しっぽきり

 伊澄さんの誕生日なのは薄々気づいてたけど、SSも考察も弾がないので、無関係更新です(`・ω・´)
 師走も末、大晦日は十二月三十一日。

 当初の予定のスイス行きを借金野郎をピックアップしたことでぶっちぎったお嬢さまは、実家にも顔を見せずにダラダラと自宅で正月を迎えようと決めていました。
 とある漫画を読み終わるまでは。
 なんとかィオティミスさんが恋人と見た初日の出が、絶賛勘違い中のお嬢さまには眩しすぎたのです。

 


 ひび割れた壁、足つき十四型テレビ、剥き出しの配線の裸電球、一人だけインスタントそばという三千院家においては希少価値という点で得がたい待遇をされている借金執事ことハヤテ君。
 つい一週間前までは、新年を無事迎えられるか、大晦日まで生きていられるかが問題だった借金執事も、お嬢さまには感謝の言葉もありません。
 が、寝転んだ背後にはどこから湧き出したのか、そのお嬢さま。
 気づかせずに借金執事の背後を取れるあたり、高度な侵入スキルの持ち主のお嬢さま、何をご所望かと思えば「朝日」を見たいとのこと。
 重めのイベントをこなしていないので、お嬢さまの情操教育には大した熱意を抱いていない執事は、この寒い中、外になんぞ出たくないと咄嗟に東スポの名前を出すことで、話を逸らそうとしますが、漫画に影響を受けて気力十分なお嬢さまは止まりません。
 気力十分お嬢さまは、それそれそれはものすごいものです。
 ちょっとスイッチが入っただけで、朝日を見に行けます。戻らないぐらいにスイッチが入れば、食堂でおばちゃんに注文するも「アンタ小さいわね。もっと食べなきゃ駄目よ!」なぞとどやされてメニューを勝手に変更され、屈辱に塗れながら砂を噛むような思いで箸をすすめることすら可能なのです 
 お嬢さまの提案した移動手段は自転車。
 このクソ寒い中で練馬から九十九里浜まで一時間をとか何を言ってるんだと、執事は翻意を促すついでに美しいメイドさまを誘いだす罠を張ろうとしても、お嬢さまは引っかかりません。二人きりがいいのです、お嬢さまは。
 



 そんなわけでクリスマス以来の、一週間ぶりの外出と相成った二人。
 自分の置かれていた状況の変化を驚く執事。寒い中とはいえそこは天然ジゴロ。そのおかげで出会えたとかそういう喜ばれる台詞を付け加えるのも忘れません。
 それはそれとしてミニスカで来てしまったことを後悔。
 寒いのです、二人乗りで切り裂く冬の風は。
 そこでお嬢さまが百貨店・高嶋屋からお買い上げになったのは屋形車。三千万円ぐらい。
 呆然とする執事はわずかに残った思考力で、三千万円という値段が相場なのかどうか軽く悩むのでした。


 

 一方、時間経過を考えるに年はもう明けたであろうに、なぜか掃除途中で見つけた漫画雑誌に思わず読み入っているというスタイルのマリアさんと、お嬢さまの失踪にやっぱりベッドの下に忍び込んでいればこんなことにはならなかったと自らの怠慢を恥じるクラウス氏。
 大慌てのクラウスさんとは対照的に、冷静にハヤテの不在を確かめるマリアさん。
 そう、メイドさんは森羅万象すべてを見通しているのでした。



 一方そのころ首都高では、法定速度を守り、ドリフトの連発で連発で屋形車を軋ませながらも牽引する自転車が一台。
 最高速、コーナーへの侵入速度、加速力、インを突く勇気、大胆な幅寄せ、後部の屋形車を利用した巧妙なブロッキング、タイトルのかかった場面でぶつけに行く形振りのかまわなさ――どれをとっても屋形車を駆りゼロの領域を行くハヤテ君にかなう走り屋はいません。
 最速の称号を欲しいままにするハヤテ君は、また一台、無謀にもパッシングを仕掛けてきた車をちぎるのでした。法定速度内で。



 

 そんなこんなで、無数の走り屋達を屠った最強のパッケージング、ヤカタグルマ・ナギーは、無事に九十九里浜に到着。
 激戦の代償か、単に屋形車が重かったのか大バテのハヤテ君は、とりあえずコーヒーを買いに行きました。「さらわれ◎」のお嬢さまを残して、軽率なことです。ですが安心です。なぜなら、あの方は全てをお見通しだからです。
 軽率なので財布を忘れてきたハヤテ君。あるいは、お嬢さまの財布を当てこんでいたのかもしれません。だとしたら周到と言うべきでしょうか、この状況で引き返すわけにもいかないのでどのみち軽率なものです。
 そんな軽率なハヤテ君に差し出された財布。
 そう、ハヤテ君が軽率で法定速度ギリギリの範囲内で走り屋達をねじ伏せてきたことも、お嬢さまをよりにもよって一人きりしたことも、財布を忘れたことも
我らのマリアさんはお見通しだったのです。
 マリアさんは事後のことを指示すると、素敵な笑顔でその年始の挨拶を交わして華麗に去っていくのでした。


 刺すような空気の中、黒々としていた空がうっすらと紫色に染められていきます。
 大切な人達との新しい一年のはじまりにハヤテ君は、身も心も引き締まる思いでした。
 が、お嬢さまはグッスリでした。
 初日の出も見ず、帰りの電車の中でも。
 十三だったので、徹夜は辛かったのです。
 無駄足でしたが、そこらへんは主従関係の厳しさということで納得せざるをえないハヤテ君なのでした。
 












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2007.09.25 09:31 | 360度の方針転換