しっぽきり

この記事は少年サンデー9号のネタバレを含みます。
 愛機・ビーストマグナムを失ってしまった轟次郎。
 毎年、変更されるレギュレーションに合わせてマイナーチェンジを重ねて戦ってきたマシーンも限界。なにより、ラジ魂四天王を潰そうとぶつけにいって自爆したのが、致命傷になったようです。
 そんなわけで駆け寄ってくるヒロイン、ツタンカーメンっぽいアイツ、3LDK轟のスリーショットで絶体絶命のまま次回に続くことになるのでした。

 新たなマシンを求めて轟次郎はタイに飛ぶ。
 だが、スキューバダイビング教室を営む伝説のマシンデザイナー・バーツは轟次郎のマシンデザイン依頼を断る。
 悠々自適に老後を楽しむバーツを、轟次郎の愛の札束と契約書が拘束する。
 次回、ラジ魂王ビーストマグナム『誕生! スーパービーストマグナムX』

 
 直後、放映されたCMと次回予告にハヤテ君と平成生まれのマリアさんはあきれ気味。
 最近の子供は、子供だましが通用しなくて大変、なのですが、ナギお嬢さまは子供オブ子供。いわば子供のプロ。あんな餌を見せられては、釣られざるを得ません。
 さっそくKAMAZONにアクセスしたナギお嬢さまに、すっかり擦れてしまっているハヤテ君は、お嬢さまにお金の使い方をよく考えるよう説得しようとしますが、貯め込んだ金を貯めたままにせず使うことで、日本経済に貢献するという大義名分を持つお嬢さまの購買意欲はビクともしません。
 そんなナギお嬢さまの目に留まったのが、グロスホッパー復刻版。
 ハヤテ君と、一応平成生まれのはずのマリアさんの言うところでは昔流行したラジコンの復刻版だとか。
 目に止まったし、一応買っておくか方式で、お嬢さまの経済への貢献ぶりは留まるとところを知りません。そんなわけで、購入。
 DVD、新作ゲームも何点か。そして、ついでにCDです。好きなアニメが続くように支援として、釘を三千枚、主人公を四二四枚、巫女を一三三枚、浪速を三九八枚を購入。続けて、メイドさんじゅうなな枚を購入しようとしましたが、マリアさんが珍しく手を滑らせて、ティーポットをVAIOの液晶に落としてしまったため、メイドさんじゅうなな枚は購入できませんでした。ドンマイ




 そんなわけで、レーザースーツの腰の動きがいかがわしいマッチョな配達員に衝撃を受けつつも、無事スーパービーストマグナムXをゲットしたナギお嬢さまは、ネット通販についての愚痴をもらす擦れた二人を余所に、さっそく箱を開けました。
 そこには、スーパービーストマグナムXの官能的なまでのフォルムが――ありません。
 いえ、あるにはあったのですが、着色されてません。というか、タイヤが着いてません。シャシーもついてません。つまりは、組み立てられていなかったのです。
 それを見た事情通・ハヤテ君は、これは組み立て式だとか言い始めました。
 ――自分で組み立てて遊ぶ。
 そんな手間があるなんて、お嬢さまは聞いていません。アニメの轟君もやっていたなんて言われても、現実とアニメをごっちゃにするなんてナンセンスにも程があります。
 なにより、一応女の子なお嬢さまには、そんな機械仕事なんて興味がもてませんでした。なので当然テンションはガタ落ち。『スーパービーストXのスーパーはともかく、Xはどこから来たんだよ』等と愚痴り始めました。
 あの監督はいつもそうで、脚本もああで、作画も崩壊どうの、そもそもあのスポンサー枠の番組の出す玩具は云々と愚痴の止まらないお嬢さま。
 このまま、なんでもかんでも否定されつづけては、果てには自分も否定されるかもしれない、ハヤテ君が危機感を抱いたそのときでした。
 救いの女神・咲夜嬢が現れました。
 いつのまにか、三千院邸に入り込み、詳しいのは、小さい弟と三十代のマニアックな父親のおかげ、変な兄は無関係、と語る咲夜さんが差し出したのは、既に完成しているグロスホッパー復刻版。
 ですが、お嬢さまは乗り気ではありません。スーパービーストマグナムXの官能的とすらいえるフォルムと比べると、八十年代のラジコンであるグロスホッパーは、無骨な印象は否めません。 
 そんなお嬢さまを見兼ねてか、ハヤテ君は
 脅威的な加速、大胆かつ繊細なターン、摩擦によって上がる焦げ臭い煙へのマリアさんの舌打ち、なによりハヤテ君の華麗な指さばき、全てがナギお嬢さまの心を打ちました。お嬢さま、グロスホッパー大絶賛です。
 憧れたなら、当然自分でもやってみたくなります。そんなお嬢さまのやる気を見て取ったハヤテ君は、コントローラーをお嬢さまに渡し、操作の説明を始めました。が、説明書はちゃんと読まないタイプのお嬢さまは、そんな説明聞いてられるか、とばかりにグロスホッパーを走らせます。
 真っ直ぐ走らせるだけでは面白くないお嬢さまは、ハヤテ君みたいにグロスホッパーのターンを試みました。
 緊張の一瞬。お嬢さまの細い指が、ぎこちなく動き、そしてグロスホッパーはターンしました。成功です。お嬢さまは、歓喜の声をあげようとしました。が、実際にあげたのは悲鳴でした、激痛による。
 なんとグロスホッパーがお嬢さまの脛に突進、衝突したのです。
 あまりの痛さに涙目のお嬢さまの胸に、虚無的な思いが到来します。
 ――なんで楽しいはずのラジコンで、こんな痛い目をしなくてはならないのか?
 それに続けたら危ない気もしてきました。今度はアキレス腱に向かってくるかもしれません。
 なので、自分にグロスホッパーを薦めた咲夜さんに押し付け眠ることにしました。
 


