しっぽきり

 ハヤテ君とナギお嬢さまは今日も今日とてバイトに勤しんでいます。とはいっても、なかなかお客は来ず、正直時給の無駄なのですが、店長が何も言わないことをいいことに、貯めまくっています。
 そんな暇をもてあます喫茶どんぐり。ハヤテ君はあるチラシに気付きました。
 銀杏商店街・春のシルバーフェスティバル。
 かわいい動物キャラを入れて頑張った感のあるチラシ。マスターの説明によれば、毎年恒例の商店街イベント。期間中、イベントや福引きとかで商店街の活性化を図るというちょっとしたお祭りなのだそうです。なのですが、時勢が時勢。不況のために集客に苦戦し、イマイチ盛り上がりにかけているそうなのです。
 その原因の一つが、福引の景品。
 今年は360用HD-DVDプレーヤー。製造が終了したレアアイテムらしいのですが、欲しいと思われてるなら製造終了しないよね、ということでなんとなっくマニアック。
 去年は、ワンダースワン。一昨年がドリームキャスト、追ってバーチャルボーイ、スーパーファミコン内臓テレビ、ローソンのロッピーでスーパーファミコンのゲームを落とせたアレのメモリカセット、サテラビュー等、錚々たる景品でしたがどれも不人気。
 どうせ景品にするなら海外旅行ぐらいじゃないと、とハヤテ君が言外に「GWどっか海外連れてって」とおねだりをしていると、マスターの表情がなぜか明るくなりました。
 今年はヒーローショーがすごい。
 マスターの明るさの理由はこれでした。
 正体不明の謎の大型新人・仮面スターが加入し、アクションのレベルが大幅にアップしたらしいのです。ただ、なんでもその仮面スター高いところが苦手らしいのですが。




 イカ男が、触手をぬめらせ叫びました。
 目デカちゃんが、震え助けを求めました。
 そして、ヒーローが現れました。

 商店街の平和を守るため、悪を討ち物を売り、シャッターの落書きを消す。
 その名も、いたわり戦隊シルバーシート。
 五人いたのですが、相次ぐ激戦で四人が戦死。現在は、夏場に現れた六人目の戦士とともに二人組みですが、亡き戦友の思いを継ぐために戦隊を名乗っているシルバーシート。

 そういう補正を入れてみると楽しめそうな気もしますが、現実は厳しく五人分のコスチューム代も人件費もないから二人のシルバーシート。
 ご当地ヒーローについての認識は微妙にずれている二人でしたが、レッドの動きの良さについてだけは、意見は一致していました。
 軽やかな動きで、パンチ・キック、さらに鮮やかな剣技を魅せるレッドにお嬢さまも釘付け。きっと、名のある人に違いない! 足橋先生をはじめとする自分の有名人サイン棚に並べるために、お嬢さまを控え室と向かいました。



 一方、控え室。
 メットを脱ぐシートレッド。その正体は、白皇生徒会長・桂ヒナギクさん。
 生徒会の仕事で、商店街に来たらレッドの人が負傷。なんだかんだで、年頃の乙女が、飛んだり跳ねたり蹴ったり殴ったり剣で叩いたりするのを知り合いの人に見られるのはちょっと恥ずかしいと語る好きな男の子に、飛び降りたり、蹴ったり殴ったり締めたり、木刀で切りかかったりするヒナギクさんは、正体を秘密にする条件でレッドの代役をOKしていたのです。
 とりあえず、ヒナギクさんがそういうのを恥ずかしがるのを理解した愛歌さんが、心の弱点帳に書き込んだり、絶対秘密という言葉を芸人的な意味で受け取ったり、タオルを差し出したりしていると、ドアが開きました。途端に慌ててメットを被り、パイプ椅子ごと後ろに倒れるヒナギクさん。
 何事かと振り向くと、部屋に入ってきたのは見知った顔。この春クラスメートになったばかりの、ナギお嬢さまとハヤテ君でした。
 思わぬ乱入者に驚くヒナギクさん。
 知り合いに見られたくないと言った途端のこの二人。しかも、一人は自分の好きな男の子。
 何事かと、不規則に高まった心音を落ち着かせようとしていると、ナギお嬢さまが自分に近づいてきます。
 そして、差し出したのはサイン色紙とサインペン。
 つまりは、自分のサインを求めているのです。
 あまりの展開に驚き、二人の目的を問いただすヒナギクさん。ですが、これが失敗。二人に、声を聞かせてしまったのです。メットの中で篭った声とはいえ、聞き覚えのある声に、正体を考え出す二人。電気屋の娘か、ブタモグラかと話し合いはじめた二人の疑問を消すために、ヒナギクさんはわざと掠れた声を出します。
 「彼、昨日お酒の飲みすぎで、声が潰れちゃってて」と愛歌さんの、ヒナギクさんに貸しを作るためのフォローが入って、何とか消火に成功。続けて、自分がここにいることも、白皇が地域活性化のために、商店街に助成金を出すからその視察と説明して、できる女ぶりを見せ付けます。
 第一声に思わずレッドの中の人が女性かと思ったというハヤテ君の言葉に、またヒナギクさんドッキリですが、愛歌さんは笑って流します。ナギお嬢さまも「男役アクションヒーローの中の人は、胸が邪魔になるから、女の人は不可能。まっ、よっぽどのペッタンコなら話は別じゃねーの? あっでも、女役の中の人には男が入る場合もある。これ豆知識な」と豊富なオタ知識を披露。「ですよね~」と愛歌さんも同意。正体をバラすわけにもいかないヒナギクさん、メットの中で涙目。
 そんな無邪気が二と、邪気たっぷり一のペッタンコ言葉責めが続く中、再び控え室に誰かが飛び込んできます。
 今度はステージスタッフでした。天性のカリスマ性でもあるのか、さっそく弱みを握ったのか、なぜか「さん」付けで頼られる愛歌さんの元に届けられた報告は、ブルーが逃げ出したという緊急事態。
こんなつまらないステージはやってられない、というかいきなりフラッと現れた正体不明の新人(それも少女っぽい)のほうが動きがいいとかやってられない、断じて駆け落ちとかそんなことじゃない、海賊王にでも吹き替えしてもらうか急遽南米支部に行ったことにしてくれ、と言い残して失踪したというのです。
 困ったことになりました。
 スタッフの中にはもう老人しかいません。愛歌さんも肉体労働には向いていません。
 どこかに、運動神経が良くて激しいアクションができて、物覚えのいい若い男はいないものか――
 いました。
 全員の視線を一身に受けたのは、ハヤテ君。
 採寸用のメジャーを取り出し、愛歌さんが笑いました。



