます。
 GW前の休み。不思議なことこの上ない日程です。思わず口にしたとはいえ、当然といえば当然のその質問に、ナギお嬢さまは、とにかく寝転ぶ日だと答えます。
 世界に冠たる白皇の生徒がそれでいいのか、と訴えたくもなりますが、本当の理由は、生徒の多くを締める金持ちどもがGWの海外旅行の計画を立てる配慮だとかで、やっぱり納得しがたい理由です。
 遠足翌日のあれとか今回とかで、白皇の休みの多さに思うことしきりのハヤテ君に「休みの多さは仕方ない」と誰かが言いました。


 キラッ☆


 冥土の果てまで抱きしめたくなるような笑顔。
 柔らかで豊満なラインを覆うエプロン。
 そして、太ももが見えそうなぐらいにたくし上げられたスカート。
 三千院家の妖精・マリアさんでした。
 軽く涙を流しているように見えなくも無いハヤテ君は、マリアさんの気合の入りぶりを不審がりますが、そこはマリアさん。当然、出番が少ないからストレスをためて、ついキラッ☆となったわけではありません。出番の少なさを嘆くのではなく、回ってきた出番を最大限活かすことをナギお嬢さまに伝えたかったのです。そんな、放置慣れし過ぎたがゆえに何かを悟りかけているマリアさんが明かした、白皇に休みが多い理由とは、意訳すると「金持ちのガキ共はひ弱で、努力なんて言葉を知らなくて、鍛えようとするだけ無駄だから」ということでした。つまりは、目の前にいる金髪ツインテールさんみたいな?
 それはそれとして、ナギお嬢さまは、今日のお休みを有効に活かすことにしました。GWの予定を決めることにしました。その予定は、ザ・金持ち的な予定。

「やっぱ……海外旅行かな?」 



「海外なんて……絶対行かないわよ」

 同時刻、時計塔の上の部屋、生徒会長室。姉が立てた、というか要求してきたGWの予定を妹さんは思いっきり拒否しました。
 ゴールデンなウィーク、つまり黄金な週間です。ならば、海外に行かないことにはしょうがない、それもヒナギクさんのポケットマネーなら最高。机を叩き、土下座せんばかりの勢いで腰を折り、押して引いて説得を続ける雪路さんですが、ヒナギクさんは頑固。
 あきらめずに、海外の楽しさと思い出を作る大事さを、主にブランドショップで作ろうと強弁する雪路さんでしたが、ヒナギクさんは、なんで海外まで行ってお姉ちゃんの服を買わなきゃいけないのと訴えてきます。しかし、そこは年の甲。なんと雪路さんは有名ブランドのカタログを持ってきていたのです。
 日本では売ってない新作がこんなに安く買える。
 雪路さんにとっては最高の殺し文句のつもりでしたが、ヒナギクさんは揺らぎません。しかし、勢いで言った一言がヒナギクさんの心にヒットしました。
 こんな服で迫れば普段制服しか見てない男子なんて……。
 ヒナギクさんが思い浮かべたのは、同学年の同級生、瞳を星にしたハヤテ君。
 
「キレイだよ。ヒナギク……」
「え……ホント?」 
「ああ。特にそのエヴァンゲリオンのプラグスーツみたいな新作が最高に似合っているよ」
「バ……バカ……そんなウソばっか言って……」
「本当さ、ヒナギク。そのアマードトルーパーのスコープをイメージしたインナーも素敵すぎるよ。
 あとそのマジンガーの足の黒い部分みたいなくつと、ボルテスVが国民的人気作の国で作られたカバンとフルメタル・パニックに出てきそうな実用的な時計とJ9シリーズの……」

 どこからかは知りませんが、雪路さんの囁きが混じっていました。
 そんなわけで、ハヤテ君の顔をつい思い浮かべた自分への怒りも手伝って、ヒナギクさんは雪路さんをボコるのでした。
 


