しっぽきり

 あれやこれやで、泉さんが高尾山で迷子になった原因を作ったことになってるらしいハヤテ君は、謝罪するという本来の目的をすっかり忘れたのか、泉さんになぜメイド服を着ていたのか尋ねていました。
 理由は、短いような長いような話のはずでしたが、突き詰めるとお父さんが変人だからの一言につきるようです。
 高尾山放置から救出された泉さんをストリンガーさんは最初抱きしめてくれました。泉さんは泣き出さんばかりの父の様子に、自分が愛されていることを実感したのですが、事情を話していくうちに、ストリンガーさんの様子が変わり始めました。
 エレクトロニクスの最先端である、瀬川の家の娘が携帯電話を持っていなかった。
 ストリンガーさんは泉さんの父であると同時に、世界のエレクトロニクスを担う瀬川家の長でもあり、この事実はどうしても許せないことでした。立派なカイゼル髭を飛ばさんばかりに。
 罰として、泉さんに一日中メイド服を着ることを命じたのです。
 商売を営む瀬川の人間に必要なのは奉仕の心。虎鉄さんが執事をしているのも、今回メイド服を着るように泉さんに命じたのも、その信念によるもので、コスプレ趣味の表れなんかじゃありませんでしたが、そんなお父さんの深い考えは若さゆえ分からない泉さんにとっては、ストリンガーさんの理不尽な強要にしか思えず、とても嬉しいことでした。
 ですが、メイド服で学校に行くのはさすがの泉さんでも限界を超える羞恥。それで、何日も学校を休むはめになってしまったのです。
 同じ攻めも何日も続くと飽き飽き、そう語る泉さんに、ハヤテ君は自分の責任を痛感しました。
 シラヌイが盗んだのもハヤテ君の意思ではありませんでしたし(シラヌイはマリアさんの言うこと以外聞きません)、ストリンガーさんがコスプレ強要しだしたのもハヤテ君の知ったことではありません。ですが、ハヤテ君の想像力は常に飛躍がち。人間関係一つとっても、自分の関わった人間はすべからく、自分に害をなしてくるか、逆に自分にベタ惚れになるか、あるいは跪くべき絶対の支配者であることを信じて疑わないのです。
 そんなハヤテ君ですから、かするほどしか関わっていない今回の件でも自分の責任を感じていました。そして、泉さんから自分の目的を聞かれた瞬間、確信しました。
 ――エンディングは見えた!
 そう、遠回りをしているかのような会話にも全て意図があったのです。泉さんが、目的を聞く。つまり、自分に意識が向く瞬間を待っていたのです。ここで、謝罪の言葉を口にし、謝罪イベントを発生させれば、エンディングまでのルートを確保できる。そういう深謀遠慮のもと、ハヤテ君が口を開こうとした瞬間でした。
 エレクトロニクスの技術による使ったストリンガーさんの電キックが炸裂したのは。
 着地を決める裸足のストリンガーさん。吹っ飛ばされる土足のハヤテ君。
 突然の父の暴行を非難する泉さんを退けるように、ストリンガーさんはハヤテ君を問い詰めます。
 自分の子供がハヤテ君を好きというのは本当なのかと。
 ハヤテ君は答えます。
 ストリンガーさんの子供が自分を好きなのは本当だと。
 
