しっぽきり

一本目 薄味なだけで、一応食えるようで。
二本目 平手×信長の道は五年前に通った! というか、Mr.ジパング読もうぜ!



 あれやこれや流されているうちに、たどり着いた露天風呂。
 そこで女性陣が目にしたのは、こんなポスターでした。
 タオル・水着着用禁止。
 逃げ道はふさがれました。抜け穴もふせげます
 挙げ句に、脱衣所はしきりの一つもありゃしないオープンすぎる作り。薫さん曰く、日本の風情、和の心らしいですが、野性児な初音さんをのぞけば、その言葉に賛同する人はいません。
 さらに悪条件なのは、脱衣場から湯船までの距離。ちょいとした長さの石階段です。そこを、裸でテクテクなんて晒し者もいいところ。
 先に入浴してる男性陣、というか賢木先生一人が、「いい湯だぜー」だとか、「早く来いよー」とか「他に誰もいねーぞ」とぬかしていますが、言ってる本人が一番の見物人なのですから説得力はありません。

「早く行こうよー」

 が、そういう次元にはいない初音さんは気にせずに、タートルネックタンクトップ一枚だけを脱いで裸になろうとしています。
 そこにのっかるのは、こちらはすでに上着一枚だけを脱いでブラの薫さん。
 日本人なら混浴を恥ずかしがるななどと注意します。
 もちろん、一同のっかりません。それに業を煮やしたのか、薫さんはさらに熱く語り出しました。
 勇気を持て、逆に考えろ。男子をガン見しろ、肉を斬らせて、

「自分の肉だけ斬っとけー」

 他の人たちは肉も骨も差しだすつもりはないようでした。
 ガン見するとこに骨は無いんだからこの例えはまずかったかと、納得させるための別の方法を考える薫さん。すると、紫穂さんがこんなことを言い出しました。

「あら? 皆本さんが来たわよ?」

 具合が良くなってお風呂に入るみたいと、コテージのほうを振り返り呟く紫穂さんに、薫さんは思案を放棄。代わりに、服を入れる籠で急いで自分の体を隠しました。
 そんな薫さんの慌てぶりに紫穂さんがにやり。本当は、

「ウソでーす。言ってみただ・け」

 とのことでした。
 ハメられた薫さんはしばし、呆然。今まで、恥ずかしがる素振りも見せなかった薫さんの豹変ぶりを不思議がる初音さんでした。
 それはそれとして、ナオミさん、小鹿さんの答えは「やっぱムリ」でした。

「えーっ。お願い!! 行かないで!!」

 帰ろうとする二人に薫さんはせがみました。

「だって……」

 薫さんにはこんな思いがあったのです。

「皆本が倒れたのもみんなを巻き込んできまずくなりそうだったのも、あたしのせいだし、多少は体を張ってでも楽しく盛り上げたいなあって」
「薫ちゃん……」
「薫……」

 皆を気遣っての振る舞いだったことに、驚く一同。
 とはいえ、

「だから他人の体を張らせるというのはオカシイだろ」

 というのが正直なところ。
 楽しむのはいいとしても、裸体をさらすのはごめん。
 その条件を満たす手段を持っていたのは紫穂さんでした。「こんなこともあろうかと」と便利キャラの面目躍如な台詞と共に、取り出したるは紙袋。中身は、

「全員分の水着を用意しといたわ。サイズは合ってるから」

 半ば薫さんの協力で網羅しえた水着。しかし、薫さんは反対しました。
 マナー違反。エスパーはルールを守らないと世間に思われる。
 注意のポスターを指して、マナーを説く薫さん。紫穂さんの対応は、

「……こんなものは、見なかったのよ」

 強行突破でした。具体的には、ポスターに手をかけてビリリ。自分の罪という影を隠滅するように細かく細かくビリリ。

「風ではがれて存在しなかったの」
 
 そして、言葉通り、それを風に流すのでした。
 そんなわけで、長い髪を巻いたり、止めたり葵さんのテレポートで着替えたりした一同は、降りていきました。

「おまたせー」

 六人、一〇個の水着の下で揺れる乳の到着です。

「おー来た来た!!」

 居酒屋でビールを頼んだみたいな自然さで受け入れる賢木先生と、濡れた水着は水着でフェティッシュと納得し鼻の下をのばす三人と反応が分かれましたが、とにかく入浴タイム。