 その頃、三千院邸にはフラリと訪れた、海外で手に入れてきたらしい葉っぱやキノコをお土産に持ってきた伊澄さんと、やっぱりGWの予定について話していました。
 ヨーロッパやアフリカなど、ワールドワイドな予定を考えているナギお嬢さま。ですが、一歩進んだ国際人・伊澄さんは、昨日も帰宅中にフラリとオランダに迷子になっていたというのです。
 それはそれとして、咲夜嬢も海外に行きたいというので誘えばくるんじゃないかと言う伊澄さんは、二人に自分が道順は忘れても、恨みは簡単に忘れない人間だということを知らしめるのでした。
 特にどこか行きたいという場所もないナギお嬢さまは、いつもやっているとある方法で行き先を決めることにしたのでした。


 話題に出ていた咲夜嬢は、レンタルビデオ・タチバナにいました。
 話題はここでも、GWの予定。サキさんと旅行には行かないのかと問う咲夜嬢に、よくぞ言ってくれたと心の中で快哉を叫びつつ、期待の視線をワタル君に向けるサキさんでしたが、ワタル君の答えは「あるわけねーだろ」の一言。
 自分はどこかに行きたいと言う咲夜嬢。旅行に言っても疲れるだけ、我が家が一番、と夢がないようなことを言い出すワタル君。大体、サキまで連れて行ったら旅費も二倍だ云々と言い出します。露骨に落ち込むサキさんをチラリと見た咲夜嬢は言いました。
 
「自分の夢のない根性をウチが叩き直したる」

 胡乱な目でワタル君を前に咲夜さんは続けます。

「GWは……ベガスに行こう!!」

 ラスベガス。ギャンブルの都ラスベガス。
 テンションの上がりそうな響きですが、夢を無くした欠落者ワタル君は、驚いたり、たじろいだり。旅費はカジノで稼いだ後払いと咲夜嬢が太っ腹なところを見せても、旅の楽しさとスリルを理解しようとしません。そんなワタル君の根性をこそ、咲夜さんは叩き直そうと言うのです。
 ですが、問題点が一つ。未成年の二人はカジノに行っても遊べません。二十歳以上の、成年が必要、二十歳以上の……いました。
 そこにいたのは、ドラクエ5でカジノに八時間、主人公・勇者の息子・スラりん・ゴレムス・ピエールの全員にメタルキングの剣を、嫁と娘にグリンガムの鞭を装備させるだけのコインを獲得したものの、中断と教会を忘れていて電池切れ、ワタル君に紅茶をいれてもらうまで本気で凹んでいたサキさん。
 大赤字展開を予感させるフラグにワタル君は思わず叫ぶのでした。





 再び戻って三千院邸。
 目の前にしたのは、世界地図。手にしたのはダーツ。刺さったところに旅行に行くという、オリジナリティの塊みたいな方法でGW旅行の行き先を決めるというのです。
 そして放たれた一投目。
 突き刺さったのは日本海溝。
 呆れる二人ですが、そこは三千院家行こうと思えば行けます。三千院家がなんとなく作った有人深海調査艇・しんかい三千院を使えばいけるのですが、普段は反りが合わない帝さんとナギお嬢さまが異口同音に「それはねーわ」と否定したネーミングなので、使いたくはありません、というか、投げミスなので、ナギお嬢さまは今のは練習、これから本番と、どっかの接待ゴルフみたいなことを言い出し始めました。伊澄さんが白い目を向ける中、じりじりと気付かれないように(三人はもちろん気がついていました)地図に近づき二投目。
 ダーツが向かうのは、ドバイ。熱砂の砂漠、ラクダなんかを想像するナギお嬢さまですが、なぜかダーツは刺さらず、床にポトリ。
 地図の外ということは、宇宙? 日本海と宇宙。ずいぶん過酷な旅。
 従者二人がブツブツ言っているのを、糖尿な食生活の炎髪灼眼な決め台詞でさえぎり、ナギお嬢さまがダーツで直刺ししたのは、銀杏商店街の景品に出した旅行券のパンフレット。
 お嬢さま発案の旅行プランでしたが、今回の旅行では、トルコ式の粘り気のあるアイスクリームでもてあそばれたことがトラウマなナギお嬢さまは、トルコをスルーして全日地中海で過ごすことを宣言。お前も連れて行くと執事にいい、海外と聞くとマグロ漁船・パチモン・海賊版ぐらいしか思い浮かばないハヤテ君を喜ばせるのでした。
 そして、舞台はギリシャはアテネに。












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