しっぽきり

 遥かなる昔、ギリシャ人の祖先ミケーネより伝わる物語。
 その戦いの歴史の中、絶対の力を誇った存在。
 ドクター・ヘルに世界征服を運命と感じさせた存在。
 それが機械獣。
 しかし、その野望はバードス島とともに、一時吹き飛ばされることとなる。
 錦織つばさによって。あしゅら男爵の――


 ビルの上。目の前にはあしゅら男爵が呼んだ機械獣。
 敵を討つどころか、あしゅら男爵を自由にしてしまったことを悔やむ甲児。
 ノナカーゴの口が開く。そこにはアフロダイAが。
 マジンガーZを捕獲し、引き返そうとするあしゅら。しかし、目の前に立ちはだかる大男。
 かまわず押し飛ばそうとするが、大男、黒須は容易には動かない。
 人間が自分と張り合っていることに驚くあしゅらを、控えていた安と先生が襲う。
 安の爆弾が炸裂する。しかし、あしゅらはダーメージを受けずに、逆にそれを機に黒須を振り切り、走り去る。
 つばさはそれを当然許しはしない。
 
「ようし。安、合図だ」

 合図一声、安が赤いかんしゃく玉を叩きつける。すると、爆発ではなく花火が上がる。
 遠く見渡すくろがね屋。
 突如上がった場違いな花火に視線を奪われる暗黒寺。
 だから気付かない。
 自分の足元の温泉が割れることに。
 そして、落下。
 彼を受け止めたのはなくなったはずのパイルダー。
 事態を理解する間もなく、パイルダーは浮き上がり、それにしがみつくしかない暗黒寺も空の人になるのだった。
 パイルダーが収まるべき場所はマジンガーZ。鉄の巨人を回収すべくノナカーゴが側に降り立つ。
 廃墟と化したビルに隠れるボス達。逃げ出すためには鉄仮面の軍団の目を盗まなければなら無い。しかし、闇夜は彼等の味方をしない。足を滑らせ、声をあげてしまう。当然気付く鉄仮面達。近づいてくる兵士達に怯えるボス。
 しかし、近づいてくる彼等を銃弾が襲う。

「機械獣ごときにびびってちゃあこの世は生きていけねえってことよ」

 葉巻を燻らせる拳銃の主はメキシカンハットの男。
 不敵に笑う彼に、弾丸を渡され手伝うように促されるボス等は頷くしかない。
 そして、四人はマジンガーのコクピット部分に。

 彼等の姿を見る甲児。折りよく旅から帰ってきた仲間と笑うつばさ。
 そこに降り立つパイルダー。
 驚くしかない甲児に、つばさは語る。

「何も覚えちゃいないんだね。なら教えてやるよ」
 
 光子力ビームが起こした爆発の後のことを。 
 閃光と衝撃が甲児達の意識を奪った後、つばさは甲児とシローは降ろしパイルダーを切り離した。重すぎて降ろせない暗黒寺を乗せたまま。
 ようやく事態を飲みこんだものの、シロー共々パイルダーがなくなったばかりに散々な目にあった甲児の怒りは治まらない。
 とはいえ、マジンガーを奪われないためにもすぐさまパイルダーオンし、ノナカーゴを倒そうと息巻く兄弟。
 つばさは冷静に指摘する。機械獣の腹の中にはアフロダイが捕まっていると。

「ならどうすりゃいいんだよ」

 癇癪を起こすシローに、煙管を吹かしてつばさは言う。

「黙って見てな」

 マジンガーに近づいていくノナカーゴ。
 少しずつ大きくなっていく影を眺めつつ、一際大きな弾丸を装填し、メキシカンハットの男は言う
 
「いまトビっきりのを食らわしてやるからな」

 機械獣と戦う無謀を遊ぶ男に怯えつつも従うしかないボス達。
 彼等の従順を誉めつつ、男は粘っこくそのときを待つ。

「おいでぇおいでぇ」

 機械獣が近づいてくるのを。

「ほらおいでぇ……おいでぇ」

 トビっきりを放つその瞬間を。

「うっせボケェ」

 そして銃弾は放たれる。
 発射音に、手応えを感じるボス。
 しかし弾丸は、カンッ、と乾いた音を立てて機械獣の体に当たると、力なく落ちていく。
 呆気に取られるボス。
 それは一瞬にして始まった。
 闇夜に冷たい白い煙が上がる。それを発しているのは、同じように白く凍りついたノナカーゴの体。
 