 その夜のことでした。
 お嬢さまは憮然としていました。
 理由はもちろんグロスホッパー。
 せっかく買ってやったというのに、あの反抗ぶり。お嬢さまにとってグロスホッパーは、救いようの無い暴君のようでした。
 ですが、愚痴るお嬢さまに声をかける影が一人。
 筋肉質の四肢、そして無骨なフォルム。グロスホッパーでした。
 生腕、生足、それもとるポーズがいちいちその筋肉をアピールしてくるとあっては、乙女なお嬢さまにとっては目に毒。頬も思わず赤らめてしまいます。
 ですが、グロスホッパーの目的は、お嬢さまに筋肉の素晴らしさを教えることではありません。
 すぐに、自分の操縦を諦めてしまったお嬢さまのことです。
 お嬢さまの操縦は下手くそ、そしてそれ以上に許しがたいのが、練習もせずに諦めたことです。
 ですが、お嬢さまは反発しました。
 グラスホッパーはついでに買っただけ、大体自分は女の子なのだから、操作が難しいグロスホッパーを練習までしたくない。
 そう、断言するお嬢さま。てっきり、反論の言葉が返ってくると思っていましたが、返ってきたのは謝罪の言葉でした。
 グロスホッパーは不器用な自分を悔やんでいました。
 グロスホッパーはおもちゃです。子供達を喜ばせる、ただそれだけの為に生まれたおもちゃです。
 ですが、無骨で不器用なグロスホッパーは走ることしかできません。それだけでは、全ての子供達と楽しく遊べないことをグロスホッパーは知っていました。
 それでも。
 それでも、グロスホッパーは自分を選んでくれたお嬢さまと、一緒に走りたかったのです。
 そう言い残して、去っていくグロスホッパーの背中は寂しげでした。
 


 不思議な夢から覚めたお嬢さんは、ベッドを駆け下りました。
 ――グロスホッパーは? グロスホッパーはどこにいった?
 部屋から出てすぐに会ったハヤテ君に、グロスホッパーを押しつけた咲夜さんの居場所を聞きました。
 しかし、時間はもう月光の差しこむ夜。咲夜さんは既に帰っていました。
 ――間に合わなかったのか。
 お嬢さまは、グロスホッパーのことなんて考えずに、自分の都合だけで行動したことを後悔しました。
 自分が勝手に買ったものを、ろくに遊びもしないうちに勝手に楽しくないものだと決めつけ、そして勝手に人に押し付けたのです。
 そこには愛はありませんでした。
 ですが、その夜、お嬢さまには一ついいことがありました。
 グロスホッパーは、まだ残っていたのです。
 咲夜さんの家には、父親の買ったグロスホッパーがたくさんありました。だから、置いて帰ってたのです。



 お嬢さまは、ゆっくりゆっくりグロスホッパーを走らせ始めました。
 タイヤがゆっくりと柔らかな絨毯を踏みしめます。
 そしてお嬢さまは、今度はハヤテ君の言葉をちゃんと聞いて、幾分ぎこちなく、それでも丁寧にハンドルを切りました。
 するとどうでしょう。
 グロスホッパーがゆっくりと右に、左に曲がっていきます。
 お嬢さまの指を、そして体中を、グロスホッパーと一緒に走る喜びが駆け巡っていきました。
 上機嫌のお嬢さまに、ハヤテ君が尋ねました。どうして、またグロスホッパーで遊ぶ気になったのかと。
 お嬢さまは答えました。
 大切なのは、愛だと。
 そんなお嬢さま操る、月光を浴びてゆっくりと走る無骨なグロスホッパーはとても幸せそうでした。



 一方、スーパービーストマグナムXは、手先が器用だからプラモとか組み立てるのも意外と得意な、戸籍上は一九八七年一二月二四日生まれのマリアさんに組み立てられていました。
 あっ、昭和生まれだ。












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