しっぽきり

一本目 煩悩粉砕
二本目 ロンパーボート

 


「悪いわね。今日はあなたの味方をするわけにはいかないの」
 
 信頼しないまでも、即座に敵対することもないだろう。
 能力を発動させるフェザーさんに、皆本さんは自分の考えが甘かったことを悟りました。
 吸い込まれていくのは、自らの影。底なし沼のようにあがこうと抜け出すことはできません。

「フェザー!! きさ……ま……ぐ……」

 そして、皆本さんは姿を消しました。
 それを見届けたフェザーさんですが、余裕たっぷりというわけにはいきません。ミラーージュさんから離れてしまえば、催眠能力はすぐに消えてしまうのです。その能力の名残が残っているうちに、一仕事終えなければならない。
 フェザーさんは、自身も皆本さんが消えた地面へと潜りました。
 目をつぶり、苦悶の表情を浮かべる皆本さんの顎に手をやるフェザーさん。
 すると、強烈な念波を覚えました。響いてくる念波は、よく似た感触。

「なめんな!!」

 その主は、通信が切れた皆本さんの異変に気づき引き返してきた葵さんでした。
 干渉され、中和される。超度七の力が、皆本さんの体を引きずり出していきます。

「サイキックぅぅ 超空間一本釣りっ!!」

 そして、とうとう皆本さんは地表へと戻りました。
 皆本さんは、呼吸を取り戻すと、駆け寄ってきた葵さんに礼を言い、そして、薫さんと紫穂さんに伝えました。この事件にはフェザーさんが関わっていると。そして、皆本さんは彼女が、影を使った合成能力で攻撃したことも見抜いていました。

「影になっている場所をチェックしてくれ!!
 これは超能力テロだ!! おそらくどこかにブラック・ファントムの洗脳エスパーも……!!」

 そして指示を飛ばしました。
 ブラック・ファントム。エスパーを洗脳し、道具として犯罪を行わせる組織の名前に、指示を受ける二人の顔も険しくなりました。
 程なく、紫穂さんが異物を発見しました。
 場所は地中の配管。薫さんが、傷つけないように掘り出したそれは、

「高性能爆薬と時限起爆装置よ!! 解除不能に設定されてる……!」
「よーし、じゃあ、これを……」

 どうしたらいいのかわかりませんでした。
 そんなわけで、いつ爆発するか、どうしたらいいのか分からずてんやわんやの二人。そこに、葵さんと皆本さんが現れました。

「こっちだ!!」

 そう皆本さんに誘導されて、たどり着いたのはタンク新設用の資材置き場。

「そのパイプの中に入れて、爆発させる!」

 と言われてはみたものの、資材置き場はタンクからさほど離れていませんし、パイプだけあって蓋もないし、分厚くなく強度も爆風に耐えられるほどのものとは思えません。

「大丈夫!! 早く!!」

 促されるまま、皆本さんの言うところだからとパイプの中に爆弾を入れる薫さん。それを確認すると、葵さんのテレポートで退避。
 ドゴォォン!!
 程なく、パイプから空へと向かって爆風が放たれました。
 その勢いに大砲みたいと驚く薫さん、その爆音にやや引く葵さん、その全てに魅了される紫穂さん。三者三様の反応を見せる三人に、皆本さんが説明したところによれば、原理は薫さんの言うとおり大砲と同じだとか。完全に封じる分には分厚い壁が必要になりますが、このパイプのように爆発の圧力を開口部に集中させ、一方向に流せるのならばそれを安全に流してやれば被害は最小限に抑えられるとか。
 そんなわけで、爆弾は処理できましたが、一つだけとは限りません。なので、次の爆弾を捜すために動きだそうとしたそのときでした。
 紫穂さんの影から手が伸びたのは。
 
「そうはいかない……!!」
 
 続けて、姿を現したのは顔を布で覆った少女。ナイさん。

「爆弾はあと二つ。処分したければまず――私を倒してください」
「きゃ……」

 そのまま、紫穂さんを影の中へと引きずりこんでいきました。
 
「紫穂!!」

 葵さんが咄嗟に紫穂さんを救おうと能力を発動させますが、しかし、テレポートできたのは帽子だけ。
 そして、ナイさんは葵さんへの対策も怠っていませんでした。地中を高速で移動して、葵さんのロックオンを避ける。そんな彼女の抵抗に葵さんは怒りました。

「しゃらくさい!!」

 そして、とるべき道は一つ。自らの才能で潰しにかかるのみ。

「超空間認識感覚全開ッ!!」

 瞳を閉じ、感覚を研ぎ澄ませる葵さん。
 そして、その底なしにも思える能力は、即座にナイさんを捉えました。

「そこッ!!!」

 が、ナイさんも黙って屈するわけもありません。
 地表に出現したのは、紫穂さんのジャケットとミニスカート。

「服をオトリに――!? 紫穂!!」

 再補足するためには、時間がかかる。となれば逃げられてしまうかもしれない。焦る葵さん。しかし、薫さんが自信たっぷりに言いました。

「充分だよ葵!」
 
 自分にも超感覚が目覚めたのだと。何を言い出したのかと、訝しげな葵さんですが、薫さんが冗談を言ってるようにも思えません。その表情は真剣そのもの。
 事実、薫さんはすっかりと把握していました。
 大気の流れ、地中のかすかな振動、

「そこだっ!! 念動財宝発掘!!」
「くっ……!!」
「ちょっ――待って、薫ちゃ……こらーっ!!」

 ではなく、紫穂さんのパンチラを。

「ゲットだぜー!!」

 そんな薫さんの超感覚の冴えを喜ぶよりも、この点での育成は失敗かなあと皆本さんが、エロ絡んだときはスゴいな、やっぱり準備しておく必要があるなあと葵さんが呆れる中、とにかく紫穂さんは救出されました。そして、ナイさんも地面ごと抉り出されました。
 敵の機動力は既に把握しています。逃がせばどうなるか分からない。
 となれば、

「ブーストで一気にケリをつけろ!!」

 後々の妨害を防ぐためにも、彼女を洗脳から救うためにも、今、ここで決めてしまうのが得策。
 皆本さんが、三人に指示を出し、彼女たちの能力を開放しようとしたそのときでした、

「ザ・チルドレン、完全――」 
 
 皆本さんの体の動きが止まったのは。
 取り出した特製携帯電話のボタンを押すだけでいい。それなのに、指が動かないのです。
 そして、脳内で声が響きました。

『ダメよ。そうはさせない』

 皆本さんの中から聞こえる声。
 それはフェザーさんのものでした。












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