「凍っちゃった」

 マジンガーにもない武器と感心するシロー。「しばらく時間は稼げる」凍りついたノナカーゴを確認すると、つばさは振り返り歩きだす。そして、命じる。

「兜甲児。お前にゃあパイルダーを操縦してもらおうかい」

 歩き出したつばさの行き先を問う甲児。
 つばさの返事は揺るぎがなかった。

「もちろん、あしゅら狩りさ」

 ロープウェイ。ままならない体に苛立ちを覚えつつも、あしゅらは疑問を浮かべざるをえない。
 なぜ、あの女は自分の体に危害を加えられるのか?
 あしゅらの体は、ドクター・ヘルの物。ドクター・ヘルのみが罰を与えられる、はずだ。それならばなぜあの女は? なにか自分と関係があるのか? あの女は何者だ?
 あしゅらの心情を、主も理解していた。

「あしゅらが何故と疑問を持つのも仕方あるまい」

 そして、ヘルはブロッケンに語る。隠すわけにもいかなくなったことを悟り、語る。
 機械獣の神殿の更なる奥、地下回廊。
 壁画に刻まれた記憶。
 神々の軍団、大神ゼウス。そしてハーデス。
 どうして彼は裏切ったのか。どうして巨人達は地下へと沈んだのか?
 地下回廊の奥の繭。そこには、答えを見ていたはずの夫婦が包まれていた。




 時の流れは二人の体を蝕んでいた。
 蘇生を諦めかけた十蔵にヘルは言う。
 自分なら蘇らせることができるかもしれないと。
 二人の体の半分は腐っている。しかし、お互いの右半身と左半身は無事。
 左右の半分ずつを組み替えて生き返らせることができたら?
 あまりの発想の飛躍に反対する十蔵だが、生物学の権威である己の腕と愛弟子であるつばさを持って、ヘルは成功を保証する。
 つばさは問う。
 生き返らせてどうするのか?
 バードスの全てを聞き出す。機械の兵士を想いのままに扱う。
 嬉々として語るヘルの野心を確信するつばさ。
 しかし、彼女も科学者。神話の時代の生命を復活させるという欲求を止めることはできなかった。
 葛藤しながら、不安を抱えながら、つばさはメスを振るい、二人は一人となった。
 手術は終わった。
 しかし、あしゅらは暴走する。つばさは襲う。すんでのところで、動きを止めたあしゅら。原因不明の暴走。最後の手術で、その不安は取り除かれ、あしゅら男爵はドクターヘルの忠実な部下となった。


「見つけたよ、あしゅら男爵」

 暗いゴンドラを照らすパイルダーのライト、そして産みの親の一人が、あしゅら男爵に冷たく視線を浴びせる。
 襲い掛かろうとするあしゅら。その瞬間体を電撃が走る。
 どうあがいても自分には抵抗できない。
 言い放つつばさ。

「何をした? 私の体に何をした?」

 世の中には知らないほうがいいこともある。
 選択肢を与えるつばさ。しかし、あしゅらは知りたがる。
 つばさは笑う。皮肉を浮かべて笑う。
 あの暴走のとき、あしゅらに警戒心をいだいたつばさは、彼が自分に反抗できないように体をいじくった。
 事実を知り、自分が無力であることを悟り、涙を流すあしゅら。
 しかし、助けの手は既に差し伸べられていた。
 甲児にミサイルで撃つよう促すつばさ。
 無抵抗の相手ではと、
 甘っちょろい、言い捨ててつばさはミサイルの発射ボタンを足で踏む。
 発射されるミサイル。
 しかし、それはあしゅらを捉えない。
 空中で止まるミサイル。

