しっぽきり

一本目 頑固さが伸ばした長髪というお話。
二本目 今回は誰も私を助けてくれません。結婚のピンチ、見合い。それを邪魔するだけで私はヒロインになれると思っていたのかなあ……。



 常夏の海にカタストロフィ号が着水し、澪さんやカズラさんが泳いだり、カガリさんが前かがみ担っている頃、薫さん達は必死に試験中でした。
 そして、後日、東野君がちさとちゃんに、とりあえず埋めたからじゃない、問題用紙の隅に落書きしてる時間あったら見直せ、なんだ「Dis is a pen」って、合格したからってそれで終わりじゃねーんだぞ、もっと将来のことを考えて遊んでばっかいないで、ちゃんと勉強しないと将来私が困る云々。しょうがないから、期末試験は家で一緒に勉強をどうだこうだ的にドヤされている頃、チルドレン達の皆本さんの一日と、ついでに局長の公務員人生をかけたテスト結果は出ていました。
 その結果は、

「一位、ウチ!! 全教科平均96.2点!!」

 葵さんがブッチギリ、ついで紫穂さんが88.3点、ドベが薫さんで82.4点でした。
 紫穂さんはあのカニ頭の個人教授がまずかった、薫さんはケンとメアリーが実演した教科書の外国人コントで思いだし笑いしたのが響いたと内心で言い訳しつつも、学年トップクラスな数字を叩き出されては順当な結果と納得せざるを得ません。
 でしたが、皆本さんに言わせれば、薫さんの問題点はもっと別にあったようで、それは試験前に首を突っ込んだ余計なこと。
 お叱りのデコピンをもらった薫さんは、集中するための助走だったと弁解しますが、子供のかどわかしには定評のある犯罪組織のボスに誘われて、ホイホイついて行ったあげくにミサイルを蹴散らして地球の裏側まで行ったとあっては、皆本さんも怒鳴らずをえません。
 それでも、バベルのエスパーとして見逃すわけには行かなかったと、責任感の表れだ、それに情報を入手するという結果までついてきたしと薫さんは譲りません。
 そしてなにより、

「これのおかげで、勉強、少しは好きになったしね」

 とテキストを嬉しそうに抱えて笑う薫さん。
 こんな点数初めて、皆本のおかげだよと喜ぶ薫さん。その嬉しがり方に、自分が優等生であるが故に割を食ってきた自分の人生が少し報われたような気がして、追求する表情も思わず緩んでしまいます。
 そんな表情を見て、

「よっぽどいろいろたまってたんだなあ……
 言葉と裏腹に身体は反応しちゃうってやつ?」
 
 と薫さん。
 いつもよりもエロ成分を多めに投入された台詞であることを指摘する紫穂さん。

「パンドラの影響受けてきたんちゃうか?」

 この葵さんの感想に、糸口を見いだし、二度と禁止、次はちゃんと連絡しろ、あんな性犯罪者と関わるなと反撃する一二歳の少女三人と同棲生活を送る皆本さん。
 彼の勢いにあきれつつも、薫さんはエロ方面の師匠は兵部少佐でないことを明言するのでした。



 一方、エロ師匠は、自分がプレゼントした本を宇都美さんが読んで元気になったわけではないことを知り、ガッカリしているのでした。



「……ほな」

 薄くリップグロスを引き終わると、葵さんは皆本さんの腕に抱きしめました。
 髪の一部を左側にチョコンとまとめ、可憐な装いで、二人きりでふつうに遊びに行こうと促す白のサマーカーディガンにミニの葵さん。ですが、皆本さんがキョトンとした顔で聞き返してきました。

「あれ? 二人っきり? きいたのとちがうよ?」

 一瞬の空白があって、葵さんは皆本さんの前から消えました。
 葵さんがテレポートしたのは、自分達の部屋。そこでは、紫穂さんが初夏のファッションのバランス取りに難儀し、薫さんが勝負パンツを選んでいました。

「どこに連れてってくれんのかなっ!!」

 鼻歌混じりにそんなことを言う薫さんにとりあえず、チョップを連打する葵さん。

「待て、コラ! なに勝負パンツ選んでるねん!!」
 
 万一のことがあったらいけないからと薫さんは宣いますが、葵さんにしてみれば、さすがにそんなデートをする気はありませんし、大体にして優勝者は自分。自分のデートに二人を連れていく気はありません。
 チョップを紫穂さんに止められつつも、そのことを主張していくと、二人は真っ黒な下地を真っ白なペンキで塗りたくった純粋な瞳で言いました。
 あたしたちチームじゃん。全員の勝利。三人一緒に。
 美辞麗句を口にしてそそのかそうとしますが、葵さんはそれを聞く気はありません。
 三人は中学生。大人への階段を、自分の人生を歩んでいかなければならない年頃なのです。
 とすれば、ルートを決めてエンディングを一つ選ばなければなりません。ハーレムなんてありえない、ティムさんやバレットさんがそう語ってるのを聞いて、葵さんもすっかり納得。誓いのキスをしようとして、メガネとメガネがふれあって、苦笑いというAOIENDがあってしかるべきなのです。
 なので、葵さんは再び訴えました。
 「今日はウチのイベント!! あんたらは留守番!!」顔を真っ赤に、青筋たててそうまくし立てると二人は、

