しっぽきり

マッターホルン新聞(2004年12月31日)
 
年末の珍事? 雪山一騒動

 三十日昼頃、マッターホルン中腹で、雪崩が発生したものの、すぐ元に戻るという珍事が発生した。
 目撃者の証言によればドドドという轟音と共に雪崩が発生。が、雪は山の中腹で停止し、数分もしないうちに元に戻ったという。
 付近で保護された和服の日本人女性(13)は、恐怖のためか「迷子になったわけではないのですが、雪が白いので帰り道がわからないのでやりました」と混乱した口調で語り、最後に「でも、道はわかりませんでした」と付け加えたとのこと。
 識者の間では、異常気象説、五年遅れの恐怖の魔王説、山の悪ふざけ説と意見がわかれている。






 三千院家では、紅茶の消費量がとても多く、眠るのに睡眠導入剤を使用するのも厳禁。 
 そんなヤン提督オタのナギお嬢さまのために、ハヤテ君はマリアさんに紅茶を買いに行くよう命じられました。
 そこで、本邸の執事に取り押さえられてしまうぐらいに貧相なハヤテ君を思って、マリアさんからカシミアのコートお値段百五十万円ぐらいが下賜されます。
 マリアさんがくれたコートです。これさえ着ていけば一月の寒風も防げる上に、三千院家の執事としても胸が張れるというものです。
 そう、マリアさんがくれたコートです。汚したり、濡らしたり、破ったり、ズタボロにしてしまえば――何も起こらないといいですね。



 なんでもお嬢さまが迷子になること確定だそうで、見知らぬお屋敷では大騒ぎ。
 そんな殺気立つ黒服連中とはいまのところ別世界にいるハヤテ君は、高いコートに多少緊張しつつもまぁ汚すようなイベントなんてそうそうないし大丈夫だろうと、お昼に勢い良くすすりこんだ立ち食い蕎麦屋のカレーうどんが意外においしかったこともあいまって、のんびりムード。
 が、そんなハヤテ君にやっぱり不幸が襲い掛かります。
 まずは落下してくるペンキ、続いて投げつけられたも同然のそばつゆ、飛び掛ってくるスミを吐くタコ。
 持ち前の身体能力で何とか危機を回避したハヤテ君は、とりあえず人気のない負け犬公園に緊急退避。
 お嬢さまに拾われたのもこの公園と感慨に浸るハヤテ君。
 そんなハヤテ君が自動販売機の前で見つけたのは、どことなく浮世をブッちぎった様子の和服の少女。自動販売機の前に立っているんだから、当然ながら少女の目的はジュースを買うこと。
 が、少女はジュースを買えませんでした。
 お札を入れなければならないところを、お札を入れしまったのです。
 正確にいえば偉人さんの顔が描かれたお札じゃなく、なんだか呪文が書いてあるお札を入れてしまったのです。
 随分と高そうなお札でしたが、物事の価値を推し量るということができないマニュアル主義の象徴たる自動販売機はそれを受け付けず、吐き戻すばかり。

 ――自販機の前の幼女は幸運をもたらしてくれる。

 経験則からそう判断したハヤテ君は、自販機が壊れていると嘆く和服に突っ込みます。
 が、和服はさらに斜め上。知らない人と会話してはいけないのにと、自分から会話を成立させ、聞いてもいないのに友人のろ気を始める始末。
 ここで、生きていく知恵を身につけているハヤテ君は、自分の経験則に修正を加えます。

 ――自販機の前の金髪ツインテール幼女は幸運をもたらしてくれるけど、和服黒髪幼女はちょっと危険。

 そうなればこれ以上の会話続行は危険と判断したハヤテ君は、この場を去ろうとします。
 最近、大規模な失敗をやらかしたことがあるのか、迷子になったことに萎れる少女。根がいいヤツなため、良心がとがめるハヤテ君は立ち止まります。
 関わっちゃダメだ、かといって放っておくわけにも、関わっちゃダメだ、かといって放っておくわけにも――
 ハヤテ君の悶々とした悩みを解決したのは、不安そうな少女の表情と高そうなストール。
 あんな小さな少女を冬の寒空に一人きりにするわけにはいかないし、上手く立ちまわれば大金をせしめることも可能かもしれません。
 いろんな意味でいいヤツのハヤテ君は、誘拐されそうで不安だからと少女に助け舟を出し、好感触の笑顔を引き出します。
 が、少女の質問はやっぱり斜め上。
 自分はどこに行くのか? そんなことは当然神どころか人生の道にも迷いっぱなしのハヤテ君には知りえません。
 悩んだ末に、迷ってるならKITAKATAな方向で解決してはどうかなとハヤテ君が提案しようとしたその時でした。日本刀を携えた黒服達が現れたのは。
 そして生まれた不幸な誤解。
 過去に誘拐未遂を犯した少年が、とても怪しく見えたので問答無用に襲い掛かる黒服達。
 咄嗟に少女を抱きかかえ、飛び跳ね逃げ回るハヤテ君。ついでに、決め台詞と笑顔を安売りして少女の心をゲットです。
 が、ゲットしたのは自分に幸運を、周囲に不幸をもたらす少女の心。
 飛び跳ねた足元に広がるのは池。飛距離も足りそうにもなく、このままでは二人とも池にドボン。マリアさんからもらったコートも汚れてしまう。
 錬カシミア術で、一旦コートの形を崩して脱ぎ、直後にまたコートの形に錬成するという離れ業をやってのけ、そのコートを枝に結び付け、距離不足を補おうとするハヤテ君。
 が、無駄でした。
 二人分八十七kgの負荷にカシミアのコートはあっさりと引き裂けハヤテ君だけ池にドボン。抜け目なく抱っこの形に移行していた少女は無傷。
 陸に下ろした少女の無事を尋ねるハヤテ君の声は、寒さのせいか恐怖のせいか、とても震えていたのでした。
 
 今後何度となく演じることになるラスト一コマアリバイ出演技術を披露したナギお嬢さまの不満とともに来週に続きます。












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ハヤテのごとく!16話【不用意な優しさが不幸を呼ぶ】畑健二郎
 話は微笑みながら執事こと下っぱをお使いにだす三千院の実質的支配者さんからはじまる。いっぽう名目上の支配者さんはサービスになったら読者的にマズいし、ならなかったら作者的にマズい格好をして、扉絵に転がっていらっしゃる。参謀が有能なほど、優れた司令官の仕事は

2007.10.23 18:29 | 360度の方針転換