 とりあえず合わせるだけ合わせてみようと、執事服のままステージに上がったハヤテ君に、ヒナギクさんの心臓がまた不規則なビートを刻み始めました。
 声がでないという好条件はありますが、どこでどうバレるか分かったものではありません。それに、バレたら一番恥ずかしい相手。
 ならば一瞬で殺ればいい。
 ヒナギクさんの好意はちっとも伝わっていませんでしたが、なぜか殺意はハヤテ君に届いてしまうのでした。
 そんなステージ上の二人をよそに、ナギお嬢さまはうなっていました。
 つまらないのです、台本が。
 客席のチビっ子がさらわれて、お姉さんが叫んでヒーローを呼んで――あまりにもベタです。せめて、芋羊羹ぐらいは欲しいものですが、それすらありません。
 ここで、お嬢さまのクリエイター魂に火がつきました。
 オタオーラを全開のお嬢さまに、ステージの経験がないスタッフも引っ張られ始めます。
 お嬢さまの、改変がはじめました。
 レッドが実はブルーの事が好き。
 大きなお嬢さん大喜びのアイディアが閃きました。
 よりにもよってそんなアイディアに、慌てるヒナギクさん。
 ですが、ステージの外で話はドンドン進んでいきます。
 設定は両方男。だが、それがいい。
 なんか決まったっぽいです。
 レッドのせつない気持ちに気付いたブルーがそっとレッドを抱きしめる。
 主の声は神の声。主のメイドの声はもっと凄い神の声。
 そう思っているハヤテ君は、さっそく実行。レッドに抱きつきます。鷲掴み、掴めません、無いものは。
 赤面のヒナギクさん。
 そして奇跡が起きました。
 反射的なヒナギクさんの行動と、ナギお嬢さまのアイディアが一致したのです。
 つまりは、ブルーを剣で一刀両断。
 レッドの迫真の演技に沸くステージ外。混乱の吐息を吐くヒナギクさん。失神して泡を吹くハヤテ君。
 とにかく、スタッフは手ごたえを掴みました。
 これなら、ステージも、ひいては銀杏フェスも大成功。集客率アップ間違いなし。
 色めき立つスタッフに、お嬢さまはこう言いました。
 ごめん、それ無理。あのヒーロー、根本的にダサいから。
 ご近所のよしみで、足橋剛治先生が五分ぐらいで走り書きしたヒーローですが、やっつけ仕事ではやっぱりダメのよう。
 福引の景品豪華にしたほうが効果あり。
 乾いた大人の正論を口にするナギお嬢さまの、スタッフはグウの音も出ません。
 ですが、やっぱり頼れるのは愛歌さん。なんと、ご近所のよしみということで、三千院家から景品の提供を確約させたのです。三百万円相当の海外旅行ペアチケットを百本。
 スタッフ大興奮。ヒナギクさん、無駄な努力に呆然。
 

 こうして、銀杏フェスは例年の数倍の集客に成功し、空前の大盛況。
 その中には、いつもよりお客は入ったけど、表の大盛況を考えるとやっぱりお客さんがこなかった喫茶どんぐりでのバイトを終え、マスターからバイト代の代わりとして現物支給された福引券を手に、運命を変えるかもしれない福引きに望む西沢さんの姿もあるのでした。

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2008.05.22 21:43  | # [ 編集 ]













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