しっぽきり

 夜を歩く。
 別荘の敷地を出て、夜の街を歩く。観光地とはいえ夜遅く。僅かな音を除けば静かなものだ。
 つい先ほどの会話を思い出す。
 理事長なのだという。
 今、通っている学校の理事長。そして、そこを卒業していた。いまだ若いから、実質的な運営はしていない。時が経てば、いずれはそれも行うだろうが、最近は特に、学校に姿を見せることは無い。
 気持ちを落ち着けたかった。
 そこまで聞いて、その場を去った。
 知っていても不思議はなかった。しかし、知らずとも無理はなかった。
 そんな場所にいた。
 漠然とした予感は、あった。
 一〇年前、最後まで纏っていたものを、全てを知ることはなく、知っていたのはほんの一部。しかし、あの城。広大な庭園。
 今、いる場所と似通った、ほんの一握りだけが持つことを許される世界。それならば、今と昔はどこかで隣あっているかもしれない。そんな予感はあった。
 覚えてくれているだろうか?
 一〇年も前のことだ。移ろいやすい記憶、それも幼年期。忘れているても無理はない。
 鮮明に覚えている別れは酷いもの。傷つける言葉を吐いて、拒絶され、それっきり。
 けれど正しいのはどちらか、時間は明確に、残酷に証明してくれた。
 ありもしない力の幻に増長して。甘い幻想に期待して。
 裏切られたのではない、傷つけられたのではない。
 裏切った。傷つけた。
 気づけば気づくほど、思いはひどく重たくなっていった。
 沈めた。記憶ごと、心ごと。
 けれど忘れられるはずはない。忘れていいわけがない。
 もしも、機会があるならば、出会えるのなら、言わなければならないことがある。
 あの日、雨の中で思ったことを。
 覚悟を決めなければならない、向き合わなければならない。
 その時は、おそらく、遠い場所ではない、遠い日ではない。
 その時は、




 月光と花弁が舞い散る。
 佇む影が振り返る。
 闇よりもさらに深い黒。それを纏う白。風に流れる金色。
 天王州、アテネ。


 


 今だ。












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