しっぽきり

一本目 それに、うかつに形に残すとしょっぴかれたり社会的に死んだりするけど、フィギュアの谷間・下乳・横乳・へそ・脱着可能パレオは俺たちのものだという主張。
二本目 攻めも過ぎれば……。



「ミサイルが来る!!」

 日本H県の、何の変哲もない一海水浴場のちょっと沖。常識的に考えて、スティンガーミサイルなんて普通は飛んでこないはずの場所での皆本さんの叫び。平常時であれば、直射日光にやられたのかとか、頭を強打したのかとか、詰め込み教育の弊害だとか、ようは頭は大丈夫かと言われるような叫びですが、自らを普通だと主張するテロリスト「普通の人々」が撃ってきたので、この状況ではその叫びもごくごく普通の叫びでした。もうちょいひねろうぜってぐらいに普通。

「みんな海に飛びこめ!!」

 海に飛びこめば助かるのかと聞かれれば、そんな保証はもちろんできませんが、葵さんのテレポートが防がれた海上とあっては、他に打つ手はありません。
 しかし、よりにもよって身内に、自分たちを巻き添えにする形でスティンガーミサイルを撃たれた「普通の人々」の一員、チャラ男白も黒も混乱中。黒は、状況を理解できずにまだ自らの、ことここにいたっては無価値の優位を守ろうとするのか、指示を出す皆本さんに拳銃を突きつけました。
 しかし、ミサイルによる混乱は、ことバベル陣営に限っていえば、隙に付け入るチャンスを与えていました。

「おやめなさいっ!!」

 叫んだのは、朧さんでした。思い切りよく立ち上がると、チャラ男黒に体当たり。勢いそのまま、彼と海にドボン。
 内心、朧さんに感謝しつつ、皆本さんは、葵さんにも飛び込むように指示。水中には薫さんたちがいますし、溺れる心配はありません。そして、皆本さんは彼女たちにここから離れるように伝えるメッセンジャー役を託しました。それなら皆本さんも一緒にと葵さんも訴えますが、問答している時間はありません。なので、皆本さんは葵さんを一蹴り、海に落としました。

「に、逃げんな化け物ー!!」

 その場に残っていた唯一のエスパー、自らが排除しようとしていた葵さんが海に逃げおおせたことに触発されたのでしょう。それまで、拳銃を突きつけるだけで精一杯だった、チャラ男白が彼女を逃がした皆本さんに発砲しました。癇癪で撃たれた弾丸に、皆本さんは覚悟を決める余裕はありませんでした。そして、その必要もありませんでした。
 射線に分けいったのは桐壷局長。縦断が衝突したのは、その手にかけられていた手錠の鎖。パラパラと落ちたのはその残骸。
 鎖を銃弾にぶつけて破壊した。とどのつまりはそういうことでした。
 信じられない反射神経で、瞬時にそんなことやってのけた不敵に笑う公務員五〇代、四捨五入すると還暦。
 
「フ……フツーじゃない!! こいつ、フツーじゃねえっ!!」

 皆本さんも同意するしかありませんでした。

「皆本、お前も行け!! こいつはワシが連れていく!!」

 文脈的には、チャラ男白も助けることになるのですが、その助けられる側のチャラ男白的には、連れていくの前に、地獄がついていたに違いないと信じさせるような獣の表情で迫る桐壷局長、孫にはちょっと弱いおじいちゃん。

「それよりECMです、局長!! こいつが残ると薫が浮上しても無防備に」

 ECMを潰しておけば、生存率も高まる。局長は、部下の指摘に「よっしゃ!!」とうなずくと、チャラ男白の顔面に鉄拳一発。同時に、彼の足下のECMを放り投げました。
 高く放物線を描くそれは、偶然かはたまた狙ったのか、スティンガーミサイルの弾道と重なり、そして爆発の中で砕け、爆風とともに四散しました。
 その爆音で目を覚ました管理官が、自分を撮影していたカメラ小僧の携帯をへし折ったり、フィルムを引っぺがしたり、彼等が涙目になっているところを奪ったデジカメでデータを全消去した上で撮影したりと大暴れしていたのは、また別のお話。






