しっぽきり

一本目 むしろダサいからこそどーだこーだ
二本目 ちょっと前までは、船暮らしだったカガリさんというお話

 

 容赦なく殺意を向けてくるナイさん。彼女を拘束しているとはいえ、チルドレンも安全とは言えません。

「皆本!! 早く!」
「皆本さん!?」

 促されるまでもなく、皆本さんの中のフェザーさんも、限界が近づいていることを知っていました。
 ユーリさんが来てくれるまで、引き延ばしたい。けれど、そのためにチルドレンを失うわけにはいかない。
 それならば。
 ブースト解禁のために、携帯に指を這わせました。
 が、そのときでした。

「っつ……!!」

 フェザーさんの、皆本さんの体の指が止まりました。
 その指を、フェザーさんの精神を絡めとったのは封じ込めたはずの皆本さんでした。

『催眠が浅かったようだな……!!』

 これぐらいの催眠強度で十分だろうと思っていたフェザーさんですが、そこはヒロイン体質の皆本さん。そういった耐性は十分についているのです。
 そんなわけで、

「戻った……取り戻したぞ!!」

 取り返されました。
 そんなわけで、心身一致した皆本さん。フェザーさんの敵対行動を歯噛みしているだけでしたが、取り戻したからにはそうはいきません。
 そんな皆本さんの最初の行動は、ブースト解禁のために携帯に指を這わせることでした。
 
「!?」

 が、画面なのか、何なのか。漠然とした違和感を覚える皆本さん。ですが、チルドレン達は目一杯。そんなことを気にしている余裕はありません。

「あ……ああ、わかってる!! 行くぞ!!
 ザ・チルドレン完全解禁!!」

 













 念波の流れの拮抗状態が崩れた瞬間生まれたのは光でした。
 その中心にいる薫さんは先ほどまでの浮き足立った様子はなく、真っ直ぐな意志をもってナイさんを見据えています。

「フォース・オブ・アブソリューション!!」

 掛け声とともに、その光は放たれナイさんを包みました。

「が……あ……あああっ!!」

 苦悶の表情で呻くナイさん。
 そして、

「やめ……てええー!!」

 ユーリさんが光の中に割って入りました。
 予定にはなかったユーリさんの乱入に驚くナイさん。

「ダメです、離れて!! お嬢さま!!」
 
 ブーストの衝撃で、ユーリさんのメットのバイザーが割れたことに悲鳴をあげるナイさん。
 しかし、ユーリさんの心は不思議と穏やかなものでした。
 純白の翼を広げた三人から放たれる、黒い手を跳ね除ける解放の光。
 
 ――なんて……きれいなのかしら……

 初めてその光が自分が施した洗脳を解除するのを見た瞬間、ユーリさんの胸には感じたことのない感情が生まれました。

 ――そうか……私は……この光に惹かれて来たんだわ。

 心を満たしていく光。
 
『私は今、生きてる。そしてそれが当たり前だと思ってる。これ以上何があるの?』

 ――このまま灼かれてしまえば、私も生まれ変われる? それとも 

 けれど、その光に身を委ねるわけにはいきませんでした。
 ユーリさんの意識を引き戻したのは、微かな電子音でした。
 ナイさんの頭に埋め込まれた爆弾が作動し始めた電子音。

「あ……あああああっ!!!」

 このまま洗脳が解除されてしまえば、爆弾は、ナイさんは。
 たとえ、道具だったとしても。
 たとえ、彼女がそれ以外を望んでいなかったとしても。

「今負けることは私が許しません!! これは命令よ!!」

 ナイさんの肩をしっかりと抱き、ユーリさんは叫んでいました。
 その時でした。
 二人を包んでいた光が消失したのです。戸惑い、チルドレンへと振り向くユーリさん。そこには、同じように混乱した葵さん、紫穂さんに、気を失った薫さん。そして、データを収集し終え、薫さんから離れていくレアメタル。
 今が好機でした。

「目的は達したわ!! 離脱するわよ、ナイ!!」

 ナイさんは、朧な口調ながらも「はい」と応えてくれました。
 安堵しつつ、ユーリさんはその場を離脱するのでした。







 曖昧な意識の中、頬に鮮明な感覚が伝わってくる。
 一滴の涙。
 不思議に思い、意識を少し、広げてみる。
 側にいるのは、お嬢様。
 お嬢様が、泣いている。
 どうしたんだろう……?
 よくわからない。なんで泣いてるんだろう?
 不思議と悲しいわけじゃない。あったかくて、やわらかい。
 なんだろう、この気持ち?
 お嬢様も同じ気持ちなんじゃないか?
 確かめたくて、お嬢様の胸に顔を預けてみる。
 けれど、もちろんサイコメトラーじゃない私にはそんなことわかるわけがなかった。
 でも、気持ちは変わらず、もっと強くなった。
 
 



「予知時刻三秒前!! 二!! 一!!」

 カウントが〇になったとき、パイプに入れた爆弾が爆発しました。もちろん、一方通行に力を流されて、安全な形で。
 爆風が収まるのを確認すると、フェザーさんは心中で深くため息をつきました。
 全て丸く収まってくれた。
 爆弾は無事、処理できました。ギリギリ、本当にギリギリのところで意識を取り戻せたおかげで、ナイさんが最悪の結果を招くことは防げました。あのまま続いていたら、通常よりも強い力で放たれたブーストは確実にナイさんの洗脳を解除していたでしょう。
 そして、何より、彼女が動いてくれました。
 薫さんには、少し気の毒なことをした気もしますが、今、皆本さんの体を使ってお姫様抱っこをしてるんだから、いいだろうと思いました。というか、うらやましいような、うれしいような、なんだか微妙な気持ちでした。
 安堵の気持ちは、葵さんと紫穂さんも同じだろう。
 そう思い、振り向くと、

「爆弾は全部処理できたみたいやな」
「任務完了っと……。あとは――」

 紫穂さんが何やらポケットをゴソゴソとやっていました。
 何も入ってなかったように見えたけど、何か入ってるんだろうか? 疲れた後だから、甘い物でも出すのかな?
 そんな風に暢気に考えていると、

「へ?」

 腕から重りが消えました。薫さんが葵さんの腕の中にテレポートしていました。
 葵さんの仕業、と思う間もなく、フェザーさんを幾筋かの影が遅い、そして絡めとりました。
 巻きついたのは、ワイヤー。辿っていくと、その先は、

「捕まえたわよ……フェザー!!」

 紫穂さんでした。












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