しっぽきり

一本目 受付嬢は汚物を見るがごとく、今日も微笑みます。
二本目 二号の次はV3です、次がマン、以下、X・アマゾン・ストロンガーと続いて、次のスカイ桃太郎になると、なんと空が飛べるようになります。ハイスペックです。


 不法侵入幼女に脅迫された皆本さんは、首輪リミッターを検査中でしたが、側に立つ幼女パープルのスタンガンがちらついては集中できません。
 ――脅すのも脅されるのも好きじゃない。
 決め台詞を言う皆本さんでしたが、幼女レッドは指図されること自体が不服なようで、いまにも噛みついてきそうです。
 が、パープルがいいこと言いました。皆本さんは、怒ってはいるけど同情もしているから心配ないとフォローしてくれたのです、勝手に心を読んで。怒る皆本さんですが、幼女ブルーは表面的にしか読んでないからいいじゃん、とか言い出します。当然、反論する皆本さん。こちとらノーマルだ云々! 怒りの皆本さんに、せめて紫穂と葵だけでも解除してくれ、と怒る薫さん。
 小さな頃から、一緒で、自分を肯定してくれる存在だった二人は、薫さんにとって何より大事な存在だったのです。
 薫さんが、ただの暴れん坊ではないことに戸惑う皆本さんですが、しかし、立場的に何とかできる立場ではありません。リミッターの件で関わりができたとはいえ、皆本さんはあくまでも部外者なのです。
 何であれ他人事が、自分の事となるには時間なりフラグなりが必要。なので、出会ったばかりでたいしたイベントもこなしていない皆本さんは、助けを求めるなら他の誰かにしてみたらどうかと、問います。なにも自分じゃなくとも親とかいるんじゃないか。
 が、帰ってきた答えはムダ。
 全権を握った須磨さんは、親を言いくるめてしまっているのです。
 自分達を無条件で守るのは自分達しかいない。
 そう、考えるしかなく寂しそうな顔をする薫さん。
 自分達を守るために、外にむかって牙をむく、牙をむくから余計に対立してしまう。負の連鎖に入った三人を皆本さんは、哀れみますが、しかし、可愛そうだからといって、それは自分のことになりません。自分のことになるには、相応の条件が必要なのです。
 ですから、皆本さんの本心は、
 ――僕好みの美幼女三人、ゲットだぜ!
 だったのです。パープル調べでは。自分達の魅力は重々承知しているものの、自分達の年齢が何歳かも知っているレッドも自称・清純派のブルーも戦慄します。
 必死に言い訳する皆本さんでしたが、心の表面は偽れても、表情筋までは偽れなかったのです。その上、ごまかすために、パープルの頭に拳骨までくれました。
 敵か味方かの二極化思考のレッドとブルーは怒りますが、次の瞬間皆本さんが手にしていたのは、ドライバー。
 ――べ、別にアンタたちの為に電気ショック機能を解除してやるわけじゃないんだからね。じ、自分の安全のためなんだから。
 暴行のあとに、ツンデレ。幼女への手練手管は、さすがにコメリカ仕込みの名人芸でした。



 制御プログラムを書き換えてニセ信号を送信。
 天才の皆本さんには単純な作業でしたが、幼女三人にとっては、未知の作業。そう、非常に微妙な調整が必要な作業に思わせることなど、造作も無いことでした。
 顎を上げさせて、自分好みの角度で幼女の頬をほんのり赤く染まった顔を見る。
 葵さんは、紫穂さんがあまりにもしおらしいことを疑っていましたが、薫さんは眠くなってきたのか紫穂さんは皆本さんを気に入ってるんじゃないかと戒心の抜けた言葉を発します。見てみると、たしかに紫穂さんは満更でもなさそうです。当の薫さんはどう思っているのか。紫穂さんが嫌っていないというだけで、信用できるのか? 実際に、聞くことなく終わった問いへの薫さんの答えは、安眠するというものでした。
 短時間で終わる作業をたっぷりと時間をかけて堪能した皆本さんは、チェンジを要求。
 眠った薫さんへかける毛布を皆本さんに持ってくるように、紫穂さんは、暗に薫さんは皆本さんのことを信頼している、と告げます。ふうんと一見、気の無い返事をしながら、本心は、
 ――計画通り。
 と歪んだ笑いを浮かべていました。
 が、頑張りすぎた代償か微妙に顎を突き出して眠る薫さんは、実は掌の上にいるのが自分達だとは露とも思わないのでした。
 あと、朧さんが外で自分達のことを見張ってるとも思いませんでした。寒いから、中で見てればいいのにとも思いませんでした。悪者っぽくね? とも思いませんでした。
 


 翌朝。二月二五日、木曜日の午前七時。
 三人分のリミッターを改造し、またたっぷりと堪能し、ドライバーに仕込んでいた隠しカメラで撮った写真をパソコンに保管、バックアップもしっかりCD-Rに焼いて、疲れ果てた皆本さんは、そのまま寝てしまったのです。
 夢のような一夜は終わり、残った現実は、手なずけかけていたチルドレンには逃げられ、クビになるために研究所に行く自分という、悲惨なものでした。
 が、シャワールームに待っていたのは幼女が三人。
 お約束な展開でしたが、陥落も現実的とはいえ、そこは問題児集団。
 特に、紫穂と葵の裸は自分のものと豪語して憚らない薫さんにとっては激昂するにたるハプニングでした。
 一見、皆本さんにとっては嬉しい誤算のように見えましたが、そこはそれ。現実とは厳しいものです。ここで問題なのは、チルドレンの立場。そう、三人は国家レベルでその行く末が心配される超度七。
 その三人が、帰ってこなかったとあっては、バベルにとっては一大事、下手すれば存亡の危機レベル。
 なので、特殊部隊が送り込まれました。皆本さん家に。
 あっさりと確保される皆本さん。罪状は、高超度エスパー管理法違反ならびに身成年者略取誘拐容疑。要は、変態ってことです。
 その変態さんは、当事者である三人に救いを求めます。ですが、手なずけたとばかり思っていた三人の回答は冷たいものでした。
 ――お菓子あげるから家へおいで。
 言った覚えはありません。三人が家へ押しかけてきたのです。これは本当です。たしかに、その後は、潔白と言ったら嘘になるような下心に基づいた行動はしましたが。
 終わりました。
 何もかもが終わりました。
 フラリと現れた須磨さんが保証してくれました。一生刑務所暮らしです。
 飯に出た味噌汁を口に含んで、鉄格子にかけて腐食させ脱獄することだけが皆本さんの今後の人生の目標になってしまいました。
 一方、須磨さんの目的は、道を踏み外した堕ちていくエリートではなく、チルドレン三人でした。
 化学工場で美少女が大暴れして、火災が発生したとかで、チルドレンに出動要請が出たのです。
 こうして四人は現場へ、車を戦車に潰された変態さんはとりあえず拘留所へ、そして局長と怪しい悪女オーラをこの頃はまだプンプンさせたいた朧さんは、何事かを企みつつ次号に続きます。
 


私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫 し 82-1)私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫 し 82-1)
(2007/10)
島村 英紀

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