 ストリンガーさんは愕然としました。
 まだ幼いころ。気持ちポッチャリめで、それもかわいかった幼泉さん(内心では『忙しい夫、不十分なコミュニケーション、心の隙間、黒いスーツのセールスマン、肉屋さん、背徳感、珍しく早く帰ってきた夫、ドーン、歓喜の瞬間』を想像していたとはいえ)が自分のお嫁さんになりたいと言ったことを思いだし、泣き始めました。
 こんな男とは思えないようにナヨナヨした優男に惚れるなんて思ってもみませんでした。
 ――娘が選んだ男。外見はこうでも内面には見るべきところがあるのかもしれない。
 何とか思いなおし、泉さんのことをどう思っているのか、ハヤテ君に問います。
 ですが、ハヤテ君の答えは想像を絶するものでした。
 気持ち悪い。迷惑。
 ストリンガーさんは、一瞬よろめき、そして怒りました。
 選ぶ権利がある。発情期の猫。部屋まで連れこんで。下半身さえあればいい。
 尚も口汚く自分の子供を罵る鬼畜を、叩きのめさなければならない。
 ストリンガーさんの鉄拳が火を吹きました。
 ぶつかり倒れた棚に突き刺さるハヤテ君の息の根を完全に止めようとするストリンガーさんを、惚れた弱みなのか、泉さんが制止します。
 ――可愛い娘の頼みとはいえ、これだけは聞けない。
 親の許可なく部屋に二人きりになったばかりか、おそらくは妹の、そして自分の仕える主人を心配して駆けつけたであろう息子・虎鉄さんを蹴り落とし、挙句に、現場を抑えられるや否や、責任を自分の娘に押し付けるように罵倒した男をどうして許すことができるでしょう?
 怒りで興奮状態のストリンガーさんの耳に、ドアが勢いよく開く音と、一つの提案が届きました。
 声の主はストリンガーさんの子供の同級生。同級生、それも娘の親友であるだけに、事情も察しているのだろうと考え、ストリンガーさんも耳を傾けます。
 二人の提案は、男らしく勝負し、勝ったほうが負けたほうの言うことを聞くという、単純明快なものでした。
 ストリンガーさんは、溢れんばかりの怒りの感情を抑え、思考を始めました。
 このまま、ヤツを殺せば問題は解決するかもしれない。だが、ヤツを殺した自分を泉は許しはしないだろう。だが、男の勝負をして、ヤツが負けたとなれば、泉もヤツを諦めるしかあるまい。それで溝ができようと、それぐらいなら時間と肉親の情愛が解決してくれる。しかし、ヤツはこの勝負に乗ってくるのか?
 疑問を抱き見れば、娘の親友の一人である理沙さんが何やら鬼畜に言い含めています。鬼畜の蛮行を知っている理沙さんが、娘のために鬼畜の逃げ道を潰してくれているようです。
 娘の親友達の友情に感動するストリンガーさんに、鬼畜が条件を出し始めました。
 負けたらあきらめるが、自分が勝ったら泉さんとのことを許してもらうこと。そして、虎鉄さんを近づけないこと。
 虎鉄さんの名前に、要求の意図をいぶかしむストリンガーさんに、ハヤテ君をはさらに続けます。
 泉さんに、責任をとらなくてはならない過ちを犯してしまったと。
 ストリンガーさんの体内を感情の激流が駆け巡りました。
 激怒と、諦観。
 一つは、過ちを起こした男への怒り。
 過ちを犯した男を怖がるでもなく、話していること、そして何度となく自分を止めようとしたことへの諦め。
 泉さんの態度は、彼女が本当にこの男を好きであることを、ストリンガーさんに悟らせました。
 ――ならば、自分の感情の決着は、勝負の行方に任せよう。
 ストリンガーさんは、潔く泉さんがウェディングドレスを着ることを認めました。
 そして、勝負の内容をストリンガーさんは明らかにしました。
 それは、瀬川四天王、別名・セブントリトンとの対決。
 響いた終末の鐘に美希さん、理沙さんが震えました。
 四対一、それも相手は馬・仮面・ネギ他選び抜かれた地獄の死者。圧倒的な不利が予想できる戦いでしたが、しかし、目の前の男は受けて立ちました。
 ――その程度の気骨はあるらしい。
 ストリンガーさんも、悔しいながらも、娘が惚れた男に一目置かざるを得ないようでした。



 勝負の準備が整っていく一方で、泉さんはなぜかまた着替えていました。パジャマ・メイド服・私服・ウェディングドレス。既に三度目です。
 景品は景品らしく。そう迫る二人に、着替えさせられたのです。
 こんな展開でとはいえ、ウェディングドレスを着られるのは多少は嬉しかったのですが、二人が語り出したことに泉さんは驚きました。
 皆、勘違いしているというのです。
 ストリンガーさんは、泉さんがハヤテ君を好きだと誤解しているというのです。
 いくらハヤテ君が名うての三次元落とし神とはいえ、まさか泉さんまでそんなことになるはずはない。美希さんと理沙さんは、とうとう堪えきれず大爆笑しました。
 ですが、泉さんを見てピタリと笑うのを止めました。
 なぜか、泉さんが頬を真っ赤に染めているのです。
 二人は、なんだか厄介なことに足を踏み込んでしまったことをようやく悟りました。

 一方、『ハヤテ君かわいい→メイド服ハヤテ君もちろんかわいい→そんなハヤテ君が着るメイド服は?→もちろんかわいい』方式の理論を捏ねてメイド服のかわいさを主張するマリアさんと、それを流し聞くナギお嬢さまはまたしてもアリバイ出演を果たすのでした。












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