しっぽきり

 ナギお嬢さまは主人の鏡です。
 今日も、ハヤテ君が二次元と三次元が脳内でゴッチャになるほど疲労しているんじゃないかと心を配ります。
 事実、ハヤテ君は、ヒナギクさんのツンデレ風にあてられたり、幽霊の神父と手を組んで咲夜さんの歯痛を治したり、伊澄さんとクラウスさんの生霊を退治したりとスピリチュアルに大活躍してきただけあって、少々お疲れ気味。
 ですが、ナギお嬢さまが主人の鏡なら、ハヤテ君は執事の鏡。
 「今日はバイトの日だから、何かやらかさないように見張らなきゃいけないから疲れてるヒマなんてないんだよ、ヒキコモリ」と、笑います。
 そんなハヤテ君の健気さに、ナギお嬢さまの主人ステータスがマックスに達します。
 そして、ナギお嬢さまは宣言しました。
 バイトに一人で行ってくるから、ハヤテ君は休んでいい、と
 お嬢さまの雄々しいとすら言える宣言でしたが、ハヤテ君とマリアさんはなぜか心配そうです。

「お嬢さま、人生は残機ゼロなんですよ? キノコ料理食べたからって、1UPするわけじゃないんですよ? というか、昨日シイタケ残しましたよね? そんな風に好き嫌いするから、一向に揉み甲斐がないんですよ?」

 と、ハヤテ君が指を卑猥に動かせば、マリアさんもマリアさんで、

「寝言は寝て言え」

 と、一言で切り捨てます。
 が、天邪鬼気質ツンデレ科のナギお嬢さまにとっては制止は火に油を注ぐようなもの。
 ついてきたら承知しないからなと、言い残し、一人でバイトに行くために、とりあえずヘリコプターを準備させるのでした。電車とかわけわかんないし。



 そんなわけで、ヘリコプター、リムジン、竹馬名人の背中を乗り継いで、とうとう喫茶どんぐりに辿り着いたナギお嬢さま。
 ですが、お嬢さまの登場に同僚であるところの庶民の鏡、平民の鏡・西沢さんはなんだか微妙な表情です。まるで恋する乙女的にも戦力的にもナギお嬢さま一人では、役に立たないと言わんばかりの表情ですが、少なくとも後者の心配については無用でした。お客がこないし、そもそも接客スキルで言えば西沢さんの方が腕は微妙なのですから。
 それはそれとして、お嬢さまに疑問に思いました。
 ――この店はなぜ、お客が来ないのか?
 可愛いすぎて犯罪をおかしてしまいそうなウェイトレスと、これまた可愛すぎて違う意味で間違いを犯してしまいそうなウェイターと、愛玩動物風味のウェイターがいる喫茶店なのに、お客来ないとは面妖なことのようにナギお嬢さまには思えていたのです。

 一方、外では三千院SP部隊が、悪い虫(若干体力バカ的な一面を持つハム沢さんを振り切って食い逃げしそうな虫、レジのお客を狙いそうな虫、可愛すぎるお嬢さまにちょっかいを出しそうな虫、くぎゅうすぎるお嬢さまの声を録音して目覚まし時計にして販売しようとするナマズ、お嬢さまに営業スマイルをさせたり、コーヒーを運ばせたり、白魚のような指でレジを打たせたり、気性とは真逆の明るそうな声で「いらっしゃいませー」とか「ありがとうございましたー」とか言わせたりと、不当な労働を強いるような虫)を駆除しようと懸命の水際ディフェンスを繰り広げていました。
 しかし、三千院SP部隊もSP部隊の鏡。お嬢さまが退屈しているのを感じると、すぐにSPの一人をお客に派遣しました。
 そして、合理的に統制されたSP部隊の動きを満足そうに見るマリアさんと若干引き気味のハヤテ君もまた、従者の鏡としてお嬢さまの心配をしているのでした。

 ようやく喫茶どんぐりに訪れたお客さん・SP0038(肩に「0038」と焼印されています)に、西沢さんは明るく挨拶。お嬢さまもにこやかに笑って接客を開始します。ですが、お客さん・「0038」(仕様で「0012」と「0017」と「0037」は欠番となっています)の顔を見た瞬間、ナギお嬢さまの表情が変わりました。
 なんと、0038の正体を見抜いたのです。
 そう、ナギお嬢さまは、なんといっても主人の鏡。SP部隊の顔も完全に把握していたのです。
 「ナギお嬢さま」と態々自分の正体を明かすようなことを言ってミスり、SPとしての出世街道を自分で潰してしまった0038の襟元から、通信機を取り上げると、お嬢さまはこう宣言されました。
 ヤラセの客をよこしたら、全員クビ。特に、ハヤテとマリアさんの二人が来ていたら絶対に許さない。
 