 まず最初に落ちて来たのは朧さん。驚いていると今度は葵さん。慌てて二人を空気の球の中に導きいれ、事情を聞くと海上ではミサイルが迫っているとの事。いかに海上での爆発とはいえ、衝撃波と破片は防ぎきれない。そのことを察すると薫さんは、空気の球を少しずつ削り、四方に放っていきました。
 そして最後に落ちてきた皆本さんと桐壺局長。彼等の顔に呼吸が出来るように空気の小さな球で覆うと同時に、泡の分離を強め、カーテンとし、鈍い爆音と海に侵入してきた衝撃と破片を防ぎました。
 全員の無事を確認して、薫さんは改めて震えました。
 ――あとちょっと飛び込んでくるのが遅かったら……全員やられてた!
 ミサイルが放たれたという伝達が遅れていたら、伝達自体がなかったら全員が死んでいました。そして、ミサイルが放たれなかったとしても、二人のテロリストによって仲間が殺されていたのかもしれない。エスパーを殺すためなら手段を選ばない、「普通の人々」という存在。
 視線を向ければ、苦しげに沈んでいく二人のテロリスト。
 薫さんの彼等への怒りは消えませんでした。
 ――あたしは――あたしたちはエスパーだから……!!
 しかし、薫さんはそれを抑えることが出来ました。
 二人へ、皆本さんたちにしたのと同じように、空気の泡を送ると、薫さんは改めて自分に自分がエスパーである理由を言い聞かせました。
 ――みんなを助けて幸せにするために力を使わなきゃならない! 未来を守るために!!







 通報を受けたパトカーが到着すると、彼等はゾロゾロとしょっぴかれていきます。

「ホラ、おとなしくしなさい、テロリスト!!」

 あと、「盗撮マニアの変態!!」。そんなやつ等もいたのかと、驚くやら、呆れるやら、管理官も海の平和をある意味守ってたのかと納得できるような割り切れないような、一同。
 と、そのとき、チャラ男白が憎憎しげに言いました。
 
「……化け物め!!」

 感謝なんかしない、殺さなかったことを後悔するぞ。
 吐き捨てる彼等に、言葉を詰まらせる薫さん。

「黙れ!!」

 言い返したのは賢木先生でした。

「そうやって理由をつけて他人を踏みにじる組織だから、仲間も平気で切り捨てるんだろう!! あの子がどんな気持ちでお前たちを助けたと思う!!」

 殴りかからんばかりの剣幕で捲くし立てる賢木先生。
 その言葉に、チャラ男白が口ごもり、そして太陽でも直視したかのように目をそむけました。

「賢木……もういい」
「そーだよセンセイ」

 怒ってくれた賢木先生を、感謝しつつ止める皆本さんと薫さん。しかし、賢木先生の怒りは納まりません。

「いーや許さん!!」

 敢然と言い放つ彼の熱さに、思わず紫穂さんが驚いていると、賢木先生は、その熱さの理由の一端を叫びました。

「俺のローンがまだ終わってない私物のボートおおおお――――!!」

 一同は突っ込みつつ思いました。
 フラグが消化されただけじゃん。






「これが来月の分!!
 これが再来月の分!!
 そして! これが!!
 ボーナスの分のうらみだあああ――!!」

 叫びとともに、乱れ打たれる火は花火。
 夜になってもまだ賢木先生の怒りは納まりませんでした。
 局長に訴えました。あれは自分の私物だと。
 局長は言いました。今、ウチも厳しいから分かってくれ、と。
 管理官に訴えました。今日は、仕事じゃないのにわざわざきたと。
 管理官は言いました。うん、だから仕事で壊れたわけじゃないから、ウチでは払えないわよね、と。
 そんなわけで、休日を潰してのボランティアのせめてもの自分ご褒美にと、管理官に訴えて用意してもらっていた、浴衣やら花火やらを賢木先生に楽しむ余裕なんてありませんでした。
 そんな賢木先生を気の毒に思いつつも、朧さんにはそんなことより気にかかることが一つ。
 犯人を救助して予知が消失したこと。それが朧さんを悩ませていました。この予知の原因自体が自分たちだったのではないのかと。
 眉を顰める朧さんに、管理官は苦笑しつつ「要素の一つにはちがいないんだろうけど」と前置きしつつ、答えました。

