しっぽきり

 間に合った(´;・ω・`)?
 この記事は少年サンデー7号のネタバレを含みます。
 ある晴れた朝、日比野家から一人の女の子が飛び出しました。
 女の子の名前は日比野文さん。この春から、ずっと目指していた白皇学院の一年生になったばかりの一五歳です。
 昨日と同じ光景ですが、しかし文さんの心の中には迷いが生まれていました。
 想像していた以上に、白皇の現状はひどいものでした。
 超能力と引き替えに判断力を奪われた少女。肉体改造の代償として、成長を止められてしまった少女。
 いくら悪人とはいえ、ここまでひどいことをしてしまう人間とは何なのか?
 自分の姿しら消してしまうほどの深い闇から受けた衝撃は、文さんの頭に、ドス黒い疑問をしっかりと植え付けていたのです。
 ――そんなことはない。朝日は眩しくて、空気は澄んでいて、世界はこんなにも美しいのだも!
 だから、その世界に住む人達も素敵なはずだ。なんとか気を取りなおそうと、そう呟く文さんの目に入ってきたのは死体でした。
 いえ、正確には死体に見える、酔いつぶれた女教師でした。
 頭を抑えながら起きあがる女教師。
 校内で酔いつぶれ眠る女教師。学校にあるまじき光景でしたが、そこは悪の巣窟・白皇学院。今日、最初に見た悪事がこの程度でよかった。文さんは、そう思い安心すらしていました。
 その後、酔っ払いの女教師の相手もそこそこに、(さすがの文さんも酔っ払いの相手は苦手でした)学内を進んでいく文さん。
 ですが、再び衝撃を受けます。
 昨日のエスパー少女がいたのです。監視なのか二人の少女を伴って。
 怪しまれないように、脚色を混ぜた冗談で、監視から情報を引き出そうとする文さん。
 話が、昨日、少女が文さんの名前を知っていたことに及ぶと、監視のように思われていた二人が信じられないことを口走りました。
 目の前のエスパー少女が、この学院の生徒会長だというのです。
 驚愕の表情を浮かべる文さんに、少女はなぜだか苦笑いを浮かべていました。



 偽りの楽しげな喧騒に満たされた教室の中、文さんは混乱の真っ只中にいました。
 ――あのエスパーが、悪の理想郷・白皇の生徒会長?
 白皇の生徒会長、これは文さんにとっては、巨大マフィアのドンとすら言える巨悪です。その巨悪が、判断力を欠いた少女だった。
 この事実が、文さんを戸惑わせていました。
 ――彼女は、そうまでして力が欲しかったのか?
 白皇を、ありとあらゆる悪行を、望めるものをほとんど全て支配できる立場にいながら、自身の身も省みずに超常の力である超能力を手に入れようとしていました。
 ――どう考えても採算があわない。
 実験段階のエスパー開発を、わざわざ指導者がやるということが文さんに違和感を感じさせていました。
 
「文ちゃん文ちゃん」

 語り掛けるクラスメートの少女に、文さんは、ハッとなり顔を上げました。
 目の前にいたのは、シャルナというインドから来た少女。
 留学生だけあって白皇がどういう場所かまだ知らず、悪に染められていないのか、どこか浮世離れした感じの彼女の前では、文さんも少しだけ心の重りを外すことができました。
 いつも通りの会話していると、シャルナさんが信じられないことを口走りました。
 ここの、生徒会長は有名。
 悪なんて、概念すら知らないと思っていた、シャルナさんの口から、生徒会長が有名であると飛び出したのです。
 ――シャルナちゃん? まさか?
 文さんは、自分が重要なことを、見落としていたことを思い知りました。神秘の国・インド。生徒会長の求めた超能力は、そのルーツをインドに求めていたことを。そして、シャルナさんこそが、白皇において、超能力を完成させ、日本の暗部に影響力を持とうというインドの犯罪組織が送り込んだ研究者だということを。
 白皇という地獄の中で、ただ一人、本当に一人だけ心を許せるかもしれないと思っていた友人が、実は考えようによっては最大の敵なのかもしれない。
 そのことに文さんの心は折れそうになりました。
 文さんの弱った心を知ってか知らずか、シャルナさんは、生徒会長になりたいなら、相当な努力が必要と、穏やかに笑って言うのでした。
 ――自分が生徒会長に?
 善が悪に。考えることすらありえなかった言葉でしたが、文さんは、何故かシャルナさんの言葉を否定することができませんでした。

 その後、シャルナさんがもらした情報に従い、戸惑いながらも、悪の総本山・時計塔に向かう文さん。近づけば近づくほど、心臓の鼓動が早まっていきます。敵の本拠地だからだろうと、文さんは自分を納得させました。
 野望をその身に湛えた塔は、当然のごとく、生徒会関係者以外は立ち入り禁止。
 失望しながらも、ここには幹部達しか知らない、白皇の秘密があるのだという確信を抱きました。
 振り返ると、そこにはいかにも切れ者といった感じの少女が一人。
 怪しまれないように立ち去ろうとした文さんは、信じられないことを口走っていました。 
 ――時計塔が見たい。
 そんなに厳しい規則ではないという彼女の言葉に、文さんは、心の中で苦笑しました。
 ――あなた達は無法者だものね。
 エレベーターを使い、辿り着いた時計塔から見る眺めは絶景でした。
 爽やかに吹きぬける風が、虫のように蠢く生徒達が、人から湧いた野望が、一定のリズムを刻むかのように、文さんの不安に満ちた心を、ジワジワと塗りつぶしていきます。
 文さんの理想が、いえ、理想としていた自分が、そこにはありました。
 正義の象徴として、全てを見下ろす自分。