 お嬢さまの勘の鋭さに驚きつつも、お嬢さまのヘソ曲がり気質も熟知しているハヤテ君はあきらめムードでした。しかし、メイドの鏡であると同時に、保護者の鏡でもあるマリアさんはなんだか燃えているようでした。なんと、二階から直接侵入しようと言い出したのです。
 すぐにオーナーに連絡をとると(オーナーは、「どうせ趣味の店だし、あとで動画を公開してくれるなら」とOKしてくれました)、さっそくミッションスタート。
 


 一方、暇をもてあますお嬢さまは西沢さんに、「恋話でもしてみないか」と仕掛けてみました。主人の鏡とはいえ、お嬢さまもまだ一三歳。背伸びしたい年頃だったのです。
 

 コンパスみたいなアレで、二階の窓が音も無く開きました。マリアさんはとても楽しそうでした。


 西沢さんもお嬢さまの挑戦を果敢に受けました。一六歳とはいえ、年上。意地を見せたかったのです。
 ゴングは鳴らされました。
 デートって、したことある?
 ジャブにしては重めの一撃です。
 西沢さんだって高校二年生。男の子と遊びに行ったことぐらいあります。それも夢の国。さらに一番重要なことは、相手の男の子にはまるでその気がなかったこと。
 なので、あるなしの二者択一で言えばデートしたことあります。経験豊富な、むしろベテランです。
 たじろぐナギお嬢さまですが、重ねて質問をしてきました。
 チューは? チューはあるの?
 瞬間、西沢さんが思い浮かべたのはハヤテ君からもらったクッキー。
 昨日バイト先のケーキ屋で作った、(材料をくすね、思いのほか上手にできたのはいいけど、一人で食べるには罪悪感が大きすぎるので、罪をわかちあう共犯者を探していたら、たまたま西沢さんが通りかかったので是非食べてもらいたい)チョコクッキー。
 ハヤテ君が作った、ハヤテ君が指でこねたクッキー。つまりは、ハヤテ君の指への間接キス。チューです。チュー以外の何者でもありません。
 アインシュタインだって、養老なんたらだって、茂木なんたらだって、金田一先生だって認めるに違いありません。クオリア的にもチューです。辞書にも、チョコクッキー=チューと書いてあるに違いありません。
 

 開錠し、滑らかに音も無く足を踏み入れるマリアさん。よく見ると、ブーツを音が鳴らないように、獣の皮を底にしたブーツに履き替えていました。


 お嬢さまの挑戦を退けた西沢さんは、問いました。
 自分はどうなのさと。
 お嬢さまは退くわけにはいきません。ピンチの後にチャンスあり、チャンスの後にピンチあり。この場合どっちがチャンスなのか、いまいち分かりませんが、とにかくお嬢さまのターンです。
 西沢さんのお題は、ちょっといい恋のエピソード。
 パッと思い浮かんだのは、気だるい朝。
 眠くて眠くてたまらないところに、オレンジジュースと偽った、グレープフルーツジュースを飲まされて目を覚ましたエピソード。その時見たハヤテ君の笑顔はキュンとくるほど素敵でしたが、いまいち言語にし難いく、伝わりにくい気がします。

 
 マリアさんは繊細かつ大胆に、ドリルを使って、壁を破壊しました。それはもう、見事な手際で、生き生きとしていました。


 決定機を見つけられずに口ごもるお嬢さまに、容赦なく西沢さんはプレッシャーをかけてきます。
 そして、とうとうお嬢さまは、口を開きました。
「今朝、ハヤテにメチャクチャにされた。陵桜された。ハヤテがこなただ。私がかがみだ!」
 西沢さんの心臓が一瞬止まりました。こなたとかがみ。結びついてるってレベルじゃありません。メインカップリングもいいところです。
 

 いままで後をついてきただけだったハヤテ君が、音を立てて壁を粉砕していきました。マリアさんは自分の仕事を台無しにされて少し不機嫌になりました。

 
 そんなわけで、ハヤテ君は、バイトについてきたことをお嬢さまに指弾され、西沢さんに「ナギちゃんは一三歳なんだよ、一三歳」と責められ、マリアさんに仕事を台無しにしたことでお仕置きされ、なんだかんだで本当に疲れてしまったのでした。












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