「お、お前は」
「出やがったね。灼熱の国、最強の呪術者にしてドクター・ヘル五大軍団の一人。機械獣を従えることなく、森羅万象を操り戦う男」

 その名はピグマン子爵。
 つばさに再会の挨拶をする翼の男。
 そして、念力でミサイルをパイルダーに向ける。
 自分に歯向かえば、あしゅらと同じことになる。忠告するつばさ。ピグマンは既に承知のこと。
 そして、ピグマンは両目をえぐる。
 彼の目は最早つばさを認識しない。たとえミサイルが彼女を巻き添えにしようと、ピグマンはそれを見ることはない。
 自分がピグマンを甘く見ていたことに歯噛みしながら、つばさは叫ぶ。

「下がれ、甲児!」

 爆風。
 切り落とされるゴンドラ、後退するパイルダー。
 空を飛ぶ二人に短刀を振りかざすつばさ。しかし、彼等は消えた。
 現れたのは、凍りついたノナカーゴ。
 ピグマンの呪術が氷を溶かす。
 動き出すノナカーゴ。弾丸は一発しかない。
 男は語る。

「命は惜しい。退散だ」

 逃げ出す彼等を見つつ、ピグマンは自分の役割はここまでと退く。
 一方、甲児はマジンガーへと向かう。
 後は自分がやるしかない。
 パイルダーをマジンガーの頭部へと近づける。
 当然、あしゅら男爵はそれを許さない。
 マジンガーの頭部を青い光が包む。

「これじゃ近づけない」

 事態は更に悪化する。
 マジンガーの体が持ち上がり、ノナカーゴへ、アフロダイが捕らえられた腹へ引き寄せられていく。
 パイルダーのないマジンガーはただの人形にしかすぎず、またマジンガーのないパイルダーはただの戦闘機にすぎない。
 このままでは逃げられる。
 焦る甲児。しかし、彼を叱咤する声。

「大丈夫。あなたはドッキングの用意をして」

 パイルダーに飛び込んでくる聞き覚えのある声。
 声の主は少女、弓さやか。
 動けないが、できることはある。
 腹部の中でアフロダイの腕が爆発する。光の網が破れる。

「いまだあああ!」

 弾き飛ばされたマジンガーに、パイルダーが降り立っていく。
 そして、マジンガーに命が吹き込まれる。
 
「後はお願い」

 やり終えたさやかが託し、

「おお! 任せとけえっ!」

 甲児が受け止める。
 殴りつけるマジンガー。吹き飛ばされつつも、ノナカーゴのビームが光の鞭となりマジンガーを巻きつける。
 しかし、動けなくとも手はある。十蔵が残してくれた手がある。

「ブレストファイヤアアァァ!」

 熱線があしゅらを襲う。
 状況を把握したあしゅらを退くことを決断し、そして甲児に言い残す
 
「あの女、お前にとっても仇をなす存在。ゆめゆめ油断をするな」

 彼の真意を測りしれない甲児だが、ブレストファイヤーは確実に機械獣を消し去った。

 マジンガーを奪うことには失敗したものの、あしゅら男爵の救出を果たせたことで納得するドクター・ヘル。そして、ブロッケンに言う。
 お前にもあしゅら男爵と同じ仕掛けがされているのだと。
 
 夜明け。
 さやかのことで弓に礼を言う甲児。
 家を祖父を失ってしまったが、甲児には考えがある。
 そしてつばさは兄弟を引き受けることを、十蔵の敵を討たせることを引き受けるのだった。




 十蔵無双のあとは、ずっと女将のターン!
 なんだかマジンガーの開発まで手伝ってそうな勢いですが、どうなんでしょ。
 ただあしゅら男爵に電撃走ってたのは、超能力的なものかと思ってたんですが、そういう改造をしてたということなので、一応は人間の範疇におさまってるようで、一安心でした。それでも肝っ玉の太さとか色々と人外クラスですが。
 とりあえず一段落のようで、ここからしばらくは一話完結になるのでしょうか。












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