しっぽきり

 百三十話の夜、ナギとマリアさんのお話ということで。
 短めです。
 三千院ナギは一つ長く欠伸を漏らすと、読みかけの漫画をパタンと閉じた。

「マリア、電気を消してくれ」

「もう、寝るんですか」

「ああ、明日こそちゃんと起してくれよ」

 いつもちゃんと起してるんですけどね。苦笑混じりのマリアの呟きは聞こえない。
 ――明日だ、明日こそちゃんと真面目に過ごして、ハヤテをギャフンと言わせてやる。
 いささか不純で単純な動機ではあるが、少なくとも少女はこのとき真剣であった。まさか自分が、翌日に目覚めの一杯と三時のティータイムを兼任する紅茶を啜っているなどとは予知できなかったのだから。

「そういえば、今日はどうでした? 久しぶりに外出してみて」

 電気を消し、ベッドに入ったマリアが聞いてくる。
 今日のことは、さすがに恥ずかしく話していない。聞かれたくなくて、夕飯も早々に切り上げたぐらいだ。

「……別にぃ。何のイベントも起こらなかったぞ。怪獣の一つでも出てくればハヤテの格好いいところも見れたのに」

「もー、あなたはそんなことばっかり。さすがのハヤテ君も怪獣相手じゃやられちゃいますよ?」

「そうかな?」
 
「そうですよ。それじゃあ、おやすみなさい。――隊長」

「――ハヤテのやつっ!」

 喋ったのか!
 月明かりの中で、口を尖らせる。人見知りの激しいナギが子供達と元気に遊んでいたということは、マリアや、ハヤテにとっては好ましいことであるのだが、本人にとっては常とは違う顔を見られたことは恥ずかしいことであるらしい。
 そんなナギの様子がおかしいのか、クスクスと笑うマリアに、「なんだよ」と無意味に強がってみるのが、少女にできる精一杯であった。
 
「お仕置きするなら、手伝いますよ?」

「……マリアは、どっちの味方なんだ?」

「手伝いはいらないんですか?」

「うむ。頼む」

「はい」

 二人は、お互いに月の光に薄っすらと照らされた未来の共犯者を見つめて、イタズラっぽく笑った。
 少しだけ話をした後、ナギは外出の疲れもあって早々に眠ってしまった。
 マリアは、寝息が一つ生まれるのを見守ると、隣で眠る少女の寝顔に軽くキスをし、自分も眠りについた。






















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