「あっきらー」

 と、子供の頃以来の明君との混浴に初音さんが興奮し飛びつき、明君をもっと興奮させれば、

「は、初音ちゃん!? そのカッコでそれはさすがに」
「まーまー今日は保護者は休みにしましょーや。任務を外れればただの男と女なんスから」
「男と女って……あのコたちまだ未成年だし、初音ちゃんの野性でマチガイが起きないとも」
「間違うのも若さの特権。そして俺たちだってまだ若い。でしょ?」

 と小鹿さんが押し切られて「私はもっと年上が好み」と年上好きをカミングアウトし、

「だからまちがわねえ? 俺と!!」

 とナオミさんを口説く賢木先生は、もっと年下が好みであると判明し、

「私にさわうと安全は保障しかねます。マチガって死にたいですか?」

 ナオミさんは、長年の谷崎さんから受けたストレスをこじらせかけているのでは? という疑惑が生まれるのでした。
 一方、年少組は年少組でかたまっていました。というか、チルドレン達がかためていました。

「おじゃましまーす」

 位置的な意味で。

「いいお湯だねー。それにいい景色……!」

 薫さんは温泉を満喫していました。そして、景色も満喫していました。ティムさんとバレットさんの。
 肉も骨も犠牲にせずに済む現状に気づいた葵さん、紫穂さんも同様だったようで、二人をじっ。
 自分たちに集まる三つの視線に、ティムさんとバレットさんは、この混浴タイムが自分達の思っていたのと質が違うことに気づきました。
 見たいけれど眩しすぎて見られない。
 二人はそんな状況を予想していました。ところがどっこい、現状は自分達が見られる側。しかも、向こうは水着を装備、こちらは丸腰で、圧倒的に不利。
 見られる側ってこんなに辛かったんだと痛感したティムさんは、「フィギュアを縞か否と色はどうだとかで判断するのを止めるから、特定シーンで一時停止をしないからとか、湯気の多い少ないで文句は言わないからとか、DVD化されたら見られるんだよなとか期待しないから」と誓い、見ないように内心祈るのでしたが、勿論三人がそれに付き合うわけもありませんでした。あと、結局、止めないし。
 そんな感じで、煮える時間を過ごしていると、葵さんが突然こんなことを言いだし始めました。

「みんなで記念写真撮ろっか」

 そして、デジカメを取ってくるというのです。
 デジカメ。PCにつなげば、あっと言う間にデータはPC内。あれやこれやでそのPCを使っているうちに、意外と高性能なのでそんなところが写ったりした写真が、流出という可能性もあるデジカメ。
 それを葵さんは取ってくるというのです。薫さんは「ナイスアイディア」、紫穂さんはおどけ気味に「葵ちゃんやらしー」と反対するどころか賛成。

「それなら俺たちがカメラを取りに、ついでに海パンはいてくる!!」

 ティムさんはそう救いを求めますが、バレットさんはそれを止めました。
 仮にタオルを巻いたとしても、脱衣場までは上りの階段。下から見上げる形になる敵には、急所を無防備にブラブラとさらす形になります。

「かまへん、ウチが行く! テレポートですぐやから」
「早くねー」

 そんなわけで行っちゃいました、葵さん。
 葵さんが消えた空間をジッと見ていた紫穂さん。

「ま、いいわ」

 やがて、二人に向かって振り向き、

「その間私たちは親睦を深めましょ」

 ティムさんの腕にギュッと自分の腕を絡ませました。
 バレットさんには、薫さんが濡れた方をピトリ。
 言葉を失う二人。

「いつも私たちのサポートありがと」

 やがて、紫穂さんはティムさんの服を着ていない肩を揉み始めました。
 薫さんは、バレットさんと腕を組みだしました。
 これなんてエロゲ?
 三人いたはずの敵が二人になったら均衡が崩れて余計不利に。
 アクティブに接触してくる美少女。ギャルゲーとか萌えアニメならありがちな展開で、不思議にも思いませんでしたが、実現するとこんな不自然。ですが、ティムさんにはその不自然さにあらがう気力はありません。パニックになったら終わり、敵の意図を冷静に探れ、となだめるバレットさんも同様でした。
 すると、

