しっぽきり

(この記事は少年サンデー43号のネタバレを含みます)
 ナギお嬢さまが迷子でこら大変――ですが、場面はチョイ戻り。
 娘の誕生日に来てくれたナギお嬢さまに感謝の印としてなぜか荒巻ジャケイクラ入りを渡そうとする咲夜パパ。が、お嬢さまは生臭いからと拒否。
 が、どこから笑いの要素を引き出したのか「サケだけに遠慮しマスだって。マス――アイマス、さすがナギお嬢さんだ。笑いもオタも引きこもりも一流だね」と大喜び。これで興が乗ったのか得意の裸漫談を披露しようとしたサクパパでしたが、そんな宴会芸にもならないような芸を咲夜さんが許すわけもありません。荒巻ジャケで殴られてしまいました。
 解凍もロクにされていない荒巻ジャケの一撃、サクパパは、荒巻ジャケから飛び出したイクラが空中に赤い弧を描く中を崩れ落ちていきました。
 顎に潰れたイクラを張りつけて抗議するサクパパでしたが、子供達の言葉は厳しいものでした。
 愛沢家の恥さらしだとか、帝じいさんに浮気がばれたときに裸漫談で誤魔化そうとして逆に火に油を注いだり、のんびりとして怒の感情が欠片もなさそうなゆっきゅんに舌打ちされたり、あまりのあれな感じに銀華さんが仮面をつけてるのにシワ顔になったりしたことを持ち出されたり、散々です。
 口ではそんな風に言いながらも、つっこまれたりどつかれたりするサクパパも、つっこんだりどついたりする子供達もなんだか楽しそう。
 その様子を見ていたナギお嬢さまは、物憂げな表情を見せた後、踵を返しその場を去るのでした。

 寝ると言い残して姿を消したナギお嬢さまを探すハヤテ君と咲夜さん。
 咲夜さんは付き合いが長いだけあって、寂しがりやのナギお嬢さまが姿を消した理由を漠然と察しているようです。
 怪訝な表情を見せるハヤテ君に、咲夜さんが唐突に尋ねてきたのはハヤテ君の両親の話。
 もし、ハヤテ君を捨てた両親が再び家族に戻りたいといってきたらどうするか?
 ハヤテ君の答えは、冷めていました。
 それはありえないこと。二度目はない。それよりも年の離れた兄を探したい。
 ハヤテ君から飛び出した兄という単語に、突然咲夜さんの頬が赤らみます。
 普段は明朗な咲夜さんが躊躇いがちに口にしたのは、兄という存在への憧れ。
 兄弟達からも、同世代のなかでもお姉ちゃんと頼られるしっかり者の咲夜さんにだって、甘えたいときはあるのです。親父もあんな感じですし。
 とはいっても、アフロは含まれません。しまってくる自動ドアを足で止めようとして止めきれず打ってしまうような輩は含まれません。ケースに金塊詰め込んで送ってくるロリコンもいりません。
 そして、ハヤテ君をどう呼ぶかひそかに悩んでいると本人の前で堂々と口にします。
 が、乙女心に無関心な天然ジゴロハヤテ君は軽く流します。
 それはそれとして、憧れと悩みがハヤテ君の発した兄という単語で化学変化を起こしたらしく、咲夜さんは一つの提案をします。
 「ハヤテお兄ちゃん」、そう呼ばせてくれないかと。
 が、メイン三人は買ったけど、妹のは買わずに「まぁ、ブーム末期に全バージョン収録のアルバムとか出すんだろ? どうせ」と鷹揚に構えているハヤテ君に妹趣味はないのでした。
 

 






 愛沢咲夜にとって四人目の――ひょっとしたら最初の――妹に等しい存在、三千院ナギが佇んでいたのは三日月の綺麗に見える夜だった。
 愛沢邸で一番綺麗に月が見える場所。
 ハヤテの背中をポンと押してやる。
 少しだけ戸惑った表情のハヤテに、微笑み頷く。
 ようやく、ナギの元へと歩き始めたハヤテを見て、咲夜は木の影に隠れた。
 
「お嬢さま!!」

 自分を呼ぶ執事の存在に気づいたナギがゆっくりと振り向く。
 
「捜しましたよ。こんな所で一人、何をなさっているんですか?」

 ん、いや、たいした事ではないのだけどと陰のある微笑を浮かべる。

「今年は下田で、いつも以上に思い出したからかもしれん……咲夜の家族を見ていたら少し……」

 風に二つに分けられた金色の髪がかすかに揺れる。

「家族というのは……悪くはないなあって……」

「うちの親みたいに、どうしようもなく悪いのもいますよ」
 
 少しおどけた口調の執事の言葉に、ナギの表情も思わず和む。

「家族みたいにずっと一緒というのならマリアさんや……僕だって……」

 短い沈黙の後、少し前のことだけどと、ナギがハヤテに背を向け語り始めた。
 
「どんな時でも側にいて、オレがお前を守るといった男は、あっさりいなくなってしまったよ。母も、そしてマリアだって」

 風に乗って流れてくる二人の話し声を耳に、咲夜は木に体を預けていた。
 咲夜の記憶の中に、ナギの父親はいない。それはきっとナギも同じことだろう。
 自分には、父もいる、母もいる、弟も妹も、兄も――認めたくは無いし、認めて良いかもわからないけど、まあいる。
 けれども、ナギにはいない。
 ただ一人、祖父がいるが、その祖父とも疎遠であり、仲も悪い。
 父や母、兄弟達がいない、あるいは失う自分というものは想像はできる。ただし、それは漠然と寂しいのだろうという段階の想像である。実感はできないし、できるだけしたくないものだと思う。
 それをナギは経験している。 
 しかも二度、いや始めから欠けてしまっていた父親も含めれば三度。
 だから、ナギはどこかで家族というものを諦めてしまっているのだろう。
 そして、いま側に居てくれる女性を自分から離れないようにしっかりと握り締めていることもできないのだろう。
 なぜなら――

「マリアはたしかに今は側にいてくれて家族みたいなものだけど、いつか誰かを好きになって、きっと私から離れていってしまうだろう。
 そしてたぶんそれは、そう遠い日の事じゃないと思うんだ……」

 それを認めてしまう優しさがあるから。
 ナギのその言葉の後、長い沈黙が続いた。
 時折、聞こえるのは流れてくるパーティの歓声だけ。
 何度も目を閉じ、そして開き、逡巡した後、執事は意を決したように大きな声で、彼の主人を呼び、そして――

「あ……指が……」

 指を長く見せるマジックをやった。
 一瞬、場の時間が凍り付き、そしてナギの拳と共に動き出した。
 咲夜も、吹き出した。
 なんともバカバカしい。
 そのバカバカしさにつられて、寂しがるのもバカバカしくなってしまったのか呆れたようにハヤテを叱りつけた後、

「しょうがないから……しばらく私の側に置いてやる」

 照れくささを隠すように不機嫌な表情で、

「だから私から、離れるんじゃないぞ」

 一つ、しょうがないという風にため息をつき、木から体を起こした。
 ――まっ、いいコンビかもしれんな。
 そう納得し、咲夜は二人のところへ駆けていった。  
 












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