「ちぇっ、わかったよ」
「じゃあ楽しんできてね」

 と、いかにも諦めましたという様子で答え、そしてそんな二人の態度は葵さんに「来る気や……」ということを自覚させるのでした。



 見送ろうとした二人を振りきって、葵さんは皆本さんを連れて、テレポート。一瞬にして姿を消してしまいました。
 しかし、そんなことは葵さんの能力を熟知した二人でなくとも気づくことです。既にサイコメトリー済み、手は打ってありました。
 まず一つ目のヒントは、体をつかう遊びをしたがっている。
 サイコメトラーでコツを掴むのが上手いってレベルじゃない紫穂さんと、若干体力バカの気があった薫さん相手では、どうしても三番目になっていたのですが、成人男性である皆本さんとならそんなこと気にすることはありません。
 そして、二つ目のヒントは、無意識にスカートをチョイスし、更にその下はお気に入りの可愛いパンツ。
 この二つのヒントからデート席を推理せよ。
 高得点な二〇点満点で出題された問題に、しかし薫さんは即答しました。
 ボウリング場の確率が九二%だと。
 理由も論理的にナチュラルなパンチラで男の本能を刺激できるから。脳内再生されたメガネさんのあざとさにヒートアップする二人。
 無意識にそんな計算をする葵さんの女偏差値力を畏怖しつつも、二人はそんな葵さんの企みを潰すために、必死に乙女PCの演算速度をあげていくのでした。
 



 一方で、葵さんも撒いただけで済むとは思っていません。既に紫穂さんとは接触済み。その材料を元にすれば以下に奇をてらおうとしても、同じ年頃の乙女のことです。思考回路は読み切られてしまうに違いありません。
 
「で、どこに行きたい?」

 希望を尋ねる皆本さんに、一筋の光明を見いだしました。
 せや、

「ウチ、どこでもええよ? 皆本はんの行きたいとこに連れてって」

 丸投げしてまおう。
 如何にあの二人とはいえ、自分達より一〇歳は年上の男性の考えまで読み切れるわけがありません。読み切れれば、自分だって苦労しないし。
 そんなわけで、皆本さんの前から行きたかったいという、日本近未来科学博物館にテレポート。
 名前の通り、近未来なデザインの博物館は、皆本さんの説明では日本の最新テクノロジーをわかりやすく展示している博物館なんだとか。
 若干、イヤな予感がしましたが、そこはそれ。デートで連れてきてくれたんだから、何か形はこうでもテーマパーク的なアトラクションがあるのかもしれません。
 入場すると、まず迎えてくれたのは人型ロボットでした。
 HOMDAのアシモフMk-Ⅱと皆本さんは熱っぽく説明してくれました。

「君と私のメモリーチップを交換しないか?」

 アシモフがしゃべり、周囲のいかにもな面々から、分かる奴は分かる的なな笑いが漏れました。
 まあ、入りやから、そんなことを考えていると、皆本さんが小走りになりました。
 人気アトラクションの場所取りか何かだろうかと期待と歩調を早める葵さん。
 
「おおーっ。これが月面ステーションモックアップ!」

 子供のようにはしゃぐ皆本さんと葵さんの目の前には、銀色の大型の筒。
 どうも乙女心をくすぐるデザインじゃありませんが、月面と名が付いているのです。疑似無重力体験でもできるのかもしれない。
 そう思いこんで内部に入ると、そこには計器やら、なんかグルグル回すと開く丸扉や、材質がどうのでこれを使って石やら土やらを回収するんですよーだとかこのキャタピラを使うとどんな荒れた地形でも滑らかに移動できるんだよーなキャタピラだとかお前SFとか宇宙開発の知識なんてないに等しいんだから何書いていいかなんざ分かるかよ月の知識なんて大阪万博の時に長蛇の列ができた月の石が九州かどっかの博物館に展示されていて特に注目されてるぐらいしかないよそんなもん的な、皆本さんにしてみれば、日本の科学すげえと素直に感動できる展示物でしたが、葵さん的には、

「あ。どこか他のとこにするか? 君がつまらないならどこでも」
「そ、そんなことないで。皆本はんと一緒やからどこでも楽しいわあ」

 と、小首を傾げがちに固く笑顔を見せる感じの展示物でした。
 ですが、せっかくのデート、もっと楽しくなってもいいはずです。
 ですので、時間も時間ですし、葵さんはこう振ってみました。

「そろそろおなかすいたかなーって」

 さすがの皆本さんも、これは察してくれました。そんなわけで月面なんだか筒を抜け出した二人。何か心当たりがあるらしく先を行く皆本さんに付いていく葵さん。その表示先の案内板の一角には出口の文字。ああよかった、もう月はたっぷりと堪能したから、ここからは出て、外に食べに行くんだ。どこだろう、普段は自分達が食べたこともないような大人な食べ物が出てくる場所にでも連れていってくれるんだろうか。期待に胸を躍らせた葵さんは、案内板の出口表示のすぐ下にも何か書いてあったことを見落としていました。
 
「宇宙食は軽量化のためにフリーズドライなんだけど、食事は宇宙での楽しみだから飛行士の国籍に合わせていろんな料理が開発されてて――」

 そして、葵さんは食べました、今までは食べたことのない料理を。嬉しそうに、インスタントコーヒーやインスタントラーメンを開発したのも日本人なんだと語る皆本さんの言葉を聞きながら。宇宙お好み焼きが出てくるまでは。



 その夜、皆本さんは賢木先生の特別講習を受け国語の難しさを痛感し、そして葵さんはデートを思い出しながら泣きました。自分が生涯持ちうることのない物に、顔を埋めながら。




愛と日本語の惑乱愛と日本語の惑乱
(2008/11/15)
清水 義範

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