「ねえ、ティム。頼みがあるの。他のみんなに悟られないようにきいて」

 紫穂さんがティムさんにささやきました。
 そのささやきの冷静さに、ティムさんの心拍数がすっと下がっていきました。
 どうやら、紫穂さんの接触には裏はあったのです。他に聞かせたくなかったからこそ、自分に接近してきた。そう気づいて、ティムさんは落ち着きました。あるいは萎えたのかもしれませんが。
 
「ねえ、バレット。あのさ……あたしたちって」
「は……はい!! なんでしょうか、薫どの!!」

 こちらは薫さんとバレットさん。ドキッと胸を高鳴らせて次の言葉を待つバレットさんに、薫さんの表情が突然崩れました。オヤジ的に。

「ツイてるよねー!! こんなイイ職場めったにねえもん!!」

 あれ? バレットさんは一瞬、困惑し、

「小鹿ちゃん隠れ巨乳だしさあっ、最近のナオミちゃんってヤバくねえ!?」

 理解しました。自分達にとって、薫さん達は敵ではないことを。そして、薫さん達にとって自分達は空気だったということを。
 熱っぽい表情で成長から熟成に移行し始めたナオミさんについて語り、ナオミさんと小鹿さんに、ファインダーの形を指で作ってみたり、目を細くし、距離感を殺してみたりする薫さん。
 とりあえず、向き合って恥じらってどうこうという関係ではなかったんだなと悟ったバレットさんは、やっぱり落ち着いたのか、萎えたのか、下がったテンションで、薫さんに答えました。
 
「はい……あの……我々は幸運であります。連れてきていただいて感謝します」

 ですが、その棒読み加減な言葉が薫さんの気に障ったようでした。目の前の光景の価値がわかっているのか、と。
 薫さんは、何年か前の新年会でオールスター揃い踏みを見たことはありますが、今回の光景だって捨てたものではありません。それに、バレットさんは男。となれば、こういう光景の価値は女である自分より貴重ではないか。薫さんはそう伝えたかったのです。
 そして、伝えたかったことはもう一つ。

「あと、敬語なんか使わなくていいって!」
「いや、でも」
「でもじゃないの!」

 反論しようとしたバレットさんを薫さんが遮りました。
 
「過去はともかく、いまは一緒に戦って、遊ぶ仲間だよ。あたしたち家族みたいなもんじゃない!」

 微笑む薫さんにバレットさんは思いました。

「薫どの……いや、」

 自分達は向き合って恥じらう仲ではないけれど、すぐ側にいる関係なのだと。

「薫ちゃん」

 薫さんは、自分をちゃん付けで呼んだバレットさんに満足そうにうなずき、肩を組み、言いました。

「というわけで妹に話すよーに正直に!!」

 バレットさんは思いました。
 妹展開は好物だと。
 でも、

「お兄ちゃんはどの乳に発情してるのー!?」
 
 この妹はなしだと。弟ですらねーや、と。
 なんだか知らないけど、打ち解けているようなチルドレン達に、安堵する賢木先生。さて、自分のことに専念しようかと、口説き落とし方を思案し始めたその時でした。

「霧……?」

 小鹿さんの言葉通り、霧が立ちこめてきたのです、急に。
 
「湖に何かいる!?」

 野性の勘なのか、真っ先に初音さんが叫びました。

「な、なんだありゃ!?」

 続いて明君も。
 二人の視線を追いかけて、賢木先生は唖然としました。
 霧の中に立っていたのは、人でした。人のように見えました。ですが、

「か、怪物ー!!?」

 大きかったのです、とんでもなく。












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