 私はこの場所を手に入れる。
 この女はこの場所を破壊しようとするテロリスト。
 ならば、どうする? 
 どうする?
 戦えばいい。

 手近にあった壷を持ち上げました。
 しかし、文さんの両腕は意のままに動いてはくれません。
 ここでテロリストを討たなければどうなるか、文さんは知っています。しかし、鈍器で人を打てばどうなるか、文さんはそれも当然知っているのです。
 溢れるような欲望に逆らう最後の良心。葛藤に震える文さんの腕。
 しかし、文さんの葛藤とは無関係なところから、結果はテロリストに与えられました。落ちていた瓶で足を滑らせ転倒したのです。
 文さんの欲望が色を深めました。ですが、良心はまだ残っています。
 その最後に残った良心が働かせた理性で、文さんは何もかも理解しました。
 ――この時計塔にこそ、機械仕掛けの悪魔が棲んでいたんだ!
 絶景をのぞむベランダ、そこは時計塔の刻む針の音が一番近くで響く場所。そう、時計塔の刻む針の音こそが、人を欲望に狂わす元凶だったのです。
 そこまで気付き、文さんは生徒会長の顔を思い出しました。
 あの生徒会長は、超常の力を得るために判断力を代償としてエスパーになったんじゃない。悪に染まるのが耐え切れなくて、超常の力を得てしまう代償として判断力を失いたかったのだと。
 そう、あの生徒会長も自分と同じように悪の巣窟・白皇を変えようとしていたのです。彼女は手段として、あえて生徒会長となり、様々な犯罪を指示しながらも、白皇の現状を外部へリークしようとしていたのです。でなければ、さすがの文さんにも、ああまで容易に情報収集ができるわけはなかったのです。
 計画を遂行する理性を保つために、彼女は、(生徒会長なら誰でもするように)、高所恐怖症を装い、ベランダからのこの風景を見ていなかったに違いありません。全てを見下ろす風景と、何物にも遮られず、最短距離で針の音が響くベランダに出れば、欲望に耐えることなどできないのですから。
 しかし、文さんが白皇帝の現状を知り得たように、地道ながらも確実に戦果を収めつつあった彼女の戦いは、失敗に終わってしまいました。誰かが、彼女をベランダに連れだし、この風景を見せてしまったのです。それが誰かは、さすがの文さんもわかりません。ですが、生徒会長の心には、欲望が芽生えてしまったのです。
 それほどの手腕を持った生徒会長が悪行に専念したら、文さんが考えるように、生徒会長もかろうじて残った理性で、それを思い、そして震えたのでしょう。
 ――だからこそ、自分の中に棲む欲望を壊すために、藁にもすがる思いでエスパー開発を受けたんだ。彼女は自分が望むほどには壊れなかった。だから、今でも生徒会長として君臨している。けれども、彼女の望む効果が無かったわけではなかった。だから、あの時高い木の枝に登って、高所にこそ、この学院の本当の悪魔が棲んでいると伝えていた。
 木の枝の上で震える、生徒会長の姿を思い浮かべたとき、文さんは決意しました。
 ――彼女の戦いを無駄にしてはいけない。
 そのために、この壷を下ろし、一刻も早くこの場所を立ち去ろう。そして、心を支配せんとする欲望を克服する方法を探そう。
 が、その決意は叶えられませんでした。
 いつの間にか近寄っていた彼女は、文さんの手から壷を取り上げました。
 聖母のような微笑を浮かべる純白のエプロンと漆黒のドレスを纏った彼女。
 文さんには、彼女が綺麗な天使の顔をした魔女のように見えました。
 混乱する文さんに、魔女が言葉をかけました。
 全てを溶かすような穏やかな笑顔、甘い声。

「あなたみたいな人が」

 ――私が?

「この学校を」

 ――この悪の巣窟を?

「代表する人になるかもしれませんから」

 ――ああ、そうか。
 
 文さんは、全てを受け入れ、ケタケタと笑い始めました。
 そして、何年か後、文さんは――

先週からの日比野文シリーズ、むっちゃおもしろいですー

悪の巣窟、白皇学院

そして、そのドンは・・・(笑)

追伸:
FC2へは、当方からTBpingが通らないのでコメント残していきますね

2008.01.17 09:05 URL | うっちー #SFo5/nok [ 編集 ]

>日比野文シリーズ

 なんだか賛否両論分かれてるキャラクターみたいですが、来週も文さんメインだったら、違う意味で泣きたくなりそうです。
 
>白皇のドン

 誰なんでしょう? (`・ω・´)
 真相は常に暗黒に包まれています。主に、メイド服みたいな色合いの。

>TB不可能

 なのですか(´・ω・`)
 ブログ違うと色々大変ですねー。

 コメントありがとうございました。

2008.01.17 14:30 URL | 美尾 #9ayR5QDw [ 編集 ]













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