しっぽきり

(この記事は少年サンデー4・5号のネタバレを含みます)
 コーヒーのおいしいお店、喫茶どんぐり。
 ブレンド三杯、エスプレッソ二杯、サンドイッチ八皿、アップルパイ十皿、ナポリタン五皿、鉄火巻き一五巻、お好み焼き十(全部、豚タマ)納豆ご飯一二杯、煮卵二一個の売上をあげて、本日の営業は終了し、今は、この程度の店で働くのはお屋敷の仕事より楽、と言い放つハヤテ君、徐々に手馴れてきた西沢さんの掃除タイムです。
 しかし、そこに、マスター的にはハヤテ君の抱き合わせ商品として雇うことになったナギお嬢さまはいません。昨日の高尾山登頂という偉業の代償に筋肉痛で爆睡中だったのです。ハヤテ君は、ご主人様の側にいるのが従者の勤めと思っていたのですが、マリアさんの「マスターに悪いから」という助言に押し出されて、アルバイトに来たのでした。
 超名門校の白皇学院にも、高尾山ハイキングなんていう普通(なんと素敵な響きでしょう!)の行事があることに驚いたり、ナギお嬢さまが高尾山を登れば筋肉痛になることを察することが出来たりな西沢さんはあることに気付きます。

 帰り道はハヤテ君と二人きり!

 これはチャンスです。弾む会話、徐々に縮まる二人の距離、触れ合う手、赤面、アタフタとした言い訳のあと途切れる会話、再び触れる手、今度はしっかりと握って、そんな二人を見守る不自然に振動するワゴンR。
 まさに青春です。
 が、ハヤテ君にそんな西沢さんの妄想は伝わりません。あっさりと、一人で帰ろうとしやがります。
 これは大変。千載一遇のチャンスが逃げてしまいます。ですので、西沢さんは慌てると口調が変になる癖を見せつつ、ハヤテ君の執事服をガシリと掴みます。
 そして説いたのは、現在日本がいかに危険であるかということ。
 
「ハヤテ君。
 今、ハヤテ君に問うよ。
 真の危険とはなんなのかな?
 親愛なるハヤテ君。ハヤテ君はまだ気付かないのかな?
 ただ黙って忍びより誰かが与える危険を。
 この街を見て!
 古い街並みが粉々に蹂躙され、店長の趣味と化した喫茶店に居座られた…この街を見て!

 体力の悪化。
 帰宅時間の悪化。
 バイト代の支払いの滞り。
 バイトが我々にもたらしたのが安全とよべるのかな!?
 
 否!!

 ハヤテ君はもう気付くべきじゃないかな?
 嗜好しか考えない変態や、己の欲望を優先することしか出来ない犯罪者たちから、安全を確保することなど容易ではないということを!
 与えられた安全など、かれらの思惑で簡単に覆る。
 私達の命は、豚を肥やし警察に仕事を与えるためにあるのでは…
 決して、全く、万が一にも、ない!!
 ハヤテ君は…デスニーズに入った強盗を知っているかな?
 彼は私達の安全を損なわせるため、送り込まれた恐ろしい刺客よ。
 罪も無い多くの人々が不安にさらされた。以前の生活に戻れない者も最低一人、牢屋に叩きこまれた犯人…
 ハヤテ君。聡明なるハヤテ君。
 私達は二人で帰ろう。
 ただ一人では何もできない弱い人間も、二人で行動すれば、『ツー・マン・セル』と呼ばれるタイプに変化する。
 彼らは複数で、隙も無い。
 そして幸福を求め、どこへでも飛んでいける。
 もう私達はやめなければいけないのよ。
 すぐに! 今、すぐに!
 弱々しい女の子を一人で帰すことを!!
 二人だ!!
 『ツー・マン・セル』となり安全を求め、帰るべき時こそ、今!!
 目指すべき場所は駅!!!
 返事をして…
 帰路を征圧する私達の絶対的意志を示せ!
 返事を!!
 親愛なる、
 親愛なる、
 親愛なる、
 
 ハヤテ君!!!