「それは別にいいんじゃない?」

 自分たちだってこの世界の一部なのだと。そして、今日、この海では何も事故は起こらなかったのです。

「それでいいじゃない」

 局長が管理官の言葉に頷きました。

「予知がなければ他の誰かがおぼれていたかもしれん。あの犯人だって心の底では何かが変わったと思うネ」

 そうなれば自分たちが動かなければ、今、チルドレンたちが花火を楽しんでいることはなかったかもしれない。
 だとするならば、自分たちは自分たちにできる最善を尽くす。

「それが未来を救うということだヨ」

 局長が呟くと、一層大きなはしゃぎ声が砂浜に響きました。




 そんな感じに、一同がこの砂浜で起こった最大の事故、賢木先生のボート爆発を忘れてまとめに入ってると、飲み物を買いに行っていた皆本さんが帰ってきました。
 彼の姿を発見し、歓声を上げる葵さんと紫穂さん。
 
「やあお待たせ――」

 皆本さんが、それに答えようとすると、飲み物の入れすぎか、手に持っていたビニール袋の底が破れ、ボトボトと缶が砂浜に落ちていきました。

「なーにやってんのさー」

 それに気付き、からかいがちに缶を拾う薫さん。
 そんな薫さんにお礼を言いながらも、皆本さんは少しずつ大人びてきたその横顔に、賢木先生から聞いた話を思い出していました。
 薫さんは暴走寸前だったと。
 ですが、皆本さんが見たのはテロリストを助けるために泡を分けた薫さん。

「あのさ皆本。昼間あたしたちが言ったのはちょっとからかっただけで……皆本はけ、けっこうイケてると……」

 まだ小学生だった頃、皆本さんが殺されかけたとき、薫さんは敵を許そうとしませんでした。それなのに、今日の薫さんは、耐えて、そして最善の判断を下しました。

「あ、いや、あたしたちだって、ばーちゃんや柏木さんと比べるとね――」

 その事実が嬉しくて、何か気恥ずかしそうに言っている薫さんの言葉をさえぎって皆本さんは言いました。

「大きくなったな、薫。君はもう子供じゃないよ」

 そして、その言葉に、薫さんがなぜだか混乱しはじめました。落ちていく缶、そして薫さん本体。
 突然、超能力の使用をやめた薫さんに減圧症のせいかと心配しかけよる皆本さん。
 そこに、こちらも薫さんの落下に気付いた葵さんと紫穂さん。二人が目撃したのは、倒れた薫さんの肩に手を伸ばした皆本さん。事情を知らずに見れば、押し倒したと見えなくもありません。
 慌てる皆本さんでしたが、薫さんが事情を説明し始めたので安心しました。ここでの最悪のケースは、薫さんが恥ずかしさやらなんやらで言葉を失い、二人の勝手な誤解で自分がボロボロにされること。砂浜で花火というロケーションですから、埋められたうえに花火を当てられるとかそこまでいくかもしれません。ですが、薫さんは話はじめてくれました。これなら、火の粉は避けられそうです。
 管理官や柏木さんと比べると胸が小さいと言おうとしたら、皆本がもう十分に大きくなった。もう収穫するに十分だ的なことを言い出し始めた。
 おや? 様子がなんだか変です。
 
「ほおおおお?」
「で、そうなったと」

 皆本さんは思いました。
 人の話はよく聞いておくべきだと。

「そんな急に男になるとは……予想外で心の準備が――」

 そして思いました。これが最悪のケースだと。
 そんなわけで、皆本さんは砂浜に埋められて花火を打たれることになり、葵さんは胸か! 結局、男は胸か! と怒りを花火に変えてぶつけ、局長はそれをサポート、朧さんと管理官はそれを見学、葵さんより大きくなることを確信済みの紫穂さんは怒りを直接皆本さんにぶつけずフナムシを焼くぐらいで納め、一方、賢木先生は酒をあおって納めて、どっちに解釈しようと今回の勝ち組な薫さんはいつもよりジュースを甘く感じているのでした。
 












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