 帰宅の時は来た!!」

 熱弁でした。高IQのヒトラーの尻尾にも、少佐にも、あんな縛り方で蜂様を縛ってネットに後悔した変態にも劣らない熱弁でした。
 当然、ハヤテ君も押し切られ、二人で帰ることになりました。


 
 帰路、お互いの近況を話しあう二人。
 十cmずつ、距離を縮めようと画策する西沢さんのチョイスした話題は、自分達が高校二年生になったこと。
 ヒナギクさんと同じクラスになったハヤテ君は、なんだかちょっと困惑しているみたいです。
 聞いてみると、迷惑をかけっぱなしのヒナギクさんにこれ以上嫌われないように頑張らないと云々。
 あれあれあれ? と驚く西沢さん。
 ヒナギクさんから告白する気はないとは聞いていますが、ここまで意思が通じてないと思っていなかった西沢さんは思わず助け舟。
 ヒナギクさんのツンデレ属性を示唆してみますが、心の一番深いところに「現実とは厳しいものと知ってください」が教義のシャクティ教の象徴である、ヒナゲシのタトゥーを掘り込んでいるハヤテ君にはそんな物は、ありえない幻想としか思えないのでした。
 ハヤテ君とヒナギクさんのすれ違いぶりを好機ではなく、驚きとして捕らえる西沢さんは、本当にいい子なのでした。
 話題は変わって、西沢さんの通うごくごく普通の高校、潮見高校の話に。
 そこで、西沢さんは学校にノートを忘れていたことに気付きます。
 ――明日、提出しなきゃいけないのに。
 自分のうっかり具合に、軽く凹む西沢さんに、ハヤテ君が寄っていこうと提案しました。
 夜の学校で二人きり。
 青春ってレベルじゃありません。
 なので、当然返事はYES。
 抱きつきまで想定して、西沢さんのテンションはマックスに達しました。



 麻酔銃で警備を眠らせ、カメラの死角を突き、侵入した二人。
 が、肝心の学校で西沢さんのテンションは多少落ち気味でした。
 普段通いなれているだけに、違う顔を見せる校舎が西沢さんの不安をかきたてたのかもしれません。
 お化けを知る者と、知らない者とで、見える景色は大分違うようでしたが、たぶん大丈夫レベルで堂々としているハヤテ君の危険感覚が相当麻痺しているだけなのかもしれません。
 そのころ、和服の霊能力者は悪質な霊を察知し、目の前にいる幽霊神父はフィギュアをチェックしていました。

 

 ノートを発見した西沢さんを見ながら、ハヤテ君は物思いにふけっていました。
 同じ校舎だけど、自分には縁がなかった二年生用の教室。
 行けたたはずだけれども、もう道を違えてしまった今は、行くことができない、今日だけ、ちょっとだけ交差した近くて遠い世界。
 普通に学校に通って、普通に彼女と一緒にいて、そして、普通に告白されていたら――
 目の前で三日月の光を受けて微笑む西沢さんの笑顔に、自分が今立っている場所、でも、もうありえない場所について考えることをやめるのでした。
 

 抱きつきの機会を失ったという意味で、お化けがでなかったことを残念がる西沢さん。
 が、そんな西沢さんに苦笑していたハヤテ君の表情がちょっと変ります。
 警備が緩いとはいえ、見回りの先生までいないとは、教室の鍵も開いてたし。
 先ほど、あんな熱弁を奮ったとはいえ、思考回路が普通な西沢さん。
 冗談で、強盗でも入ったんじゃないのとか言ってます。
 が、目の前の現実はそれが冗談じゃないことを証明しかけていました。
 ロープでグルグル巻きにされ、猿轡にあえぐバーコーダー。
 いまいち、どころか色気は皆無ですが、緊急事態。
 猿轡を外すハヤテ君、ロープを切るものを探しに行く西沢さん。
 が、バーコーダーは西沢さんを制止します。
 西沢さんが向かった先にいたのは、ワニ×人、インブリード配合を駆使して生まれた最強の獣王強盗。斧とか持ってます。
 恐怖に引きつる西沢さんの顔に、斧が振り下ろされそうになった瞬間、ハヤテ君が駆け出し、西沢さんから預かったノートを一閃。
 強盗を叩き伏せたハヤテ君は、西沢さんを、とても大事な人と呼び、呼ばれた当人は、頬を染め、ノートはボロボロになり、バーコーダーはようやく夜の侵入者二人を注意し、和服は微妙に役立たずな一日を終えるのでした。
 
 












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